花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「桜文様」について

2011-03-30 | 文様について

presented by hanamura


まもなく4月。
ここ東京では先日、
桜の開花宣言が発表されました。

今年の冬は、長く厳しい寒さが続いたこともあり、
桜の開花宣言を聞いて
うれしく感じた方も多いのではないでしょうか。

今日は、その桜の文様について
お話しましょう。



桜は、日本の各地で古来より人々に愛され、
親しまれてきた花です。
また、数多くの品種があり
その種類は600種もあるといわれています。
世界各地で見られる桜は、ほとんど日本原産のもののようで、
桜はまさに名実ともに日本を代表する花だといえるでしょう。

桜の品種と同じように、
桜の文様も数多くのものがつくられています。
桜の花を散らした「桜散らし」、
桜をのせた筏(いかだ)が流れる様をあらわした「花筏」、
流水に桜が流れる様をあらわした「桜川」、
山に咲く満開の桜の花をあらわした「山桜」、
秋の楓とあわせた「桜楓(おうふう)」
など、文様の名前を聞くだけでも、
美しい光景が目に浮かび、
風流な趣きが感じられます。



その種類の多さは、桜の品種と同様に、
日本人が桜を愛してきた証しでもあるようです。

飛鳥時代後期に編纂された「古事記」には
「木花咲耶姫(コノハナノサクヤヒメ)」という美しい姫が登場しますが、
この名前の「木花」は桜をあらわしたものといわれています。

奈良時代につくられた「万葉集」には、
桜を題材にした歌が多く残されています。

平安時代には、「花」といえば「桜」のことを指すようになりました。
そして、貴族たちの間では
桜を愛でる行事や宴が頻繁におこなわれました。

一方で、農民たちにとって桜は、
田植えをはじめる時期を知らせてくれるもので、
桜には穀物の神様が宿ると考えられていました。

やがて、武士の時代になると、
桜の散り際の美しさを称え、
精神的な象徴ともなりました。
また武士たちの間でも、
桜を愛でる花見は盛んに行われたようです。

それまで支配階級でしかおこなわれなかった花見でしたが
江戸時代になると庶民にも広まり、
桜の開花時期になると、各地の桜の名所には、
多くの人々が集うようになりました。

古来より桜は、
着物や帯などの意匠のモチーフとしても、
人気が高いものでしたが、
庶民の間で桜文様が広まったのは、
この時代になってからのようです。



現代の日本において、
桜が咲く4月は、学校の卒業入学の時期に重なるため、
桜は出会いや別れを象徴する花として、
歌の歌詞や物語にも多く登場します。

桜は日本人にとって、
四季の移ろいや儚(はかな)さを感じさせるものであると同時に、
寒い冬を乗り越えた生命の力強さや美しさを
象徴するものでもあるようです。

ちなみに、厳しい寒さの冬を乗り越えた桜は蕾がしっかりとして、
たいへん美しい花を咲かせるようです。
まもなく、その桜の花をいたるところで
眺めることができることでしょう。
私も心待ちにしています。

※写真は花邑 銀座店にてご紹介している桜文様の帯の意匠です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は4月6日(水)予定です。


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