アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

ILO第169号条約 先住民族の権利

2008-01-26 16:20:21 | インポート
国連の「先住民族宣言」関連を調べていたら気になることが
出てきたので調べてみました。 ブログをメモにしてしまってスミマセン。

1995年3月、内閣官房長官の私的諮問機関として
「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」が設置されました。
翌年の1996年4月1日に官房長官に提出された報告書では、
アイヌ民族の先住性も民族性も明確に認められています。

結論の部分だけ引用します。


「・・・アイヌの人々は当時の「和人」との関係において日本列島北部周辺、
とりわけ我が国固有の領土である北海道に先住していたことは否定できないと
考えられる。」 
          (報告書1アイヌの人々(1)アイヌの人々の先住性 より)

「・・・我が国におけるアイヌの人々は引き続き民族としての独自性を保って
いると見るべきであり、近い将来においてもそれが失われると見通すことは
できない。」  
          (同報告書1アイヌの人々(2)アイヌの人々の民族性 より)



と、いうことは、有識者懇談会はアイヌを先住民族だと報告書で述べているのです。
けれど、先住権に関しては何も語っていませんでした。


さる1月20日にNHK「日曜フォーラム」の録画をやっと見ました。
その中でパネラーの阿部一司さん(北海道ウタリ協会副理事長)が、
日本政府はアイヌを先住民族と認められるか分からない、先住民族の定義が
あやふやだというが、それは二枚舌だと指摘しておられました。
それは、1996年阿部さんが初めて国連に行ったとき、
先住民族作業部会で日本政府の代表が、
「先住民族の国際的な定義は二つある。これを使ってはいかがでしょうか」
と提言したそうです。
定義の一つは、ILO第169号条約の第1条第1項に先住民族の定義が書かれています。
定義の二つ目はホセ・マルチネス・コーボゥの1981年の報告書にある先住民族の定義。

日本政府の代表がこのように言ったのですから、重要なことですね。
一方では定義がないかのように言い、一方では定義が二つあるというのだから、
二枚舌だ、と。これは先住民族作業部会の記録にも載っている、と。

さて、二つの定義を引用して見ます。
ホセ・マルチネス・コーボゥに関しては、2007年2月28日の当ブログで紹介しました。
3月1日に報告書のほうの引用も。 どうぞご覧下さい。
もう、一年になるのですね。真面目に書いています。

では、ILO第169号のほうは・・・



第1条
1 この条約は、次のものに適用する。

 (a)独立国における種族民であって、その社会的、文化的及び経済的な条件が、
   その国民社会の他の部門と異なり、かつその地位が全部又は一部それ自身の
   慣習もしくは伝統、又は特別の法律もしくは規則によって規律されている者。

 (b)独立国における民族であって、服従もしくは植民地化又は現在の国境が画定
   されたときに、その国又は国の属する地域に居住していた住民の子孫であるために
   先住民族とみなされ、かつ、法律上の地位のいかんを問わず、自己の社会的、
   経済的、文化的及び政治的制度の一部又は全部を保持している者。



ちょっと難しい文面ですが、先住民族の定義がされています。

が、しかし、この後に続く第3項には以下の言葉が付せられています。



   3 本条約での「民族」という用語の使用は、国際法においてこの用語に付される権利に関し
     何らかの意味合いを持つものと解釈されてはならない。



う~ん。先住民族の定義が書かれているけど、権利は持たないよとあえて加えているのですね。
しかし、先住民族の定義はなされています。

参考:「先住民族の権利 ILO第169号条約の手引き」 マヌエラ・トメイ他著  論創社
    「アイヌ文化を伝承する 萱野茂アイヌ文化講座Ⅱ」 萱野茂他著 草風社
    1月20日(日) NHK教育 午後6時放映「日曜フォーラム アイヌ新法 10年の成果と課題」


明日は日曜日です。
礼拝は札幌地区の地区間交換講壇で、わたしは厚別教会に行って礼拝奉仕をします。
代わりに厚別教会の安部さん(当センターの会計を昨年してくださった)が留萌の奉仕をしてくださいます。
礼拝後、小川隆吉さん宅に招かれているのでお話を伺ってきます。





海のほうから見た朝日がのぼる町
この数日で朝の明るくなる時間がみるみる早くなっています。


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