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フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

10月19日(日) 晴れ

2014-10-20 09:39:34 | Weblog

7時半、起床。

ポタージュスープとサラダ(コーン、トマト、レタス)の朝食。

11時に家を出て、神楽坂へ。今日は「SKIPA」でいろは句会(第7回)。

私が一番乗り。

梅ジュース(ホット)を注文してみんなの到着を待つ。蚕豆さん、恵美子さん、紀本さん、京さん、私、今日の参加者は5人。

5人×3句=15句が出そろった。今回の兼題は「会」。3句中一句は「会」の字を入れる約束。他の2句は自由題。

1人が3句(天=5点、地=3点、人=1点)を選ぶ。しばし黙考。

各人が選んだ3句を挙げ、集計する。入選作について得点の高いものから順に選んだを人が選んだ理由(鑑賞)を述べる。しかるのにち作者が明らかにされる。今回の入選は以下の8句。

13点(特選) いつになく野良がじゃれつく夜寒かな  たかじ

12点 月が煙草百本吹かせば夜の雨  恵美子

6点 笑茸ふとしたときに落ちる水  紀本

5点 気味悪いかぼちゃと渋谷公会堂  紀本

3点 鏡割り私立探偵は失業中  蚕豆

3点 神無月会わずに帰る獣道  蚕豆

2点 冬近し会いたき人の二三人  たかじ

1点 あなたから名字で呼ばれたら葡萄  紀本

今回の特選には私の句「いつになく野良がじゃれつく夜寒かな」が選ばれた(恵美子さんと京さんが天、蚕豆さんが地)。野良猫のなつが私が深夜にコンビニに行くときなどに足元にじゃれつく様子を詠んだものである。もともと野良猫にしては人懐っこいところのある猫なのだが、朝晩の冷え込みがだんだんきつくなってきているのだろう。最初、「いつになく猫がじゃれつく夜寒かな」で投句し、翌日、「猫」を「野良」に修正させてもらった。「猫」では室内の飼い猫のように読めてしまって、「夜寒」の厳しさが出ない。最初から「野良」にしなかったのは、「野良」という言葉それ自体には猫の意味が含まれていないからだが(「犬」の場合もありえる)。しかし、内田百の随筆「ノラや」は愛猫のことを書いたものであるし、都会で野良犬を見なくなって久しいから、「野良」だけで野良猫と了解してもらえるだろうと思い直した。選評で面白かったのは、京さんと蚕豆さんがこの句に「暖かさ」「優しさ」を感じ、恵美子さんが「冷たさ」「厳しさ」を感じたことである。

「月が煙草百本吹かせば夜の雨」は恵美子さんの句。得点は特選の句と1点差であるが、作者以外の4人全員が選んだ(紀本さんが天、京さんと私が地、蚕豆さんが人)。月が煙草を吹かせている図というのがファンタジックである。私の感覚ではこの句は満月ではなく三日月である(したがって横顔である)。煙草が一本ではなく百本というところがコミカルである。モクモクと煙のような雲が湧いてい来る様子がわかる。ただし、「夜の雨」の「夜」は余計だろう。「月」が出ているのだから「夜」は言わずもがなである。ちなみに彼女は煙草を吸わないが、最近、いたずらでちょっと吸ってみましたとのこと。

「笑茸ふとしたときに落ちる水」と「気味悪いかぼちゃと渋谷公会堂」の作者は紀本さんで、どちらもシュールな句である。前者からは「笑い声」と「水滴がポタリと落ちる音」が聞こえてくる。林の中の喧騒と静寂のイメージ。蚕豆さんが天、私が人を付けた。後者はハロウィンのかぼちゃと渋谷公会堂の取り合わせに意表を突かれて、私が天を付けた。えっ?私だけ、と思った。「渋谷公会堂」の「会」が兼題になっているわけだが、「日比谷公会堂」でもよかったかもしれない。「日比谷」の「ヒビ」がかぼちゃに入ったヒビを連想させるからだ。でも、「渋谷公会堂」もかぼちゃの甘さとのコントラストが生じて渋い。紀本さん自身の解説では(紀本さんは自作解説は野暮だからと普段はなさらないのだが、みんなのためにあえてお願いしたのである)、「気味悪いかぼちゃ」というのは「不細工な彼氏」の比喩で、一緒に渋谷公会堂にコンサートを聴きに行くということらしい。

「鏡割り私立探偵は失業中」と「神無月会わずに帰る獣道」の作者は蚕豆さん。前者は紀本さんが、後者は恵美子さんが地を付けた。紀本さんの句とは別の意味でシュールである。「鏡割り」と「私立探偵」、「神無月」と「獣道」、すでに一語で強い物語性をもつ単語を組み合わせてさらに火花を生じさせようとするのが蚕豆さんの作風である。化学の実験のような印象を受ける。その手際が鮮やかだと感じることもあり、ときに情緒に欠けると感じることもある。

「冬近し会いたき人の二三人」は私の句。恵美子さんと紀本さんが人を付けてくださった。兼題「会」を詠みこんだ挨拶句であり、4月の句会で投句した「春服や会いたき人に会いに行く」の姉妹編でもある。「冬近し」は「冬」という語が入っているが秋の季語。一句の中で秋と冬を連結させる働きがあり、使ってみたかった。「二三人」は普通の文章中であれば、「二、三人」と表記するところだが、俳句なので読点は省いた。まさか「にじゅうさんにん」とは読まれまい。討ち入りの日が迫っているのにまだ人が集まらないで困っている大石内蔵助みたいになってしまう。年を越す前に会っておきたい人が数人いるのである。

「あなたから名字で呼ばれたら葡萄」は紀本さんの句。京さんが人を付けた。それまで下の名前で呼ばれていたのが上の名前(名字)で呼ばれるようになるというのは離婚後ということらしい(紀本さんの解説)。そうか、なるほどね。でも、なんで葡萄なんだろう?三音であれば、林檎でも、レモンでも、バナナでもいいわけだが、このあたりは理屈ではなく、言葉の感性ということなのだろう。

句会が終わって、食事会に移るところで、マンションの理事会があるという京さんが先に帰った。

紀本さんがチキンカレー、他の3人は定食(鶏肉団子のカレースープ煮が主菜)。

食後のお茶は全員がホットチャイ。

食事会も終え、3時頃、外に出ると、表通りがなにやらにぎやかである。

猫の仮装をして歩いている人が目立つ。「化け猫パレート」というイベントらしい。地元生まれの作家、夏目漱石にちなんでいるのだろう。してみると私の「野良」の句が特選になったのもイベントの一環であったのかもしれない。

招き猫のマネをする恵美子さん(猫パンチを喰らわそうとしているようにも見える)。

紀本さんと蚕豆さんは出版の打ち合わせでどちらかへ。

恵美子さんと私はおしゃべりの続きをしながら坂道を下って「紀の善」に行ったが、混んでいたので、「コージーコーナー」(飯田橋ラムラ店)へ。

私はスイーツではなくサンドウィッチ。

恵美子さんはかぼちゃのモンブラン。

今日、入選した2句、「いつになく野良がじゃれつく夜寒かな」と「冬近し会いたき人の二三人」を書にしてくれうようお願いした。いま、研究室には6月の句会のときの「カキ氷女は赤き舌を出す」の句が飾ってある。さすがに季節外れである。雪女のイメージで読めなくはないけれども。

4時頃までおしゃべり。自転車に乗って帰る恵美子さんとは飯田橋の駅前で別れる。

丸の内の「丸善」で買い物をしていたらすっかり日が暮れた。これでもまだ6時。冬至まではまだ2か月ある。これからどんどん、日の暮れるのが早くなり、そして寒くなっていくのだ。風邪を引かないように気を付けよう。

6時半、帰宅。

夕食は肉野菜のうま煮と焼き茄子。

『さよなら青春』(第二話)と『昨夜のカレー、昨日のパン』(第三話)を観た後、その流れでNHKBSプレミアムでやっていた小椋佳のコンサート(今週と来週の2回に分けて)を聴く。満70歳になった彼が、今回、「生前葬」と銘打って行った4日連続のコンサートである。ラストコンサートのつもりなのだろうか。