ヌマンタの書斎

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三月のライオン昭和異聞 灼熱の時代 西川秀明

2016-12-29 12:42:00 | 

一皮剥けたとしか言いようがない。

「職業・殺し屋」というかなりグロテスクな怪作でヒットを飛ばした西川秀明である。まさか現在大ヒットしている「三月のライオン」に登場する会長の若き日を描いた外伝(スピンアウトと称されてはいるが)を、あの西川が描くとは思わなかった。

白状すると、当初は人選ミスではないかと思っていた。なにせ「三月のライオン」は、あの蜂クロの羽海野チカである。彼女の絵柄と、西川の絵柄では画風が違い過ぎる。

しかしながら、週刊ヤング・アニマル誌の編集部の眼は確かであった。異常な殺人嗜好者ばかり描いていた西川が描き出す、将棋に憑かれた男たちと、その周囲に居る女性たちを、西川は優しく激しく描いてみせた。

敗戦の焦土から立ち上がりつつある日本を背景に、ただひたすらに、一途に将棋を指す男たちの熱い姿は雄々しく、そんな粗暴な男たちを優しく包み込む女性たちは逞しい。

なかでも敵役として登場する棋士たちの凄まじき執念は、優しい絵柄の羽海野よりも、下劣に激しい西川のほうが向いているとしか言いようがない。

もし「三月のライオン」が気に入っているのなら、是非とも読むべき作品だと思います。


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2 コメント

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Unknown (リンクス)
2017-01-05 18:07:14
明けましておめでとうございます。
今年もヌマンタさんの記事を楽しみにしております。

私はこの本編の方を愛読しているのですが、スピンオフに関しては違う作者ということでどうも触手が伸びませんでした。食わず嫌いですね。

しかしヌマンタさんがかように絶賛されるならばとAmazonでャ`っしました(笑) 届くのが楽しみです。

表紙を見て、くじらいいくこ氏かと思ったら、男性の作者なのですね。確かにこの破天荒な会長が主人公なら男性の漫画家が合うかもしれません。
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Unknown (ヌマンタ)
2017-01-06 11:20:51
リンクスさん、明けましておめでとうございます。この作品、私も当初は食わず嫌いしていました。羽海野チカの世界観とは、あまりにかけ離れていると思ったからです。ただ、若き日の会長を屈辱のどん底に突き落とした怪物の登場の描写があまりに凄まじく、西川版を認めざるを得なくなったのです。好き嫌いのかなり出る絵柄だとは思いますが、一度お試しください。
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