静聴雨読

歴史文化を読み解く

郵政問題をめぐる混迷・2

2010-06-14 07:24:53 | 社会斜め読み
郵政問題についての私の基本的考え方を改めて整理すると:

1. 日本郵政グループの3事業会社(郵便事業会社・ゆうちょ銀行・かんぽ生命)は完全民営化すべきである。

2. 郵便局会社は民営化せず、国からの補助金を入れつつ、「ユニバーサル・サービス」を堅持すべきである。

3. 郵便事業会社の事業を分割して、ローカル郵便ネットワークは郵便局会社にまかせるべきである。

4. 郵便局会社は日本郵政グループの窓口業務の受託にとどまらず、宅配・検針・集金などの業務も受託できるようにすべきである。このように、進化した郵便局会社は、もはや、その名がふさわしくなくなっているだろう。むしろ、「地域サービス会社」というほうが適切だ。

以上が、経営の効率化と「ユニバーサル・サービス」の維持とを両々相俟って実現する方策だ。

現行の政府案の弱点は、郵便事業会社と郵便局会社との癒着構造を温存している点にある。
それは、「信書の送達」に関する扱いに端的に現われている。

「民間業者による信書の送達に関する法律」という法律がある。郵政民営化後に、「民間業者による」と名乗る法律が生き残っているのが笑える。この法律を要約すれば、「日本郵政グループ以外の『民間業者』は信書を扱ってはならない。」ということだ。

「信書」とはなにか? 送る側が誰で、受け取る側が誰だ、ということを詮索されることなく送られる郵便物などのことだ。「開き封」で中身が見える「ゆうメール」や郵便局で対面で差し出す「ゆうパック」は「信書」に当たらない。そのため、宅配業者は、ダイレクト・メールなどを扱う場合、「これは『信書』ではありません。」という但し書きを入れている。

ということは、「信書」の中身が見えない「閉じ封」と、「信書」をどこでも投函できる「郵便ポスト」が必須の要件となる。「民間業者による信書の送達に関する法律」は、このような「信書の送達」を保証できない限り、「民間業者」は「信書の送達」業務に係わることはできない、といっているのだ。一時、ヤマト運輸が郵便事業に参入しようとして、この「信書の送達」条項を盾に、参入を阻まれたことがある。主として、「郵便ポスト」を、郵便事業会社並みに設置しなければ、「信書の送達」を認可しない、ということだった。

このように、時代に合わない「民間業者による信書の送達に関する法律」を盾に、民間業者の参入を頑なに排除しようとする日本郵政グループの姿勢は批判されてよい。郵便事業会社はほかの宅配業者などと対等の競争をすることが求められる。その結果、競争に敗れることがあっても、やむをえないと覚悟すべきだ。  (2010/6)