~Agiato で Agitato に~

再開後約20年になるピアノを通して、地域やほかの世代とつながっていきたいと考えています。

筒井筒

2012年06月19日 20時35分07秒 | 見る・読む

ご存じ、「伊勢物語」の中の第二十三段。

なんだ、古文か~と回れ右することなかれ(笑)。もちろん現代語訳でいきます。

 

【伊勢物語/筒井筒:第二十三段】(第二十二段のものもあります)
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昔、田舎回りの行商をしていた人の子供たちが、
井戸の周りに出て背を比べて遊んだりしていたが、
成人し大人になったので、
男も女も互いに顔を合わせるのが恥ずかしくなっていたけれど、
男は「彼女を是非妻にしたい」と思っていた。
そして女は、「彼と結婚したい」と心に決めていて、
親が見合いさせようとするけれど、耳を貸さなかった。
そして、この隣りの男のところから、こんな歌が送られてきた。

《筒井筒井筒にかけし まろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに》

『筒井戸のその井戸枠と背丈比べをしたわたしの背丈も、
今では、その枠をすっかり越えてしまったようです。
あなたにお会いしないうちに。』

女も返しの歌を送った。

《くらべこし振り分け髪も肩すぎぬ君ならずしてたれかあぐべき》

『あなたと長さを比べてきました振り分け髪も、今では肩を過ぎてしまいました。
あなたのためでなくて誰のために髪上げをしましょうか。』

などと歌のやりとりを続けて、とうとう念願かなって結婚したのだった。*************************************

ここまではいいですか?うるわしい幼馴染同士の愛ですね。

次いきます。

 

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しかし、結婚して何年も経つと、妻の親が死に、生活が貧しくなった。
一緒に貧乏暮らしをしているわけにもいかないので、行商に出ているうちに、
男は河内の国、高安の郡に、通って行く女ができてしまった。**************************************

当時の生活形態なのでしょうけど、女の親が亡くなってしまって、

ようやく働きだした男です。なのに、ほかに女を作ってしまったという・・・

 

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そんな状態なのに、女は男の行動を憎んでいる様子もなく、
男の身支度をさせて「いってらっしゃい」と笑顔で送りだす。
こんなにされると、男は「妻は浮気心でもあって自分を送り出しているのだろうか」と不審に思い、
河内へ行ったフリをして庭の植え込みに隠れて様子を伺っていると、
妻は綺麗に化粧をし、もの思いにふけったように歌を詠んだ。

《風吹けば沖つ白波 たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ》

『風が吹くと沖に白い波が立つ、その立つという名を持った
龍田山を、夫は一人で越えているのでしょうか。』

それを聞いた男は、妻をこの上なく愛しく思い、河内へ行くのをやめてしまった。
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綺麗に化粧して歌を歌を詠むといいのか・・・・・

それも、自分のことは棚にあげて、妻の浮気を疑っていたわけで。

 

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たまに例の高安に来てみると、女は最初は奥ゆかしくつつしんで化粧もしていたが、
今は気を許して、垂れ髪もぞんざいに巻き上げ、面長の嫌な女の姿になって、
自分でしゃもじを手に取り、ご飯を盛っているのを見て、
男は嫌になってしまい、行かなくなってしまった。*****************************************

愛人のほうは、身なりかまわず、自らご飯を盛っていたので、

男は嫌になったらしい・・・・

 

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男がこんな感じなので、女は、男の住んでいる大和の方を遠く眺め、

《君があたり見つつを居らむ生駒山雲な隠しそ雨は降るとも》

『あなたがいらっしゃる辺りを見ながら、過ごしております。
どうか雲よ、あの生駒山を隠してくれませんように、
たとえ雨が降っても。』

と歌を詠んだ。
やっとのことで男の方から「行くつもりです」と言ってきた。
女は喜んで待っていたが、何度もすっぽかされてしまったので、

《君来むといひし夜ごとに過ぎぬれば頼まぬものの恋ひつつぞ経る》

『あなたが来ようとおっしゃった夜が来るたびにお待ちしますが
あなたは来ず、むなしく過ぎてしまうので、当てにはしないものの
恋しく月日を過ごしております。』

と健気なことを言ったが、
男は結局この女のところへは通わなくなってしまったのである。
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う~む・・・

結局、男は女にあきたというわけである。

ストーリー的には、「一時期愛人に走ったことにより、本妻の良さに目覚めて戻った」というめでたしなものですけど、

なんだか腹が立つのはなぜ・・・

当時は一夫一婦制ではないので、男の行動そのものはとくに咎められるものではないのだけれど、

古文の話って伊勢物語に限らず、突っ込みどころ満載で、「納得いかない」ことばかり。

納得いくわけもないんですけどね。

・・・・・オモテ出ろ、色男。