日本海軍(海上自衛隊ともいう)が保有する潜水艦は、通常型、つまり原子力艦以外では世界一の性能を誇るとされている。
そのなかでも、非大気依存型のスターリングエンジンで海中を航行できるそうりゅう型は、その静粛性と相まって世界でも注目の的であった。
その、そうりゅう型の第11番艦として「おうりゅう」が完成した。驚いたことに、従来のスターリングエンジンは止めて、替わりにリチウム電池で海中航行をするようだ。
つまり従来のスターリングエンジンと鉛蓄電池ではなく、通常のディーゼルエンジンとリチウム蓄電池でこれまで以上の航行速度を実現したらしい。ただし、潜水艦の情報は、軍事情報のなかでも機密性は非常に高いが故に、正確な数値などは不明である。
この報道自体には、特段問題がある訳でもない。そうりゅう型潜水艦は、ロシアやシナにとって探知不能な厄介な存在であり、日本及びアメリカの軍事力増強に大きく貢献すると思われる。
ただねぇ・・・相変わらずというか、日本の潜水艦が抱える大問題がスルーされている。
通常型潜水艦の東の横綱が日本ならば、西の横綱はドイツである。ドイツの潜水艦は多くの国に輸出されており、その性能の高さには評判がある。おそらく静粛性では、若干日本のほうが上だと思われる。
しかし、実際の運用では、ドイツ製の潜水艦のほうが勝手が良い。やはりUボート以来の伝統国だけに、設計思想が優れている。ドイツ製潜水艦で、現在輸出されているのは、ラーダ級である。
実力的には、日本のそうりゅう型と遜色ない性能である。だが、大きな違いがある。そうりゅう型の潜水艦は乗員65名であるのに対し、ラーダ級は乗員27名で動かすことが出来る。
この違いは大きい。潜水艦の弱点は補給である。ほぼ同じ大きさなのに、ラーダ級は30人未満の物資、兵員スペースで足りるのに対して、そうりゅう級は60人以上の物資、兵員スペースを必要とする。
明らかに艦を運用する効率が違うのである。これは、根本的には設計思想以上に、潜水艦を運用する発想の違いでもある。どちらが、より優位なのかは明らかである。
そして、呆れたことに、この問題は半世紀近く放置されてきた。旧・防衛庁時代からの課題であると同時に、根本的な問題解決を先送りしてきた結果でもある。
ただでさえ自衛隊は人員不足に悩んでいる。その上、今後は人口減少により、今まで以上に人員不足に悩むことは確定である。それなのに、問題解決以前の問題認識さえ、不十分なのが平和国家日本である。
新型バッテリー搭載の快挙を報じる前に、もっと考えるべきことがあることをマスコミはしっかりと認識して報ずるべきだと思います。もっとも、日本では大学の一般教程に軍事学が排除されているので、一流紙の記者と云えども軍事音痴。だから、この程度の記事しか書けないのでしょうね。