船窪小屋
山小屋に泊まらずテント泊を好むヤマヤの中でも、『この山小屋だけは泊まってみたい』と思わせる稜線上の有名なランプの小屋。
問題は、そのアプローチ。
約4kmで1400m近く、しかも大半を景色に恵まれない樹林帯を貫く強烈な急登を越えた後でないと、天国からの絶景は味わえない。ガイドブックやテレビ番組では伝えきれない船窪の真髄がここにある。
そんな急登の向う、天国のような稜線上の山小屋を紹介するテレビ番組を見ていたある日の大先生、
『(船窪小屋の前で)ラジオ体操がした~い。』
『(夕食はテンプラとビーフシチューと聞き)いきた~い♪』
三連休は(激混雑の)北岳か、鹿島槍か、八ヶ岳を考えていたのですが、テンプラが最後の一押しになりました。
というわけで好天に恵まれた三連休。七歳になった山小屋評論家ことチビ太大先生と北アルプス奥地にある船窪小屋に行ってまいりました。
ここから始まる鼻突八丁の核心
なお、七倉尾根の急登については、事前にたくさん言い含めておきました。
父『いいか、急勾配はちびっ子の最も得意とする地形だ!』
チビ太『うぃ!全員ブチ抜く!』
父『最初はゆっくり歩くのだ。そうしたら、チビ太が体重が軽いから、何をしないでも重い荷物をもったおじちゃん、おばちゃん、おにいちゃん、おねえちゃんに自然に追いつく。』
チビ太『うぃ!』
父『追いつくときには無理をするな、楽ちんなペースで追いつくんだ。』
チビ太『追いついたら「お先に~♪」って挨拶するんだね?』
父『違う!追いついたらむっちゃ軽々、「お山登りは楽しいな~♪ルンルン♪」って軽がる抜くんだ!』
チビ太『わかった。ルンルン♪って言って抜き去る』
父『そうだ!その時顔は笑っているが実は心臓はバクバクだ。』
チビ太『えっ。そうなの』
父『そうだ!抜かれた人はものすごく苦しいときに、チビっ子にルンルン抜かれたら心が折れる。そうして抜いていて全速力で視界から消えるんだ。わかったな。』
チビ太『わかった。ルンルン。』
なんにも面白くない樹林帯の急坂を息も絶え絶え4時間以上登り続け、その先に待っていた天国については、写真をご覧のとおりです。
灼熱地獄の下界をさけ、アルプスの高山地帯に避暑しに来たわけですが、森林限界を越え絶景の稜線にでたら直射日光光線にやられ、日中は素っ裸でも大丈夫なくらい。時折稜線をわたる風が涼しい。
小屋の夕食は気を利かせて外で360度の大パノラマを眺めながらのテンプラ+ビーフシチュー。小屋に昼についたら何にもしないと決めていましたが、ほんとに景色を眺める以外なにもする気がおきません。読書用の一冊を持ってきましたが、ほんと、本一冊でさえここでは俗っぽい。
翌朝は朝食後のお散歩に七倉岳を登って針の木岳の全容を眺め、それからは12時の下山を目指してガンガン下っていきました。高度を下げるごとに気温はあがり、発汗量が尋常ではなかった。
下山は11時半。下から見上げた七倉岳の稜線の高度差が半端なかった。
帰宅途中、そばの高瀬でざるそば大盛を×2
チビ太は一口も分けてくれませんでした。
歩くペース0.9~1.0(標準)
コースタイム
1日目 山行 5時間56分 休憩 1時間16分 合計 7時間12分
S七倉登山口06:44 07:59唐沢ノゾキ08:00 09:02岩小屋09:03 10:08鼻突八丁(八合目)10:11 11:10天狗の庭11:31 12:22船窪小屋13:00 13:08七倉岳13:09 13:15船窪天場13:19 13:19船窪水場13:23 13:34船窪天場13:37 13:45七倉岳13:56船窪小屋泊
2日目 山行 3時間53分 休憩 1時間29分 合計 5時間22分
泊船窪小屋06:11 06:22七倉岳06:34 06:47船窪小屋07:03 07:38天狗の庭07:46 08:21鼻突八丁(八合目)08:40 09:24岩小屋09:44 10:19唐沢ノゾキ10:20 11:15七倉登山口11:19七倉山荘11:32 11:33ゴール地点G
コースについて
な、なんという急勾配!船窪小屋に至る七倉尾根、実は有名な日本三大急登に匹敵することが(後になって判明)その実は4kmで1400m上昇、32%
チビ太大先生大変だったと言いつつ小屋番のお兄さんに抜かれた以外は誰一人にも抜かれず。
下りで先に音をあげたのは私です。
最後の下りは言葉で苛められました。『え?なに?お父さんまさか疲れちゃったの?』とか(=`ェ´=)
日本三大急登、北アルプス三大急登というのがある。詳しくは
北アルプス三大急登:
ブナ立尾根(烏帽子岳):距離3.2km 標高差1251m 39.7%
合戦尾根(燕岳):距離3.9km 標高差1244m 31.6%
早月尾根(剱岳):距離7.2km 標高差2238m 31%
北アルプス三大急登:
早月尾根(剱岳)
西黒尾根(谷川岳):距離3.1km 標高差1114m 35.6%
黒戸尾根(甲斐駒ヶ岳):距離8.5km 標高差2200m 25.7%
距離4.1km 標高差1316m 32.1%・・・おいおい、距離は短いものの、標高差で上記だと3位、平均勾配でも3位!!
上のコースタイムは寄り道を含んでいるので、正規コースタイムを抜き出すとこんな感じ:
コースタイム6時間のところ:5時間12分
コースタイム4時間のところ:3時間29分
コース状況/危険箇所等
危険なところは少ないが、登りが厳しく、体力を損耗し集中力が切れた下山時に店頭事故がおこりやすいかもしれない。二日目は特に気をつけ、声をかけあって下山。
それでは、いつものようにフォトレポ開始
おはよう!気温は20℃で涼しいな。
これから登るぜ~
バックは鹿島槍と五竜かな?
🐒軍団による通行止めにより、登山開始出来ません。足止め。
最近チビ太が写真の腕を上げました。カメラを渡すとけっこうおもしろいアングルで切り取ってくれます。
登山届け提出。結構厳しくチェックされ、その分会話も大盛り上がり♪
このトンネルの手前から登山道が始まります。このトンネルはタクシーのみ通行可能で、この先は裏銀座の入り口、烏帽子に続きます。
長い長い一日のはじまり。
なんとっ!驚きのコースタイム6時間にチビ太ニヤニヤ・・・
ヤマアジサイ
むせ返るような緑の中ひたすら上へ上へと汗を垂らして進む
標高差140mごとに刻まれています。これを励みに、というかこれに心を折られます。
実際に歩いてみると標識間の距離は非常に長い。
ゴゼンタチバナ
ギンリョウソウモドキ Indian Pipe
梯子も増えてきました。梯子ゾーンは一気に標高が稼げます。
やっと半分。まだ半分も残っているのか、というのが正直な感想。
鼻突八丁が近づくと、枝の間から槍の穂先がチラチラッと見え隠れ。これで少しだけ励まされます。
さて、始まりますよ~
胸ではなく急峻すぎて鼻がついてしまう鼻突八丁
始まった~!!!
梯子が連続します。ほとんど直角に登るところもあり。
枝の間から槍が見えたよ!
こういった看板の一つ一つの心遣いがうれしいね。
ツガザクラ
鼻突八丁をおえ、樹林帯を抜けること30分?、天狗の庭が近づいてきました。これから開ける稜線の景色への期待が高まる。
あと少し!がんばれ!と看板に背中をおされ。
景色がひらけた~天国の景色だ~
槍ヶ岳をこちら側から見るのははじめてかも。奥穂と前穂がみえ、北鎌、西鎌尾根が見えます。
天狗の庭につきました。この笑顔^^
チビ太センスあるw
山間の谷からガスがあがってきています。
天狗の庭からは天空の稜線歩き。北アルプスの名峰が手の届きそうな距離に、あちこちにあります。
目の前には不動岳2601m、左肩の稜線の先には烏帽子岳2622(二百名山)。
疲れていたけど、『りょうせんパワー』もらったから元気いっぱい。
ハクサンシャクナゲ
チングル^^
チビ太よ、花の名前を略するな!
雪渓がありました。涼しかったよ~。
当然ながらこの後雪合戦勃発!
七倉岳への稜線から、出発地の七倉山荘が芥子粒のように見えました。
ズームイン!よくこんな高さを登ってきたもんだ。
コイワカガミ(ピンク)チングルマ(白)
雪渓を越えて船窪小屋に到着
チビ太山小屋探検開始
以降、チビ太カメラマン撮影の写真が続きます。
カメラを渡して小屋探検してこいと放ちました。
以上、チビ太によるフォトレポでした。
小屋に着いて鐘を鳴らしてもらい、その後疲れたチビ太は昼寝☀😪
剣岳立山薬師岳を従えての贅沢な部屋割りでした。
一時間たってお腹がすいたと起きてきました。
後ろに剣岳、立山、薬師岳を従えて遅いランチ
景色よすぎてみんなご機嫌。
ランチが終わるともう一度本日二回目の昼寝。夕食は16時半と早めですが、ハラヘリ傾向なのでOKでしょう。
なんと!我々の夕食は外で北アルプスを眺めながらのディナーになりました。メニューは近くでとれた山菜の天ぷらと船窪小屋の新メニュービーフシチューです。
人生で一番の絶景からのディナーです。
バックに見えるは槍の穂先
不動岳の奥に見えるは薬師岳
水晶岳、野口五郎岳
五色ヶ原に沈む夕日とコマクサちゃん
夕焼けショー出待ち
Lift Off 🚀
Lift Off 🚀
五色ヶ原に沈む夕日
日が暮れると、ランプがともりました。8時前にはチビ太寝てしまったので、親父はワインをもって外に出て、満天の天の川を眺めていました。寒かったわ。
朝です。チビ太の靴ひもしめて、朝食後のお散歩へ。
小屋から往復30分で七倉岳に行きます。
これは餓鬼岳かな?雲海の上に八ヶ岳と富士山が頭を少しだしていますね。
七倉岳の山陰が渓谷に写っていました
七倉岳
針ノ木岳展望ポイントへ
針ノ木岳の全容を拝むことができる、秘密のスポットから。
雲一つない青空を突き刺す槍
雪渓歩き。ここだけ天然のクーラーがきいていました。当然ながらこのあと容赦ない雪合戦が勃発します。
常に槍を遠くに見ながらの稜線歩き。夢見心地。
ヘリコプター二機・・・ではなくトンボです。
チビ太大先生お昼寝タイム
Zzzzz
タケシマラン
下山はあっという間と思いきや、4時間近くかかりました(コースタイム5時間のところを4時間半くらいかな)。最後は暑く、発汗量多過ぎで大人の私がバテてチビ太に励まされる始末。
ゴールしました。
頭の上にあるのが船窪小屋の稜線だよ。
急ぎ帰路につきますが、沿道にお蕎麦処「高瀬」を見つけました。注文したのはザルそば大盛り二膳ですが、チビ太からおこぼれはいただけませんでした。
最後まで親ばか登山ブログお読みいただきありがとうございました。
次は熱い丹沢でキャンプの予定です!