アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集い パート2

2012-07-12 11:53:13 | インポート
『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集い パート2のご案内です。
送られてきたはがきには開催時間が書かれていませんでしたが、チラシで補足しました。
本日、副読本問題の署名第二次集約分をアイヌ文化振興・研究推進機構に渡しに行くとのこと。第一次集約から二週間ですでに2千筆を越えたようです。わたしの手元にその後に届いた70筆分と、これからいくつかの教会を回って収集する分を含めて持参する予定です。第三次集約の日時を「考える会」に聞いて、再度、呼びかけを行います。

 (財)アイヌ文化振興・研究推進機構が、全道の小学校4年生、中学校2年生に配布している副読本『アイヌ民族:歴史と現在』の記述を、一議員の政治的圧力でアイヌ民族の先住権を否定する内容に書き換えた通知文を全国に発送した「アイヌ民族副読本改ざん」問題は、各方面に大きな波紋を投げかけました。
 しかし、現行副読本を作成した編集委員会の開催を強く拒否していた財団も、『アイヌ民族副読問題を考える会』の諸行動を始め、道内外各界・各層からの抗議、要請、申し入れなどが相次ぐ中で開催された財団の評議員会や理事会でも厳しい批判や抗議を受け、ついに編集委員会の開催を認めざるをえなくなり、協議の結果、現行編集委員会による早期の副読本発行を勝ち取ることができました。
 私たちは、この間の運動の成果と課題を市民の皆さんに報告し、あわせて、焦点になった『先住権』の問題について学び語り合いたいと思い、『市民の集いパート2』を企画しましたので、前回同様たくさんの方々の参加をお待ちしております。共にこの問題を考えてみましょう!

日時 : 7月16日(月) 午後2時~       資料代:300円
会場 : かでる2・7 「710研修室」(札幌市北2西7)
内容:提言~市川守弘(弁護士)
★シンポジウム~小野有五(北大名誉教授)・清水裕二(少数民族懇談会会長)・市川守弘(弁護士)
主催:アイヌ民族副読本問題を考える会 問い合わせ先 ainu_subtext@yahoo.co.jp



オオウバユリの花芽です


アイヌ人骨盗掘・返還請求無回答の問題ですが、近く動きが出てきます。
先立って、北大開示文書研究会代表が政府のアイヌ政策推進会議での議事概要から遺骨問題の部分をピックアップしてまとめてくれました。確認しながらいくつか気になることが出てきましたので、さっとおさらいをしてみます。

まず、『民族共生の象徴となる空間部会』議事をながめると、「尊厳ある慰霊」と「研究による成果還元」に関して推進の立場での意見として、
○人骨問題に関しては、尊厳ある慰霊と、研究による成果還元の両立を求めたい。研究によりアイヌのルーツや過去の生活状況が明らかになれば、差別や偏見の解消につながっていくと思う。
○人骨研究に関しては、昔に比べてアイヌの人類学に関する理解が進んでいること、今後も遺跡から発掘される人骨が出てくるという状況を踏まえる必要がある。アイヌから人類学者が出てくれば研究の必要性も高まることになる。
○先住民族の人骨の慰霊と研究の両立は、世界では例がない取り組みであり、我が国では可能ではないか。慰霊が主であるが、人骨研究もアイヌにとって如何に重要であるかを時間をかけて説明していきたい。それまでの間、将来の研究の可能性を含め、一カ所できちんと管理していくことが重要。 (以上、第6回部会 2010年7月26日)


とあり、慎重の立場の意見として以下が記されています。
○人骨問題は、筋論から言えば、懇談会報告に記載されているとおり、アイヌの精神文化を尊重し、国として負っている責任を果たすことであり、慰霊と研究を同列に扱うことは出来ない。現実論から言えば、現在、いくつかの大学で人骨を保管しており、アイヌ民族との協議に基づいて研究に活用する可能性はある。研究によってアイヌ民族のルーツが明らかになればアイヌ民族にとってもプラスであろうし、慰霊施設の設置といっても、納骨だけでは地域にとっては受け入れ難いかもしれない。どの筋から議論すれば、どういう論点が出てくるかを整理する必要がある。
○人骨問題は、徹底的に議論が必要。アイヌ側の総意集約が前提。(第6回部会 2010年7月26日)


以前から指摘していますが、誰の発言かが記されていないため、どの立場からの意見かが分かりません。
ただ、その後、推進側の意見が強まってきます。
○アイヌの人骨については、研究者が減少しており、大学によっては早晩、責任を持った管理ができない状況になることも考えられる。象徴空間で集約し、過去を明らかにした上で研究成果を還元していくことが必要と考える。
○研究に活用することは北海道アイヌ協会として了解している。 (以上、第8回部会 2010年11月18日)
○アメリカのように遺骨を再埋葬してしまえば、100年後に先住民族のルーツが歴史の中で消えていくおそれさえある。アメリカの例は、現状のみに目を奪われて将来について考えないことが問題であると思う。アイヌ人骨の研究成果が、アイヌの人たちや国民に還元されるために、50年、100年保管が可能な状態が必要。これはアイヌ協会と同じ考え方。 (第10回部会 2011年1月27日)


なんと、研究者不足を理由に集約と研究推進が述べられていたり、研究しないと先住民族の歴史が消えるという言い方がなされ、研究の必要性が強調されています。
また、「北海道アイヌ協会として了承している」とありますが、アイヌ協会の会員のみなさんのどれだけが、ご自分の先祖の遺骨を盗掘されたという情報を受けているかが疑問に残ります。また、アイヌ協会会員ではない遺族に対する承認の問題については触れられていません。アイヌ協会への承諾がアイヌ人骨すべてを研究対象にしていいということにならないはずです。

そして、「民族共生の象徴となる空間」作業部会のまとめとなる「報告書」(2011年6月)には、以下がまとめられています。
集約の対象となる人骨を特定し、人骨の返還や集約の進め方に関する検討を行うため、各大学等の協力を得て、アイヌの人骨の保管状況等を把握する。 なお、集約に際しては、施設の設置場所に留意するとともに、地元の理解を得るよう努めるほか、集約した人骨については、アイヌの人々の理解を得つつ、アイヌの歴史を解明するための研究に寄与することを可能とする。

これを受けて、第1回「政策推進作業部会」(2011年8月31日)の「意見」の中で、
「人骨の取扱いについて一番大切なことは、どのような経緯だったのかということについて、可能な限りの情報開示、情報共有。最終的には、返還、集約についても合意が必要。」
とあり、第2回「政策推進作業部会」(2011年11月14日)においては、文部科学省からの説明で、2012年12月を回答期限として、国公私立大学及び大学共同利用機関において保管しているアイヌ民族の人骨の情報、保管に至った経緯、人骨の出土等に関する情報、人骨等の保管状況に関する情報について調査することを承認し、現在に至っています。

人骨の保管状況がどの程度あきらかになるかが注目です。施設の設置場所をどのように「留意」するのか。さらに、アイヌ民族の理解を得るためどのような努力をされるのかも。
前回blogにも指摘しましたが、7月6日に開催されたアイヌ政策推進会議(部会ではない全体会議)の報道記事では、これらの問題を「速やかな検討を進めるとした」(朝日新聞7月7日記事)とあります。速やかに、じゅぶんに多くの意見を聞いて検討を重ねることを願います。


夏です。ビーチも整備されてきました。みなさん、どうぞ留萌へ!