静聴雨読

歴史文化を読み解く

将棋の「感想戦」

2012-05-03 07:06:54 | 将棋二段、やりくり算段

 

将棋の世界では、対局後に対局を振り返って、両者が悪かった点・こうすればよかった点などを検討する「感想戦」がある。勝者はまだしも、対局に敗れた側にとっては、悔しさをかみ殺しながらの「儀式」となり、心が据わっていないとやり遂げられない「儀式」ではある。

人によっては、そそくさと感想戦を済ませ脱兎のごとく対局場を後にする棋士もいる一方、明け方まで2時間も3時間も感想戦に没頭する棋士もいる。人さまざまだ。

さて、5月1日の「達人戦」は加藤一二三九段対高橋道雄九段の戦いだった。角換わりの将棋で熱戦となり、高橋九段が優勢となった。しかし、そこから、加藤九段が粘りながら勝負手を連発して、とうとう逆転勝ちしてしまった。加藤九段72歳、恐るべき将棋魂の持ち主だ。

ところが、対局後、高橋九段は加藤九段に一礼して、さっさと帰っていってしまった、ということだ。どうしてそれを知ったかといえば、ネット中継があって、対局後の両者の動静を写真付きで報じていたのだ。加藤九段の感想戦の相手方は、ネット中継の解説役の高田尚平六段が勤めた。

上記のように、両者が悪かった点・こうすればよかった点などを検討することに加えて、観戦記を書く記者に対しての局面解説サービスの面も感想戦にはある。つまり、感想戦を行うことは、「プロ棋士」としての義務なのだ。

余りに悔しくて、感想戦まで付き合っていられない、というのでは、小学生棋士にも劣る振舞いだ。おっと、小学生棋士に失礼なことをいってしまった。

高橋九段52歳、願わくば、「達人」にふさわしい振舞いをお願いしたい。  (2012/5)