アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

大学等におけるアイヌの人々の遺骨の保管状況等に関する調査 調査票

2018-07-10 12:46:30 | 日記

第31回アイヌ政策推進作業部会の議事概要が出ました(第31〜34回の議事概要はしばらく出されていませんでした)。第31回は昨年の2017年4月に開催されていたのに、1年以上も未公開のままでした。

内容を見ると、最初に大学等におけるアイヌ遺骨の保管状況の再調査結果の報告があり、「これらの資料については、今後、文部科学省のホームページ等で公開をする予定」とありますが、再調査結果をクリックして見ることができます。

また、「これからのアイヌ人骨・副葬品に係る調査研究の在り方に関するラウンドテーブル最終報告書」に関する件が審議されています。この概要はこちら

この「(3)研究の対象となりえる遺骨と副葬品」には、「研究倫理の観点から見て研究対象とすることに問題がある」として、研究対象にしないとする4項目が記されています。その4番目には

iv・ 収集経緯が不明瞭であるものや時代性や埋葬地に関する情報を欠如するものや資料の正当性を担保する基本的データが欠如するもの。そのほか調査行為自体に研究倫理の観点から見て学術資料として活用することに問題を含むもの

とあり、現在、大学等に「保管」されている遺骨が該当するのですが、ここには以下の但し書きがつけられています。

なお、iv」の条件に該当するもののうち、アイヌを交えた検討と判断の結果として、研究の有効性がしかるべき手続きを経て保障される場合には、限定的に研究を行う可能性も残される

この、「アイヌ」は「北海道アイヌ協会」を指すのか、個人のアイヌを指すのかは不明ですが、数あるアイヌグループの一団体だけ、あるいは個人を交えて「検討と判断の結果」で研究が出来ると書かれているのです。

 

北大開示文書研究会のメンバーが『大学等におけるアイヌの人々の遺骨の保管状況等に関する調査 調査票』の開示請求をし、開示されたデータファイルを研究会サイトで見ることができます。こちら

じっくりと確認していこうとおもいます。北大、札医大に関して状況は把握できていましたが、他の10大学は初めてです。東京大学が「保管」しているアイヌ遺骨は全201体のうち、かなりの数を小金井良精が「発掘・発見」し、「調査研究の一環として収集」とあります。「収集場所」も仲間が数えてくださり35の自治体(クナシリやサハリン、シュムシュ島、エトロフ等含む)から掘り出しています。

調査票には、わかりにくいところも多々あります。たとえば、

①大学における調査の結果、個体ごとに特定できたもの(個体ごとに整理)」

②大学における調査の結果、個体が特定できなかったもの(保管している単位ごとに整理)

との分類の仕方。②の表には「成人3 未成人2」と個体が特定できているように読めるところがあるのですが、どういう意味でしょうか。

 

さて、北海道大学のアイヌ・先住民研究センターの研究員である方が、ツイッターで以下の発言をされていることをdon-xuixoteさんの7/2ブログで知りました。

「2020年開館を目指して建設予定の「国立アイヌ民族博物館」ですけどね。必要ないです。そもそもアイヌ民族は博物館なんて欲しがってないです。学芸員予定で採用されたのも和人ばかりで、アイヌ民族にはほとんどなんの関係もない施設です。作る必要が全くない。」 こちら

「そもそも国立アイヌ民族博物館構想はアイヌ遺骨研究施設と、事実上抱き合わせの企画でした。遺伝子研究を狙う人々にとって博物館はいわばダミーでしかなかった。アイヌ遺骨研究計画が頓挫した今となっては博物館を欲しがる人はもういない。作らなくても全く問題ない。」 こちら 

ツイッターをやっていないのでわからないですが、誰でも読むことが出来るのですね。下段の「国立アイヌ民族博物館構想はアイヌ遺骨研究施設と、事実上抱き合わせの企画でした」ときっぱりと言われています。そうだろうとは感じていましたが、確実な証拠をもっておられるということでしょう。「遺伝子研究を狙う人々にとって博物館はいわばダミーでしかなかった」にも驚き。上段の「そもそもアイヌ民族は博物館なんて欲しがってないです」には、わたしの周りのアイヌ民族の方は同意見。「学芸員予定で採用されたものも和人ばかりで、アイヌ民族にはほとんど関係もない施設」という発言は、学芸員予定者のリストを見たということでしょう。アイヌ民族の方の雇用につながらない施設は問題があるのではないでしょうか。

ただ、以前からこのブログでも指摘しているように(例えば最近では6/26記事や上述)、遺骨の遺伝子研究の可能性はまだありますので「頓挫」したとは言えないでしょう。

ひとり芝居の舞香さんが、ご自身の公演「神々の謡」の2公演分のDVDを送ってくださいました。映像がとてもきれい。みなさんに宣伝して、ぜひわたしたちの力で生公演をと願っています。感謝、感謝。

金成マツさんと知里幸恵さんの墓前で祈祷(銀のしずく記念館をお訪ねする度に寄らせて頂いています。この写真は今年の4月にお訪ねした時のもの)。