花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「枇杷(びわ)文様について」

2012-08-23 | 文様について

presented by hanamura ginza


8 月も残すところわずかになりました。
残暑が続いていますが、
お盆を過ぎてからは朝晩がいくぶん涼やかに感じられます。

蝉もこれをを最後とばかりに、
早朝から大合唱をしていて、
いたるところで蝉しぐれが響いています。

この時期には、秋の気配が少しずつ感じられ、
厳しい暑さを超えたことにほっとする一方で、
季節の変わり目のせいか、
夏の疲れも出やすいですね。

土用の丑の日に鰻を食することにはじまり、
古来から夏バテ防止のためにさまざまな予防がされてきましたが、
昨今では、健康志向の流行で、
疲れなどを緩和するための健康茶が多く販売されているので、
そのようなお茶を飲んで夏バテ防止をされている方も多いようです。

健康茶のなかでも、
枇杷の葉からつくられた「枇杷(びわ)茶」は、
夏バテや夏の疲れ、あせもにも効果があるとされています。

淡い橙色をした卵形のかわいらしい枇杷の実は、
夏を代表する果物のひとつとして、
スイカやメロンなどと並んでいる姿を
果物屋さんで目にする機会も多いことでしょう。

その枇杷は、葉や茎、種などのすべてが薬用にできるということで、
古来より重宝されてきた果物でもあります。

今日は、その枇杷文様についてお話しましょう。

枇杷は古来より日本の南方に自生していた樹木で、
その原産地は中国の南西部とされています。

常緑樹で、1年中生き生きとした緑の葉を茂らせ、
11月ぐらいから2月まで、3か月もの間ずっと小さな白い花を付け、
その実は初夏から夏にかけて収穫されます。

枇杷の実には、皮膚を健康に保ったり、
咳を鎮める効果のあるベーターカロチンが多く含まれ、
葉には、腰痛やリウマチ、腹痛、気管支炎に効果がある
アミグダリンが含まれています。
このアミグダリンは種にも含まれていて、
焼酎などにつけると、その成分を抽出することができます。

こうした薬用効果は古来より知られていて、
日本同様に中国から枇杷が伝えられたインドでも、
枇杷を用いたさまざまな療法が試みられてきたようです。

インドでは、枇杷の木を大薬王樹(だいやくおうじゅ)と呼び、
古い経典にもその名前が記されています。

日本でも奈良時代には、
光明皇后がつくった「施薬院」という医療施設にて、
枇杷の葉療法がおこなわれていたようです。
また、江戸時代には薬屋が枇杷の葉でつくった枇杷茶を
街頭で売り歩いていたようで、
その光景は夏の風物詩ともされていました。

万病を治すともいわれ、重宝されてきた枇杷ですが、
昔は寺の僧侶が病人を治すために、
枇杷を境内に植えて病人を治したことから、
枇杷の木があるところには病人が絶えない
という迷信まで生まれました。

ちなみに、古典楽器の琵琶の名前は、
枇杷にかたちが似ていることから付けられたようです。

このように、古来から生活に根付いてきた枇杷ですが、
意外なことに、その枇杷を意匠のモチーフにしたものは、
梅や桜などと比べ、その数は多くありません。

また、その文様の多くは、
一枝に多くの実をつけた姿であらわされます。



上の写真は、大正~昭和初期につくられた絹布からお仕立て替えした名古屋帯です。
枝のついた枇杷の様子が文様化されて織りあらわされています。
季節を問わず着用できるように、
枇杷の実が赤い色で抽象的にあらわされています。

残暑がきびしくなるともいわれていますが、
秋はもうすぐそこまで来ています。
枇杷の葉などの力を借りて、
いまのうちに夏の疲れをとって、
実りの秋にそなえましょう。

※上の写真の「枝付き枇杷(びわ)文様 絣織り 名古屋帯」は、花邑銀座店でご紹介している商品です。

花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 8 月 30 日(木)予定です。

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