presented by hanamura
「花邑日記」
新年おめでとうございます。
花邑 銀座店では、今年の干支である「丑」にちなんだ、
「牛」のお人形を飾って、新年のお客さまをお迎えしています。
この「牛」のお人形は、花邑代表 すぎえすみえの母、
同じく帯仕立て職人であった、杉江いつえがつくったものです。
材料には、着物の素材として使われていた縮緬(ちりめん)と、
帯の素材が使われています。
牛には角やふさふさの尾がつけられ、
金の鞍(くら)まで施されています。
可愛くて、とても丁寧につくられているので、
この干支のお人形は、身内でも大好評です。
縫い物がとても好きで得意ないつえは、
昭和元年生まれで、今年で84歳になる帯仕立て職人の大先輩です。
いつえが夫とともに、
東京・日本橋の杉江ぎんが開業した「杉本屋」にて、
帯の仕立てを習得したのは、戦後まもない頃のようです。
当時は日常的に着物を着る人が多く、
「帯仕立てを身につけると、家を一軒建てられる。」
と言われたほど、呉服に関係した仕事はとても需要があったようです。
そのため、帯職人として独立してからは、
帯仕立ての見習いとして、
数人を住み込みで雇ってもいたようです。
いつえは夫とともに帯の仕立て仕事に追われ、
休みもなく、朝の6時過ぎに起きると夜中の2時頃まで
1日中「仕立て部屋」にこもって、黙々と帯を仕立てていました。
その後、若くして夫を亡くしてからも、
帯の仕立てを続けましたが、
時代とともに仕事は徐々に減っていきました。
帯の仕立てとともに人生を歩んできたいつえですが、
年齢もあり、10年ほど前に帯仕立てからは引退しました。
もちろん、現在でも帯仕立ての技はしっかりと覚えていて、
たずねれば細かく指導してくれます。
現在では、お友達や子ども、孫へプレゼントするための
人形やバックをつくったりしています。
ちなみに、花邑の1周年記念でお客さまにプレゼントした香袋も
いつえの手によるものです。
近年の年末では、今回の牛のお人形のように、
翌年の干支の人形をつくって、
お正月に周囲へ配ることが
いつえの恒例行事になっています。
仕事から離れてだいぶ経った現在でも、
いつえの中ではつくり手としての気持ちが
まだまだ衰えていないようです。
杉江いつえから学んだ技と心を大切にしながら、
花邑は本年も帯仕立てに励みます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は1月20日(火)予定です。
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