日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

今一度言う!東電が料金値上げより前に“なすべき”こと

2012-05-10 | ニュース雑感
拙ブログ4月26日のエントリー「東電「総合計画」の承認は、政府の“やってはいけない”(http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/1893846245da5137ed2294226c88b94c)」で、私は東電が経産大臣宛提出した再建計画をそのまま承認してはならない、と申し上げました。しかし9日、枝野大臣は大した議論をした形跡もなくいとも簡単にこの計画を承認してしまいました。

計画遂行の前提条件として盛り込まれた家庭向け電気料金の値上げ幅は、平均10.28%。もちろん実施が正式決定されるまでには経産大臣の承認が再び必要なわけですが、値上げを前提条件とした計画を承認された以上、東電からみれば、「値上げ幅の若干の見直しはあるかもしれないが、値上げの実施に関しては大臣のお墨付きをもらったも同然」と思えるのではないでしょうか。

拙ブログでは何度も申し上げていますが、株主責任、貸し手責任を問う前に利用者責任を問うようなやり方は絶対におかしいわけです。株主責任、貸し手責任を問わないのなら、まずは経営努力でなんとかする、つまりは倒産企業と同じ状況下においた限界値的なリストラ策を実施することが最優先であり、それよりも前に利用者責任を問う料金値上げは断固として東電の“やってはいけない”であると、改めて今メディアも世論も声を大にして叫ぶ必要があると思います。

前回の拙エントリーから一部引用します。
「誰が見ても「これ以上は無理だ」と思えるようなより具体性のある削減策を見せて欲しい。今回記載の給与の2割カット、人員削減1割、企業年金1000億円削減が本当に限界なのか、「やらなければ職を失う」というゼロサムの危機感を組織全員が持って、再度の削減策検討に取り組むべきであると思います。」

週内にも予定されていいるという値上げ申請を前に、この点を今一度強調したく思います。具体的に東電に何を求めるのかですが、分かりやすく言えば、家庭向け料金の値上げをしないで、その分をさらなるリストラ策で埋め合わせた場合、給与カット幅、人員削減率、企業年金削減額、子会社および所有資産売却額がそれぞれいくらになるのか、その理論値を利用者に分かりやすい形でまず提出せよと。分かりやすい形とは、「そこまでやると、平均給与は○○円です。企業年金は月々平均○○円です。」という見せ方です。まずはそのぐらいは作って見せろと言いたい。これは利用者に対する最低の礼儀であると思います。

より具体的な数字を利用者に示した上で、「これではあまりにかわいそうだ(例えば、平均給与が年収200万円以下になってしまう等)。多少の料金値上げは仕方ない」という利用者の総意としてある程度の同意を得ることが今東電の“なすべき”であるはずです。玉虫色の数字、給与の2割カット、人員削減1割、企業年金1000億円削減というものが、どの程度のものなのか全く数字の実感が与えられないまま(一部の情報ではカット後でなお我が国の給与平均を上回っているとか)、「そういうわけで、計画は承認されましたので値上げします」という態度は絶対に許してはならないのです。

東電の“やってはいけない”を叩き直せるか否か、ここが正念場であると思います。計画承認を受け一部報道に見られる、「値上げは既定路線化」的な報道は絶対にいけません。枝野大臣がこのまま値上げをすんなり承認するようなことがないよう、メディアも性根を据えて東電の“なすべき”を訴えて欲しいと思います。