アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

森林認証とアイヌ民族

2016-11-14 07:48:45 | 日記

明治政府は、1872(明5)年に「北海道土地売貸規則」と「地所規則」を公布し、「私有地」を除く土地すべてを対象に、ひとり10万坪を限度に売り下げました。この「私有地」の対象は和人であり、アイヌ民族は対象外にされていましたので、「現実にアイヌが居住している宅地およびその周辺の土地に関してさえ、それを保証するための法的処置はなに一つ記されていなかったから、こうした土地さえもが一方的に和人による分割私有の対象になった」(榎森進著『アイヌ民族の歴史』P394)

さらに、1886(明19)年に「北海道土地払下規則」、1897(明30)年に「北海道国有未開地処分法」を公布。「北海道土地払下規則」は、資力のある資本家や地主に、一人につき10万坪を限度として土地の払い下げを行い、「北海道国有未開地処分法」は、開墾・牧畜あるいは植樹に供する土地を10カ年間無償で貸し付けたうえで、「全部成功」すれば無償で付与するというもので、開墾目的はひとり150万坪、牧畜用地は250万坪、植樹用地は200万坪を与えられた。さらに、会社や組合の場合はその2倍の土地を貸し付けられることが可能だった(前掲書P395)

 二風谷の裏山も、それにより三井財閥の山となったようです。先日、購入した『アイヌ民族の復権〜先住民族と築く新たな社会』(法律文化社)の第一・二部は貝澤耕一さんが執筆されていて、たいへん興味深く読みました。特に、2009年に三井財閥から二風谷のアイヌ達に「わたしたちはアイヌ文化の継承に協力していると言うことを承諾してほしい」と言ってきたくだり。

「三井財閥はこれまでアイヌに対して何もしてこなかった。いや逆にアイヌをいじめてきた大企業がアイヌたちのために、文化を守ることに協力していることを認めて欲しいと言い出してきたのである」(P27)

なぜ頼んで来たかと言うと、その背景に国際的に先住民族をおろそかにしている企業は、もう外国では受入れられないという現実があると貝澤さんは指摘します。先住民族アイヌの文化継承や文化伝承に必要な場所を無償提供するなどの協力がないと外国での評価が低く、仕事が出来なくなるのだ、と。それゆえ、三井財閥は自己の利益のためにアイヌ民族に協力を求めてきたのだ、と。

三井フォーレストとアイヌ協会平取支部(当時)の役員との話し合いの席上で、アイヌ民族側から「あなたたちはこれまでアイヌ民族に対して何もしていないし、逆にアイヌを苦しめたことはわかるでしょう」「あなたたちはアイヌの土地を奪って自由に使って、アイヌの人々を苦しめたでしょう」と言ったら、先方は「はい、それは事実です、今後そういうことは無いようにします」と答え、「最大限の努力は払います」と言ったので、先方の依頼に一応、承諾した、と。そして、今後、どのように協力するのかを見て行く、と。

 

森林認証制度(FSC)の認証基準の改定(2012年)に関して、過去Blogで紹介しましたが、今まで国が先住民族から搾取し、先住民族が自由に扱うことを許さなかったことが、今度は立場が逆転し、国や企業が先住民族に承諾を得なければならなくなった(いわば正常化)ことで、どのように先住民族アイヌの状況が変わるでしょうか。楽しみです。

FSC認証とアイヌ民族の新しい状況は、おそらく、来る11月19日に行われる「第3回アイヌ政策検討市民会議」での上村英明さんの報告でなされることでしょう。以下、ご案内です(以下、敬称略)。

 

第3回アイヌ政策検討市民会議

日時:11月19日(土)14:00~18:00 

場所:北大学術交流会館小講堂(正門から入ってからすぐ左手の建物)

14:00~14:15 ご挨拶 宇梶静江

14:15~14:45 アイヌ民族の伝統的狩猟権 畠山 敏

14:45~15:15 教科書問題 若月美緒子

15:15~15:45 落合講演問題 若月美緒子

15:45~16:00 休憩

16:00~16:30 森林認証と先住民族 上村英明

16:30~17:15 市民会議の今後の運営について

17:15~17:45 総合討論


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