アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

シンポジウム「さまよえる遺骨たち Part3」報告 その4

2013-05-11 11:47:54 | インポート
前述のドイツ、アメリカ、イギリスの遺骨返還の状況報告の後、休憩をはさんで前日に行われた裁判報告として、原告の城野口ユリさん(アイヌ遺骨返還訴訟原告、少数民族懇談会副会長)、小川隆吉さん(同、北大アイヌ人骨台帳開示請求人) が、お話しされました。
城野口さんは帯状疱疹で入院中の中、駆けつけて母親から受け継いだ思いを語り、裁判支援を訴えました。
小川隆吉さんも昨日の意見陳述をした疲れの中、裁判への意気込みを語られました。お二人の思いは直接、webサイトで見る事が出来るようになりますから、ご覧下さい。

その後に、先日の裁判の証拠として被告側の北海道大学が提出した『北海道大学医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関する調査報告書』(乙第12号証 以下、「報告書」)に関する意見を当日の資料に基づき、市川利美さん(北大開示文書研究会メンバー)によって行われました。これも以前から紹介しているサイトから資料を見て頂き、ご確認ください。重なるところもありますが、わたし個人の意見は後日、このblogにて書く事にします。

原告代理人の市川守弘さんによる「遺骨返還請求訴訟の経過」報告がなされました。
以下、大まかな報告をいたします。

この訴訟は、ひとつは浦河杵臼から違法に持っていった遺骨を杵臼コタンに返せという主張。そして、もう一つは、違法に持っていった骨を返さないでいるのだから、毎日のように先祖の供養をしたい原告たちの信教の自由を侵害していることへの慰謝料が日々発生している(過去に持っていった事は時効かも知れないが、今も慰謝料は日々発生している)という二本立てだ。

これに対して、北大は、何らかの承諾を得たと「報告書」ではっきり言わないと、慰謝料が発生するので書いている。中には、土地所有者への承諾を得たからいいのだと述べているところがあるが、みなさん考えてみて下さい。杵臼は明治時代から浦河町営墓地です。その町の承諾を得たから発掘はいいのだと言っているのです。みなさんの中で札幌の市営墓地にお墓を持っておられる方がおられるでしょう。札幌市が承諾したからあなたの墓を暴いていいのだ、という論理と同じであって通用しない。

もう一つは、北大は肝心かなめの人骨台帳も出さずに、いったいどう発掘したか分からないと言っている。これは実は、北大の戦略なのだ。管理はずさんだとの指摘に、その通りずさんだと認める事により、「だから、この骨は誰のものかわかりません」と言って返還しないことを裏付けようとしているのだ。マスコミにずさんだと叩かれても北大は痛くもかゆくもない。「はい、その通りです。だから返せません」という論理で進んでいるのだ。
今回の裁判で北大側の主張は、原告である小川さんや城野口さんらが「祭祀承継者」であることが認められれば速やかに返還しますと言っています。この「祭祀承継者」とは、戸長が相続する家督相続制度で、一戸は長男が墓の管理も含めて相続していくという、極めて独特な和人的日本的な風習のもとでの制度であって、それはあくまで個人だ。そうすると、骨が出て来て、その骨が誰の家のものか(城野口家のものか、小川家のものか)が、残念ながら管理がずさんだったためにわかりません、だから返せませんという論理に北大は立っているのだ。
今、このことが裁判の焦点となっており、こちらは、遺骨はコタン(村)のもので、コタンみんなでイチャルパ(先祖供養)し、コタンの管理権限であるゆえにコタンの子孫に返すべきだと主張している。これはまさに和人的な封建的家父長制度に対してアイヌの考え方に基づく管理制度との争いだ。
つまり、アイヌの人びとの存在と自立を認めるのであれば、アイヌの考えに従って遺骨返還をしなければならないのだ。民法から言っても、アイヌと言わなくとも地域の習慣の方が有利であり、アイヌであればなおさらだ。
この事は、北大の教授たちもよく理解している事だというのは、政府のアイヌ政策推進会議第10回「アイヌ政策推進作業部会」 (2013年2月22日)の議事録をみても明らかだ。そこには、「諸外国の例を見れば、地域や団体に 返還するのが原則で、個人に返還する ほうが例外というか、ほとんど例を見 ないくらいである。」(議事概要8頁)に書かれている、しかし、自分たちは祭祀承継者という個人に返すのだと言っているのだ。つまり、自分たちは世界の流れとは全く違う考えをとっているのだと国と北大が認めている。このようなことを許すわけにはいかない。これから裁判の佳境に向かっていくので是非ともみなさんに裁判の傍聴をして頂きたいし、これは骨を返せという事だけではなく、アイヌの考え方=その前提としてアイヌの存在とアイヌの社会というものの自立性を認めさせる戦いなのだということをご理解頂き、支援をおねがいする。

※アイヌ政策推進会議第10回「アイヌ政策推進作業部会」 (2013年2月22日)の議事録は以下。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/seisakusuishin/dai10/gijigaiyou.pdf

趣旨を変えないようにテープを聴きながら補いました。とりあえず、これでシンポジウムの報告を終わります。
次回は、北大の「報告書」に対して書く予定です。
このブログの字の色がうまく変えられずにいます。読みにくいかもしれませんがお許しください。


次回、第4回口頭弁論は6月14日(金) 午後2時より 札幌地裁8階にて
今年度より札幌地裁では入館の際に厳しい手荷物検査、ボディーチェックがされるようになりました。
なんでも全国の数カ所で試験的に導入だとか。入館に時間がかかる事がありますので早めにお越し下さい。
多くの傍聴をお願いいたします。

裁判原告の小川隆吉さんが7日、苫小牧駒沢大学で講演し、提訴のいきさつやアイヌ民族の心を学生に訴えたことが苫小牧民報のWEBで紹介されています。
http://www.tomamin.co.jp/2013t/t13050903.html

なお、「先住民族関連ニュースブログ」にて、アイヌ民族関連・世界の先住民族関連のニュースを毎日チェックしてストックしています。どうぞ、ご覧下さい。
http://blog.goo.ne.jp/ivelove/


留萌も朝はストーヴをつけていますが、やっと春らしくなってきました。
今朝は、遊びに来ている近所の子どもたちの野球の試合を寒いなか観戦。
見やすいところを選んで相手チームのベンチで、「よっしゃ~」と大声で応援。
負けはしたものの、寒さのが吹き飛ぶ試合でした。全体的に下手だった…けど、頑張っていた!


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