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"It never gets easier, you just go faster."

不定期連載ロードレース講座①「ブロッキング:非協力的に走る」

2010年07月24日 | レース
注:またもこの本からのダイジェストです。本当にためになる本です。願わくば、私にも実践できるエンジンがあればいいのですが。レースにでる皆様参考にしてください。



*レースをコントロールしたいとき、もしくは他チームのコントロールを乱したいとき、ここに書いてあることが参考になるかも?

チームメイトが逃げている場合、勝ちをアシストするためのブロック術について述べる。
「ブロック」という言葉は誤解されやすい。正確にいうならば、「邪魔しながらレース」をする、が近いであろう。集団の前方に陣取って完全に蓋をするようなわかりやすいブロック術は、原始的、初歩的過ぎてうまく機能しないことが多い。まず大前提として、逃げが集団と同じペースをキープして走れること。これができないとチームメイトのためにブロックする意味があまりない。

「目立たないブロックが実は一番効果的である」
ブロックは身体的にも、戦術的にも難しい。往々にして、逃げている仲間よりも、後方でブロックするアシストの方が多く仕事をすることになることになる。ジャンプし、ギャップを埋め、チェックし、集団前方に位置取る ―― ブロックは楽な仕事ではないのだ。これだけ多くの仕事をするわけであるから、前を逃げているチームメイトは最低でも集団と同じペースをキープして走ってもらわなければならない。たとえ最後につかまったとしても、集団が追走に足を使った場合、チームメイトがカウンターをかけることができる。ここでやっと数キロの逃げが戦術的に意味を持ってくるのだ。
もっともシンプルなブロックは、二番手に位置取ることだ。先頭が交代したら、交代に加わらず、一緒に脇に下がる。これをすると列車のリズムを崩し、列車からかなり反感を買う。(図1)


図1  集団前方でペースラインを乱す

ここまであからさまにやりたくなければ、先頭にたったらソフトに踏んでペースを明らかに落とす。これも列車のリズムを崩すし、ソフトペダリングをするあなたは列車にとっての妨害物となる。他の選手はあなたを避けて前に上がっていかなければならないからだ。そして、ブロックは一回では終わらない。小さな貢献(妨害)をしたら、また集団の後ろに戻り、次の貢献に備える。集団はあなたを歓迎しないだろう。ここからがブロッカーの真の仕事場だ。滑り込み、ねじり込み、お尻さわり、脅し、なんでもいいから集団に戻れ。そして、それを何度も繰り返す。

「ステルス妨害」
集団がブロックを警戒しているときに、気付かれずにブロックができると実に効果的である。
筆者がこれを目撃した時、何が起きているのか理解できなかった。チームメイトを逃げに送り込んだチームのブロッカーが、先頭にたって長い登り区間をグイグイ牽き始めたのだ。あたかもチームメイトの逃げを潰すかのように。
実は、ブロッカーは逃げている仲間の同区間のペースを知っていて、そのペースよりやや遅いペースで登っていたのだ。集団はブロッカーのペースに満足し、そのブロックは数秒を稼ぐことに成功した。
「アタックを潰す」
追走集団に、一人で逃げを潰しかねないほど脚をもった実力者がいた場合、徹底マークする。彼が集団の先頭にでたら、躊躇なく後ろに着く。このとき、単にドラフティングに入るのではなく、気付かれないように中切れを起こすとよい。彼が独走しているのに気付いたとき、集団との間にはギャップができている。このギャップは追走集団が涎をたらして埋めることになるだろう。
前述の動きは、追走集団を形成してしまうリスクもある。アタックが成功したように見えると、アタックを誘発する可能性もある。追走アタックが成功するか、危険な動きか、無視してよいか、ブロッカーは瞬時に判断して次の行動を決めなくてはならない。マークするかしないかを判断するために、次のことを瞬時にスキャンする。ロードレースは瞬時の決断のスポーツでもある。
アタッカーは独りで追いつける脚をもっているか?
アタッカーは脅威か?
追いついた場合、逃げにとって有利な展開になるか?
アタッカーのチームメイトがブロックに加わってくれそうか?
二人でブロックするときは、お互い距離をもって妨害する。一人(図2のA)は前方でソフトに踏んだり、ローテに加わらず列車を妨害する。もう一人(図2のB)は5,6番目に位置して後方からのアタックを見はる。アタックはこのくらいの番手から出やすい。ここでスイーパーとしてアタックを警戒する。(図2)


図2  ブロッカーとスイーパー

アタックが潰されると、他のチームは次のアタックがしにくくなる。これを自分に優位に使うことができる。たとえば実力者が追走をかけたとする。チームメイトがすぐさま反応し、二番手で張り付いたまま先頭まで連れて行ってもらう。先頭集団に努力せずにチームメイトを送り込むことができ、数的優位を確保できる。(ここで前述の瞬時の判断が生きてくる)

後方でのブロックは、美しい犠牲である。願わくば、あなたにも先頭で逃げきる日が来ることを・・・