日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

東芝問題で再クローズアップされる「J-SOX=内部統制」とは~AllAboutさん拙担当コーナー更新されました

2015-06-09 | 経営
AllAboutさん拙担当コーナー「組織マネジメントガイド」更新されました。

東芝粉飾問題で再クローズアップされる「J-SOX=内部統制」について解説しました。

こちらからどうぞ。
http://allabout.co.jp/gm/gc/455551/


COCOSの朝食ブッフェで分かったゼンショーHD組織風土のがんこさ加減

2015-06-08 | 経営
ステーキレストラン・チェーンCOCOSにモーニング・ブッフェを食べにいきました。私は週に1回程度、原稿の構想を練りの気分転換で、外にモーニングを食べに出るのが習慣になっています。この日は、前々から気になっていた我が街のCOCOSのモーニング・バイキングを初めてのぞいてみようと思ったわけなのです。

私が訪れたのは土曜日の朝。税込み842円也を先払いで支払い席を探します。私が店に入ったのは朝7時スタートのバイキングは1巡目の客が、メインを食べ終わってデザート&カフェに移りかけた9時過ぎごろで、およそ80~90席ほどの店内に空き席はわずかでした。

席を確保してブッフェコーナーの入口に向かうと、なんとトレイがない。これでは先に進めません。呼べど叫べど返事なし。そうこうするうちに私の後ろには行列が。若い女性スタッフがようやくこちらにやってきたのは、次の来店客が自動チャイムを鳴らして入って来たからでした。

受付業務終えたスタッフにトレイがない旨を伝えると、「少々お待ちください」と言ったままキッチンへ引っ込んで出てきません。待つことさらに2~3分。ようやく出てきた彼女はなんとトレイを布でふきながら登場しました。洗い物が間に合わずに間に合わせで洗い場にあったものをとりあえず人数分をお持ちしました、がアリアリ。この姿を見て、私は早々にかなりめげてしまいました。

その後の対応も推して知るべし。バイキングコーナーのメニューは品切れ状態のものが大半で、「ただいま調理中です」と言いつつもほとんどいつになるのかわからない状態。ドリンクコーナーもコーヒーカップ切れで、再び呼べど叫べど店員が来る気配はありません。仕方なく、かろうじて3個ばかり残っていたコップにジュースを注いで我慢する以外にありませんでした(結局、ホットドリンクは飲めませんでした)。

カスカスの残り物を寄せ集めたもの以外に食べたのは、かなりしてから追加で出てきた焼きそばみたいなメニューを少々、あとはジュースをお代わりしてジ・エンド。私と同じような目に会った人は複数いて、きっと二度と来店しないだろうなと思いました。

このサービス低下の原因はどこのあるのかと言えば、人手不足がすべてです。件のトレイの一件で人が来ないのはどうなっているのだ、と奥をのぞいてみれば、なんとそこにいたのは男性一人に女性一人。フロアにスタッフは全くいませんでしたので、この2人でブッフェ方式とはいえ80席以上がほぼ満員の店内オペレーションを回していたのです。男性スタッフが調理、女性スタッフがフロアと洗い物といった感じです。あちこちから呼ばれ、足りないモノを運んではまた呼ばれ、疲弊する女性スタッフに明るい返事も笑顔もなく、フロアにはよどんだ空気が流れていました。

この店舗はサイズから言って厨房一人、フロア一人という配置ではサービス低下は火を見るよりも明らかです。店内が混雑しないのならともかく、経験則的に満席に近い入りが予想される土曜日の朝にこれでは、客をなめているのかと言われても仕方のないところかと思います。この状況が続けば、確実に顧客離れは起きるでしょう。

で、このCOCOS、ご存じの方もかと思いますが、あの牛丼すき家を運営するゼンショーHDグループのステーキレストラン・チェーンなのです。実はCOCOSをのぞいてみたのには、別の理由がありました。今春の職場環境改善促進委員会の報告および改善案提示を受けながらも、すき家では日中時間帯での一人勤務ワンオペレーションは一部で継続する意向を示し物議をかもしていたので、ゼンショーのストア環境を、すき家以外のチェーン店でも見てみたいと思ったのです。

あれだけ社会批判を浴びながらも、一部でワンオペを継続するという宣言の裏には自信にも似た何かを感じたので、傘下の他のチェーンで少人数のローコスト・オペレーションでもうまくCSおよびESを一定以上に保てるノウハウがあるのかもしれないと思ったからです。しかし、結果は言わずもがな。これがゼンショーグループの文化であり限界点なのだと、あらためて実感しました。

今更ですが、この文化は明らかに以下の2つの大きな流れを生み出します。
① 行き過ぎたローコスト・オペレーション⇒顧客満足度の低下⇒顧客離れ⇒業績悪化
② 行き過ぎたローコスト・オペレーション⇒従業員疲弊による離職率上昇⇒人手不足⇒サービス低下⇒業績悪化
こんなことは、ゼンショーさんご自身が百も承知のはずなのですが…。

多少の値上げを覚悟してでも行き過ぎたローコスト・オペレーションを見直す以外に、この流れを食い止める手立てはないのですが、どうやらゼンショーグループにはそのような考えは毛頭ないように見受けられました。あれだけ社会問題化し自社を苦しめたローコスト・オペレーションでありながら、その実情に何の変化も起こさぬまま店舗運営を続けていくその姿には、組織における改善を阻む企業風土というもののおぞましさをまざまざと見せつけられる思いがしました。

東芝粉飾問題を巡る本当の核心とは

2015-05-25 | 経営
東芝の粉飾決算問題が世間をにぎわせています。3年間で500億円もの利益水増しがあったと言われるこの一件。日本を代表する企業の不祥事だけに、その調査の行方は大変気になるところです。

東芝の管理云々の問題も確かにありますが、私が仕事柄最も気になるのは同社のJ-SOX対応はどうなっていたのか、と言う観点です。すなわち社内管理の問題もさることながら、法的に内部統制監査の任を負っている監査法人も何をやっていたのだろうか、ということが非常に気になるところなのです。

J-SOXは06年制定の金融商品取引法により08年度から上場企業に義務づけられた、内部監査の徹底をはかった一大ガバナンス改革でありました。Jという名が示すとおりに、アメリカのサーベンス=オクスリー法という法律が大元になっており、それを日本企業仕様に改めたものがJ-SOXなのです。

アメリカで00年以降相次いで起こったエンロン、ワールドコムの巨大粉飾決算により、善意の投資家たちの利益がいたずらに損なわれたことを受け、企業財務プロセスの監視強化によるその適正化をはかり資家を保護することを目的として、米SOX法は02年に成立しました。我が国では、証券市場の国際化の流れを受けてグローバル・スタンダードと言う名のアメリカン・スタンダードに従って、これに追随する形でJ-SOX対応を上場企業に義務づけたのです。

導入前の我が国上場企業は大騒ぎでした。いわゆるERPシステム導入や、内部監査コンサルティングの名の下に怪しいビジネスが世にはびこり、会計士不足が深刻化して監査法人難民化する企業も出る始末でした(今の会計士過剰現象はこの時のツケでもあります)。各企業は監査法人やシステム会社との間で億単位あるいは数十億単位の新規契約を結ぶなど札びらが飛び交い、この流れは政府とつながりのある著名会計士が仕組んだ監査法人や会計士のカネ儲け戦略ではないのか、とまで揶揄されてもいたのです。

08年のスタート以降どうであったかと言えば、結果は大山鳴動してネズミ一匹。まったく何事もなかったかの如く騒ぎは速やかに沈静化しました。内部監査不十分等で指摘をされ、上場を危うくするような事例もほとんど耳にすることなく、導入前のJ-SOX狂騒曲は何だったのかというほど拍子抜けの結末であったのです。

すなわちJ-SOXは、形式を整えるためにカネをかけたものの結果魂は入ることなく法律は形がい化した、という流れでなかったのかと。誰かの財布は潤ったものの、本当に我が国上場企業の真のガバナンス強化につながったのか、いささか疑問の残るところでした。なぜそうなったのかですが、そもそも日本企業とアメリカの企業とではその企業組織の成り立ちや組織風土というものがあまりにも違うわけで、ガバナンスのあり様も全く異なった環境にあることを無視した法規制は結局形骸化の憂き目に会うと思うのです。

J-SOX的内部統制が本当に有効な管理手法であるのなら、決して法対応が形骸化することなくむしろスタートから7年の時を経てそれを発展させて今に至っていてもよさそうなものです。しかし今や、J-SOXと言う言葉自体が死語ではないかかと思われるほど、お寒い状況になってしまっているのです。すなわち今回の一件で垣間見える現状は、企業はザル統制、監査法人はザル監査、巨額粉飾やり放題ということなのです。こうして考えると、東芝の一件ははからずもガバナンスに関する法規制のあり方に、大きな一石を投じた問題なのではないかと思えるのです。

これに関連して今何より気になるのが、実施を目前に控えたコーポレートガバナンス・コード導入の問題です。日本企業をガバナンス強化の方向に導いていくことになんら異論はありませんが、今回のJ-SOX形骸化の事例を見るに、そのやり方が本当に我が国の企業文化や企業風土、いわゆる日本的な組織運営思想にあったものであるか否かをもっとしっかりと議論した上で、慎重に進めるべき問題なのではないかと思えてきます。

今回の東芝の一件は、ガバナンス強化策として安易に導入されたJ-SOXが有効に機能していないことを、日本を代表する大企業が示した格好の反省事例であると思います。このような無用な法規制により、これ以上企業に無駄な時間とカネを使わせ風土にあわないタガをはめることは、その競争力をそぐことにもなりかねないのです。ガバナンス強化は企業活動にとってはもろ刃の剣でもあります。今回の不祥事を機に、いたずらに従来路線でのガバナンス強化を叫ぶのではなく、むしろ日本企業にふさわしいガバナンス強化策とは何であるのか、コーポレートガバナンス・コード導入の問題も含めて今一度慎重な議論が求められるのではないかと思います。

ゴルフ場はプレー中のアルコール提供をやめるべきと思う件

2015-05-18 | 経営
交通安全週間、絶賛開催中です。毎度当ブログで取り上げている我が家近くのショッピングモール脇出入口前の信号のない横断歩道は、歩行者優先違反検挙のドル箱スポットで、昨日も一日白バイが検挙出動するサイレン音が鳴り響いておりました。

いつもの事ですと交通安全週間にひっかけて、物陰に隠れてコソコソ違反検挙をするのではなく周囲から見えるところに白バイを配備して道行く車両に注意を促し、違反をさせないようにするのが筋だろうと申し上げるところなのですが、今回はその話はこのさわりだけで終了し全く別のお話をさせていただきます。

近年交通法規違反の中でも最も憎むべきものとして定着しているのが、飲酒運転の類です。もちろん完全撲滅はできないものではあるのですが、少なくとも運転者であると知ってアルコール類を提供した店舗も罰則を受けるなどの法規変更により、店舗での飲酒運転幇助に対する警戒感は大変強くなり、その点における飲酒運転による事故防止は以前に比べて飛躍的に向上したと言っていいのではないかと思っています。

なぜこのようあの話をしているかと申しますと、以前私がゴルフをしていた時代に昼食時の飲酒が原因となり、午後のプレー中に思わぬ大ケガを負い救急搬送された方を目の前で見たからなのです。飲酒ゴルフは危険と背中合わせであるのです。飲酒による運転が法律で禁止されているのはなぜか、運動能力が鈍るから、判断能力が鈍るから、であります。要するにお酒を飲んで運動能力、判断能力が鈍るようなことは、自らのケガや周囲の人をケガに巻き込む恐れがあるからするべきではない、と法律が言っているのではないかと思うわけです。

皆さん、スポーツも運転と同じく、本来飲酒しながらするべきものではないとは思いませんか。ゴルフは金属製の棒を振り回し、石ころなみに硬いボールを思い切り叩くスポーツです。お酒を飲んでプレーをすることで、あるいはクラブを手放してしまう、あるいはボールがあらぬところへ飛んでいく、あるいはカートの運転がおぼつかなくなる、等のリスクが増すのは当然のこと。明らかにお酒を飲んでやるべきスポーツではないと思われるのです。

いや、そもそもお酒を飲んでやっていいスポーツなどこの世に存在するのでしょうか。公式大会では無論のこと、どんなスポーツでもお酒を飲んでいると分かったら、主催者は参加を拒否するのではないでしょうか。理由は簡単、単純に危ないからです。温泉卓球でさえ、お酒を飲んでやってアキレス腱を切ってしまったという友人がいます。「もう二度と酒を飲んで運動はしない」。松葉杖姿で職場に現れた彼は心から悔いていました。

昨年、湘南海岸での飲酒が全面禁止されました。もちろん、酒を飲んでバカ騒ぎをする若者に対するけん制もあったとは思いますが、やはり海水浴場と飲酒という組み合わせは大半の人が水泳という運動をしに来る場所であるという観点からはお酒をのんでいけないのは常識であり、自治体によるこの禁止令は至極当然のものであると思われたものです。

ゴルフ場ではなぜ今だにプレー中のゴルファーたちにアルコールを提供するのでしょう。「ビールぐらいいいじゃないか」そう考えるプレイヤーもいそうですがビールなら飲酒運転になりませんか、そんなことはありません。運動や運転における飲酒によるリスク回避は、最優先で考えるべき問題なのです。飲酒ゴルフは即刻やめさせるべきと私は声を大にして言いたい。飲むのなら、プレー終了後に思う存分飲めばいいのです。繰り返しますが、この世の中にお酒を飲んでプレーして良いスポーツなど存在しないのですから。

アルコールをクラブハウスの昼食メニューに置いても、自己責任で管理すればよいとの意見もあるかもしれませんが、リスク管理というものは「させない管理」こそが重要なのです。飲酒ゴルフはあらゆる点からリスクが増すのみであり、自己責任で済まない事故も実際に数多く起きているのです。従いリスク管理の徹底が必要であることは間違いないと思うのです。

運転もしかり、湘南海岸もしかり、飲酒によるリスクが存在する場面においては「させない管理」を法を持って実施し、より確かな安全を確保することが必要なのです。ゴルフ場で大ケガをされた方のご家族も大変な思いをしたにちがいありません。それを考えると、本当にいたたまれない気持ちにさせられます。ゴルフ場でのプレー中のアルコール類の提供(他にもプレー中にアルコールを提供しているボーリング場やテニスコートなどがあるならそれも含め)に対する法的規制を早期に実現するべきではないのかと。この問題を強く世に問うべきと思ってやみません。