花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「霰文様」について

2013-01-31 | 文様について

presented by hanamura ginza


まもなく立春ですね。
梅のつぼみも少しずつ大きくなり、
気がつくと、日が暮れるのも遅くなりました。

それでも、氷のように冷たい北風に身を縮めることも多く、
天気予報では雪マークが付いている地域もあり、
冬将軍はまだまだ健在のご様子です。

1 月に入ってからは、東京でも雪が積もる日がありました。
そういったときには、
慣れない雪の道を滑って転ばないように
気をつけて歩かなくてはいかないのですが、
普段は見慣れない雪景色をみると、
なぜかすこし楽しい気持ちになり、
「雪やこんこ、霰やこんこ」と思わず口ずさんでしまいそうになります。

この童謡「雪」の歌詞にある「こんこ」を「こんこん」と読み、
雪が降る音として解釈したものもあるようですが、
本来は「来む(降れ)」という意味合いをもつ
「こんこ」が正解のようです。

実際に、仕事などで出かけなくてはならない時には、
雪を眺めて「こんこ」という気持ちにはなかなかなれないものですが、
リズム感の良さと、楽しい歌詞の中にも雪の情緒が感じられ、
ついつい歌いたくなってしまうようです。

歌詞では、タイトルの「雪」だけではなく、
「霰(あられ)」も「こんこ」と歌われていますが、
空から舞い落ち、音をたてて地面の上ではじける霰は、
この歌のもつリズムとも、よく合っているように思えます。

霰はこの歌だけではなく、
さまざまなものの名前にも用いられていて、
日本の伝統文様にも「霰(あられ」と名づけられた文様があります。

現代では市松文様として知られる格子柄は、
もともと「霰(あられ)文様」とよばれていました。
また、現代では「水玉文様」ともよばれることがある
細かな丸の玉が散らされた文様も、
古来より「霰(あられ)文様」とよばれています。

その中でも、大小の丸い玉を散らした「大小あられ文」は、
江戸時代に薩摩の島津藩が定め紋としました。
そのため、現代では江戸小紋の中で「鮫(さめ)文」と「行儀(ぎょうぎ)文」と
「通し(とおし)文」といった江戸小紋三役の次に格のあるものとされ、
「万筋(まんすじ)文」と「大小あられ文」を加えたものを江戸小紋五役と呼びます。



上の写真は
昭和初期につくられた絹布からお仕立て替えした名古屋帯です。
小さな捻じ梅の文様と茶道具にくわえ、霰文様が全体に散らされています。
和の情緒のなかにもかわいらしさが感じられる意匠は、
とても魅力的な雰囲気です。

さて、霰はお菓子の名称にも用いられていますね。
お餅をくだいたものを炒ってつくられたお菓子も霰とよばれ、
平安時代には「あられ餅」「玉あられ」という
名前が付けられました。

ひなまつりで食される「ひなあられ」も、
このあられ餅に由来しています。

ひなまつりで飾られる雛人形は、
平安時代におこなわれていた
「ひな遊び」とよばれるお人形遊びがその由来とされています。
このお人形は、持ち運びができるもので、
春になると、お人形に野山を見せてあげようと、
お人形を外に連れ出す風習がありました。
この風習は「雛の国見せ」とよばれ、
その際にご馳走とともに持っていったあられ菓子が
のちにひなあられとよばれるようになったようです。

このあられ菓子は、菱餅を携帯用に砕いて炒ったもので、
雪の大地をあらわす白、
木々の芽吹きや若葉をあらわす緑、
桃の花をあらわした桃色という 3 色に色づけされていて、
自然の力を授かり、女の子が健やかに育つようにとの
願いが込められています。

上の写真の帯は抹茶色の地に、桃色、白色で色付けがされていて、
このひなまつりの色合いが用いられています。

ちなみに、関東のひなあられと、関西のひなあられは違ったもののようです。
ひなあられが大量につくられるようになったのは、
江戸時代のころですが、
当時の江戸では、乾燥したお米から作られた「爆米(はぜ)」というお菓子が人気となり、
この爆米を砂糖で味付けをしたものがひなあられとして食されました。

一方、関西では平安時代から食されてきた
餅を砕いて炒ったあられがひなあられとして定着し、
また味も醤油味や塩味などさまざまのものがあるようです。

こういったところにも、
文化の違いが垣間見えておもしろいものですね。
現代では、東京でも関西風のひなあられが販売されているので、
今年はぜひ食してみたいところです。

上の写真の「梅に茶道具文様 型染め 名古屋帯」は花邑 銀座店でご紹介している商品です。

●花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 2 月 12 日(火)予定です。

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