花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「ランプ」の文様について

2013-01-22 | 文様について

presented by hanamura ginza


大寒を迎え、東京でも暦どおりの寒い日がつづいています。
先週降り積もった雪も、日陰では溶けずに残っているところもあり、
吹く風も凍てつくような冷たさとなっています。

それでも、大寒を過ぎれば立春ということで、
春を先取りしようとばかりに、
各地では、ひな人形の展示イベントが催されています。

そういったイベントでは、
新しくつくられた現代的なひな人形だけではなく、
名家に伝わる由緒あるひな人形や、
その地方ならではのめずらしいひな人形も展示されています。

ひな飾りは、お雛さまやお内裏さまなどのお顔はもちろん、
雅な衣装や繊細につくられた小道具の数々にも
作り手のこだわりが感じられ、見ごたえがあるものです。

その小道具のなかで、忘れてはならないもののひとつに
「雪洞(ぼんぼり)」があります。
童謡のひなまつりにも「あかりをつけましょ。ぼんぼりに。。」という
フレーズがでてきますね。
「雪洞」とは、雪かまくらの中から見えるような、
ほのかな灯りのことを呼ぶそうで、
ひな飾りの際には、両脇に行灯や手燭を置きます。

この「雪洞」の由来は、江戸時代の結婚式にあります。
もともと、ひな人形は結婚式の様子を模したものとされていますが、
ひな人形が広まった江戸時代の結婚式は、
夜 9 時から 11 時の間におこなわれていたため、
実際にも「雪洞」のような灯りが用いられていたのです。

結婚式が夜遅くに行われていた理由には、
陰陽道との関係性があるようですが、
暗いなかでほのかな灯りに照らされたお嫁さんは、
神秘的で美しかったことでしょう。

この雪洞のように、江戸時代の照明といえば
ほかにも行灯や蝋燭、提灯が思い浮かびます。
現代のように外灯がなかった当時、
江戸では、日が暮れたら提灯をもって外出することが義務付けられていて、
提灯を持たずに歩くと怪しい者とされ、「御用」となりました。
時代劇などでは、こういった照明が、
その時代を反映する小道具としても効果的に使われていますね。

行灯や提灯は、江戸時代に広く普及したとされています。
それまでは、蝋燭を灯台に立てて、灯りをつけるというものでした。
それでも、蝋燭の原料である油はとても高価なもので、
贅沢に蝋燭を使用することは、
結婚式などの特別な行事以外にはなかったようです。

江戸時代になり、旅行がブームになると、
持ち運びに便利な提灯が、人気を博すようになり、
「提灯おばけ」のような怪談でも提灯がモチーフとなりました。

明治時代になり、
西洋からガス灯やランプなどの技術がもたらされると、
そういった提灯や行灯は姿を消していきました。



上の写真は
、大正から昭和初期につくられた絹布からお仕立て替えした名古屋帯です。
銀糸で織りだされたランプの文様は、光の加減で鈍く光り輝き、
ランプの灯りの輝きをあらわしているかのようです。

行灯や提灯などのほのかな灯りとは異なり、
煌々とした明かりは、文明開化を象徴する灯火として、
好意的に受けいられていったようです。

やがて、昭和初期には白熱灯が普及し、
ランプやガス灯も少なくなっていきました。
そのため、この布がつくられた昭和初期頃には、
すでにランプは懐かしいものだったのかもしれません。
そのためか、このランプの文様には、
どことなくノスタルジックな雰囲気があり、
古き時代を懐かしむような作り手のぬくもりが感じられます。

上の写真の「ランプ文様 縫取り縮緬 名古屋帯 」は花邑 銀座店でご紹介している商品です。

●花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 2 月 5 日(火)予定です。

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