一人去り（亡）、二人去り（亡）、又、・・・うん、寂しくなる。・・・人生の悲哀を
感じる今日この頃である。居酒屋で飲む度に何時も熱唱していた歌謡曲？演
歌が灰田勝彦の「燦めく星座」だった。何故、今頃、こんなに感傷的になるのか
分からない。歳の所為（せい）にはしたくない。喧しい世の中に嫌気がさし心の
平安を求めて暫し逃避しているのだろうか？・・・何となくそういう気もする。一番
の歌詞、二番の歌詞を、じっくりと噛みしめる度に彼の事が思い出される。逝く
真近のあの憂愁に閉ざされた憂い顔が忘れられない。逝く事を悟っていたのだ
ろうか、今にして思い出だすと、何となくそんな気もしてくる。 友よ！君との談
論風発、世相を斬りまくり悦に入っていた頃が懐かしく思い出される。そう、論
陣を張って、ワイワイ、ガヤガヤ 言い合った君も今は居ない。寂寥が込み上げ
てくる。あの熱のこもった声量に威圧されて たじろぐ事も しばしば あった。今
となっては懐かしい。君の心の歌「燦めく星座」の歌詞を紐解くと、何となく、君
の思いの丈が分かる様な気がし、あの当事の先達、先輩の気心・気概が分か
る様な気がしてくる。昭和１５年の作詞作曲だから太平洋戦に突入する１年前
だ。戦時下の喧しい時勢の熱（いき）り立った軍国の世だ。そこに暫しの心の
平安を求めて安らぎを得ようとしたのだろう。先達、先輩の思いの丈が至極、
分かる様な気がしてくる。あの広大無辺の夜空を見上げると全ての厭なことを
忘れ浮世の辛さを払拭させてくれる。心が純になる。煌めく星座が夜空一杯に
散りばめられてピカピカと輝く。束の間の童心に還るのも幼い頃を想起するの
も納得だ。男の心意気！ 男の夢と希望が錯綜して愛を奏でる。燃えるような
情熱と憧れ、思いこんだら命がけ、それは「煌めく金の星」なのだ！現代が忘
れかけた心のオアシスが蘇ってくる。今は亡き友の顔を思い浮かべ冥土の旅
でも熱唱してくれ！と小声で叫びながら今日も一人、居酒屋で寂しく飲んでい
る。・・・
――「燦めく星座」――
作詩 佐伯孝夫 作曲 佐々木俊一 昭和15年
１ 男純情の 愛の星の色
冴えて夜空に ただ一つ
あふれる想い
春を呼んでは 夢見ては
うれしく輝くよ
思い込んだら命がけ 男のこころ
燃える希望だ憧れだ
燦めく金の星
２ 何故に流れくる 熱い涙やら
これが若さと いうものさ
楽しじゃないか
強い額に 星の色
うつして歌おうよ
生きる命は一筋に 男のこころ
燃える希望だ 憧れだ
燦めく金の星