アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

『北海道大学医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関する調査報告書』

2013-10-03 20:04:11 | インポート
前回のはじめにNHK国際放送のURLをお伝えしましたが、英語のみで日本語の解説はありませんでした。それを翻訳して、『P.S. #3』さんが出血大サービスで、ナレーション全文を訳出してUPして下さっています。どうぞご覧下さい。
http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2013/09/29/003403

さて、国のアイヌ政策推進会議は、昨年に全国の大学等におけるアイヌの人骨の保管状況等調査を実施し、結果概要が報告されました。各議事概要は以下のURLに行けば見る事が出来ます。

第11回議事概要
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/seisakusuishin/dai11/gijigaiyou.pdf
第12回議事概要
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/seisakusuishin/dai12/gijigaiyou.pdf

アイヌ民族の人骨を保管していると回答のあったのは11大学1,635人骨で、大学別の内訳は、北海道大学1,027体、東北大学20体、東京大学198体、京都大学94体、大阪大学39体、札幌医科大学251体、大阪 市立大学1体、金沢医科大学4体、南山大学(名古屋)1体となっています。

その内、千体以上もの遺骨を保持している北海道大学は『北海道大学医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関する調査報告書』(以下『報告書』)を2013年3月に公にし、この度のアイヌ人骨返還等裁判に証拠として提出しました。

『報告書』は北大開示文書研究会ウェブサイトの「資料室」に保存していますので、以下から読む事が出来ます。
http://hmjk.world.coocan.jp/archives/hokudai_report2013.pdf

『報告書』の「本報告書作成の目的」には、
① 北大「医学部旧解剖学教室が、アイヌ人骨を収蔵するにいたった経緯とその問題点を明らかにする」
② 同解剖教室が「アイヌ人骨を収蔵した後における取り扱いとその問題点を明らかにする」
の2点が挙げられています。180頁もの厚さにも関わらず、内容は学者が調べて書いたと思えないような雑さだという感想を持ちました。

『報告書』はかつて遺骨を発掘する際に学者たちが記入する「野帳(フィールド・ノート)」、および、収集した人骨を管理する「発掘人骨台帳原本」が存在することを「疑う余地はない」(p.5)と、はじめてその存在を認め、公にいたしました。
北大開示文書研究会や、この度の遺骨返還訴訟を起こした遺族たちが何度も質問や要望をしたにも関わらず全く無視をし続けていた北大でしたが、ここにきてはじめて今まで開示された資料の元になる原本があったことを認めたのです。
しかし、それらすべて現在は不詳と結論しています。これに不審を感じるのは『報告書』を見る限り、当時に関わった学者やその子孫から聞き取るなど全くなされておらず、真摯に資料を探していないことです。

さらに驚くべきことは、台帳原本の写しがあったこと(現在、不詳)、それらを使って医学部は2008年1月24日に資料を作成していた事が記されています。実は、原告の小川隆吉さんが北大に対してアイヌ人骨の台帳の存在を知り、1月14日に情報開示請求の手続きを行ったのですが、その時点では医学部には基本台帳(ないし、その写し)が存在していたことになります。後日に小川隆吉さんはその事実を知り、「愕然」とし、「北大には、「虚偽」と「隠蔽」しかありません。真実に近づくための学問の府とは、正反対です」と怒りを込めて語っています(4月19日口頭陳述書)。


第3回口頭弁論前の裁判所前にて 
原告の城野口ユリさん(中央前)と小川隆吉さん(中央後

『報告書』には、「基本台帳」ばかりではなく、多くの未開示資料が記述されており、北大開示文書研究会は再度、開示請求を行う準備を進めています。
 
国のアイヌ政策推進会議での話の中では、遺骨返還は「祭祀承継者(遺族のうち祖先の祭祀を主宰すべき者)個人を基本とし、地域のアイヌ関係団体、また本来の祭祀承継者以外の方への返還は、法的論点の整理を含め今後の検討課題とする。返還手続のガイドラインに関して個人が特定できそうな遺骨については、速やかに検討に着手」するとあります(上記)。

原告側は、アイヌ民族は遺骨をコタン全体で管理していたのだから祭祀主体であるコタンに遺骨を返せ、原告らはコタンの管理権を引き継いでいるのだと主張しています。この部分が争点になってきます。
(次回に、第5回口頭弁論 8/30の報告を続けます)


美瑛の青い池。玉山神学院の研修生らと初めて見に行きました。神秘的でした。


最新の画像もっと見る