“ありがとう!お母さん!” 脇目も振らず私一人に全てを捧げた母の人
生・・・その言葉を実感している。老人性認知症(痴呆症)ボケになって数十年、
施設で暮らしている。施設を訪ねる度に笑顔で迎えてくれるが私が誰であるか
が分からない。あの気丈な母が・・・と思うと涙がこみ上げてきて遣る瀬ない。
親子の絆・情は山より高く海より深い、と言われるが、そういう心境・心情を遥
かに超えて母を思い慕う気持ちは、私の胸の襞に深く刻み込まれている。
おこがましいが現実を直視すると臨終まで、ずっと側に付き添っていたい心境・
心情である。健常の時は、私に ひたすら心血を注いで自分の人生をも顧みず
育ててくれた。月並みの感謝では済まされない。・・・“母よ!もっと自分の人生
を謳歌してほしかった”、と、今にして思えば、声を大にして叫びたい。“ありが
とう!ほんとうにありがとう!”心からお礼する。母よ!兎に角、長生きして天
寿を全うしてください、と今は、その事だけを祈っている。