花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

帯の種類-綴れ帯-

2008-05-20 | 帯の種類

presented by hanamura


「綴れ帯について」

みなさんお馴染みの「名古屋帯」の織りの種類に
「綴れ帯(つづれおび)」と呼ばれるものがあるのをご存知ですか?
知っている人はよく知っている帯ですが、
独特な技法でつくられる結構高価なものなので、
なかなか目にする機会も少ないのではないでしょうか。

今回は、その変わった技法でつくられる
「綴れ帯(つづれおび)」についてお話ししましょう。

「綴れ帯(つづれおび)」は、
ふだん用にも礼装用にも用いることができる帯です。
「綴れ(つづれ)帯」の「綴れ」とは、「綴れ織り」のことを指します。
「綴れ織り」の布は、エジプト、中国、フランスなど、
世界各地の国々で古くからつくられてきました。
「綴れ織り」の布が日本に伝えられた時期は6世紀頃といわれ、
正倉院や法隆寺には、この時代につくられた「綴れ織り」の布が
いくつか残されています。

「綴れ織り」の作業では、はじめに枠、または機(はた)に
必要な長さの経糸(たていと)を張ります。
そして、経糸に緯糸(よこいと)を通して組み込みます。
この経糸に緯糸を組み込むときに、
筬(おさ)で打ち込むのが一般的には多いのですが、
「綴れ織り」では、爪で緯糸をかき寄せて組み込みます。



そのため、「綴れ織り」を行う職人の爪は、
のこぎりの刃のようにギザギザになっています。
「綴れ織り」は、職人の爪そのものを道具として用いて
つくられているのです。
このことから「綴れ織り」は「爪掻つづれ」とも呼ばれます。

爪でかき寄せられ、緯糸だけで表現される「綴れ織り」の文様は
たいへん緻密なものです。
また、他の織物の2倍以上の緯糸を用いるので、
その生地は張りが強く、とても丈夫なものになります。
そのため、仕立てのときには「八寸名古屋帯」のように、
帯芯を入れずに両端をかがり縫いします。

杉江ぎん(※1)が開業した杉本屋独自のかがり方に、
「本かがり」と呼ばれるものがあります。

「八寸名古屋帯」では、かがるための糸に
手縫い用の絹糸を用いますが、
「本かがり」では縫い合わせる糸に
織られた生地(帯反)から抜いた絹糸を用います。
手縫い用の絹糸では弱く、ほどけやすいからです。
「綴れ織り」の布から直接抜いた糸は、太くて丈夫なのです。

「本かがり」では、
かがり縫いする前に生地(反物)の下端から必要な量の緯糸を抜きとっておき、
それを用います。
「綴れ帯」の反物は仕立て上がりより長くつくられているため、
かがり縫いに必要な分の糸をとっても
仕立て上がりが短くなることはないのです。



まず、反物から抜きとった糸は3つに分けておきます。
そして1つめはかがりに必要な長さを紙などに巻きつけます。
あとの2つは鉛のついた小片に巻きつけます。

この小片に巻いた2つは、かがり縫いをする部分の両端につけます。
そして、両端を合わせて1つめの糸をかがっていきます。
このとき、糸を通すごとに小片に巻いた糸を絡ませます。
仕立てというより、糸を絡めながら織っていくような作業です。
糸を3つに分けて使うため、「本かがり」は
「三つかがり」と呼ばれることもあります。

「綴れ帯」を「本かがり」すると、
生地から直接抜いた糸を使うために
色に差がなく、ほどけにくい縫い目の
きれいな帯に仕立てあげることができます。

しかし「本かがり」はたいへんな手間がかかるため
その注文を受けることはほとんどなくなってしまいました。
また、「綴れ織り」自体も
そのつくり手の数は少なくなってきています。

「綴れ帯」は手間をかけることによって
より芸術性のある、格調の高い帯になります。
いつまでも「憧れの帯」として、
なくなることがないようにと祈るばかりです。

(※1)2007年12月14日更新のブログ「名古屋帯の創案者、杉江ぎんについて」を参照してください。

帯のアトリエ「花邑hanamura」ホームページへ