花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「檜垣、網代文様」について

2013-03-19 | 文様について

presented by hanamura ginza


まもなく春分ですね。
嵐が通り過ぎるたびに、気温が上がり、
木蓮が花開き、風に吹かれて散ったかと思うと、
衣替えをする間もなく、
もう桜が咲きはじめています。

その桜も今週には満開となるところが多く、
各地にある桜の名所には、
今年の桜を眺めようと連日多くの人々が訪れているようです。

さて、桜の名所といえば、
2004 年に世界遺産にも登録された
奈良県の吉野山が有名ですね。

熊野三山へ向う道筋でもある吉野山は、
昔から霊山としても崇められ、
そこには多くの寺院が建てられています。

桜の木は、その寺院の総本山とされる
金峰山寺(きんぷせんじ)に祀られた蔵王権現(ざおうごんげん)の神木とされ、
平安時代のころより人の手で植えられてきました。

その吉野山は桜以外にも、上質な檜や杉の産地としても有名です。
春になると、檜と杉の深い緑色を背景にした、
満開の桜が幽玄な世界をつくりだします。

金峯山寺をはじめ、吉野山に建てられた寺院の建築には、
吉野山で採られた檜が使用されています。

檜は、日本と台湾にしか生えていない樹木ですが、
古来より建築物に欠かせない上質な材木として、知られています。
緻密で狂いが生じにくく、丈夫で長持ちとされていて、
世界最古の木造建築物である法隆寺も、この檜でつくられています。
また、檜特有の爽やかな香りには、
ストレスや疲労を解消する成分が含まれているようで、
檜でつくられたお風呂は、現代でも人気がありますね。

また、建築物全体に檜が用いられていなくても、
天井には檜を素材とした檜垣(ひがき)が用いられていることがあります。

檜垣とは、檜の樹皮を細く削って、
漁具で用いる網代(あじろ)のように
編みこんだものです。

この檜垣は、古来より文様化され、
着物や調度品などの意匠に用いられてきました。
桧垣文様は、網代文様や三崩し文様とも呼ばれ、
すでに平安時代の装束にもみることができます。

また、江戸時代に上演された能の装束には、
この檜垣の文様があらわされています。

檜は、昔から高価なものとしても知られていて、
檜の板を張った舞台は檜舞台といわれています。
この檜舞台を使用できたのは、
能楽や歌舞伎など、幕府公認の劇場だけだったようで、
その舞台に立つことは、俳優たちにとって一流として認められたということを
意味していました。
そこから、「檜舞台に立つ」という言葉がつくられたそうです。



上の写真は昭和初期ごろにつくられた絹縮緬から
お仕立て替えした名古屋帯です。
幾何学的な檜垣の文様と、
有機的な草花文様との調和のとれた組み合わせが面白く、
洒落た雰囲気が感じられます。
編みこまれた檜垣の立体感もあり、
平面でありながら、意匠に奥行きが感じられますね。

上の写真の「網代に草花文様 型染め 名古屋帯 」は花邑 銀座店でご紹介している商品です。

●花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 3 月 26 日(火)予定です。
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