8時半、起床。朝食はとらず、身支度を整えて、9時に家を出る。今日は10時から会議がある。おそらく長い会議になるだろう。
電車の中では冲方丁(うぶかた・とう)『天地明察』を読む。2010年本屋大賞第1位だけのことはあり、面白い。キャラクター設定が上手い。主人公の春海は碁打ち衆として登城を許されている四家のうちの1つ安井家(他に本因坊家、林家、井上家)の長男である。江戸の武士社会の中にありながら、碁打ちという専門職集団のメンバーであるという点で、世間から一歩離れた場所にいるわけだが、さらに長子でありながら晩年の子であるがゆえに彼が生まれる前に父親は他に養子をもらっていた。義兄は春海よりも20歳ほど年長で、人格技量ともに優れた人物である。つまり春海は長子=二代目でありながら立場としては次男というあいまいな場所にいる。さらに彼は数学(算術)を唯一の趣味としている。いよいよもって浮世離れしたキャラクターである。現代人が時代小説を読むことの効用の1つが、いま自分が生きている日常からの離脱にあるとすれば、春海は二重三重の意味で離脱している人物である。私の中での春海のイメージは中村梅雀である。
10時から始まった会議は、2時間が経過した頃、昼食休憩となる。長丁場の会議に備えて、腹持ちのよいものを食べようと、久しぶりで「すず金」へ出かけた。鰻重と肝吸いを注文。残念ながら肝焼きは私の直前で売り切れていた。鰻重が運ばれてくるまでの間(20分ほど)、お茶と漬物を口に運びながら、『天地明察』の続きを読む。食事を終えて、会議が再開するまで20分ほどの時間があったので、研究室でフィールドノートの更新をする。
会議は5時過ぎまでかかった。大きな山は越え、続きは1週間後ということになった。研究室に戻り、助手のS君、O君、学生のNさんたちと、7月29日(木)の6・7限に予定しているゼミ・卒研説明会&懇親会の打ち合わせ。現代人間論系の2年生を対象としたイベントだが、論系進級を考えている1年生の来場も歓迎である。軽食と飲み物を用意しており、参加費は無料だから、どうぞ36号館382教室に来てください。
6時半に大学を出る。帰りの地下鉄やJRの中でも『天地明察』の続きを読む。電車に乗るのが楽しみだ。蒲田に着いて、今日で切れる定期券を継続購入するとき、今日が七夕であることに思い至る。最後に短冊に願い事を書いたのはいつのことだろうか。まったく思い出せない。