ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

仮病

2019-06-11 11:58:00 | 日記

犬だって嘘をつく。

公団のような集合住宅では、犬を飼うことは出来ない。犬好きの私としては、仕方ないと思いつつも、傍らにワンコが居ない生活に不満を抱いていた。でも飼えないことには納得していた。

それでも、気が付くと犬を飼っているクラスメイトと仲良くなることが多かった。それほど人間関係に積極的ではない私であったが、ワンコは別腹である。

人に飼われているワンコならば、大概仲良くなれる自信はあった。小学校のクラスメイトのK君の家には、茶色の柴犬が居て、私はしばしばこの柴犬目当てでK君のところへ遊びに行っていた。

ある日のことだが、遊びにいくと柴犬が足を引き摺っていた。どうしたのかと尋ねると、散歩中に公園の崖からずり落ちて、それ以来足を引き摺るのだそうだ。心配なのか、いつもは家の奥に居て出てこないK君のおばあちゃんまで縁側に出てきて、骨付きの肉を与えたりしていて、ワンコはひどく嬉しそうであった。

その翌日であった。別口の用事があって私がK君の家の前を通りかかった時である。K君の家は庭が広く、垣根越しにワンコの姿が見えた。おや?なにやら土埃が立っているし、唸っている声がした。

覗いてみたら、骨を咥えた野良猫が、庭の木の枝に居て、その下でワンコが駆け回り、唸っていた。はァ~、骨を横取りされたんだなと気が付いた。そこで手伝ってやろうと庭に入り込み、木をゆすってあげた。

猫は驚いて、枝から飛び降りて逃げだしたが、その際に骨を落としていった。すかさずワンコは駆け寄って、骨を取り返した。尻尾をふりふり誇らしげである。おい、その功績は俺のおかげだろうと思いつつ、良く見るともう足を引き摺ってはいない。

もう、足は治ったのかと言ったら、急にワンコが俯いて、ちょっと上目づかいに私を見上げて、再び足を引き摺りだした。

ぷぅ~と私は噴出した。こいつ、演技してやがる。思うに公園の崖から落ちた当初は、本当に痛かったのだろう。でも、その後足を引き摺る姿に同情した家族から優しくされて、それに味を占めたのだと思う。

K君の家族は、その犬を可愛がってはいたが、どちらかといえば普段は放置気味。だからこそ、よそ者の私に懐いたのだと思う。でも、本当はK君たちに可愛がって欲しかったのだろう。

私は、仮病もほどほどにしておけよと声をかけて、その場を立ち去った。いつもなら道路の入り口まで付いてくるのだが、その日はばつが悪いのが、その場にうずくまっていたのが可笑しい。

あのばつの悪そうな表情は、今でも忘れがたく覚えています。犬って、けっこう表情豊かな生き物なんですよ。


コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 改めて北方領土に思うこと | トップ | 安倍政権の失態? »

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ビーグル)
2019-06-12 03:15:50
ヌマンタさん、こんにちは。

微笑ましいエピソードですね。また犬が飼いたいなー。

犬(か、他の動物)好きの人同士の人が仲良くなりやすいのってわかる気がします。立場とか肩書を超えて、犬好きとわかると、相手に親近感が湧いてくるから不思議です。価値観とか性格は人それぞれですが、根っこの部分でなにか共通している部分があるのかなと。わんこパワーはすごいです!
返信する
Unknown (ヌマンタ )
2019-06-12 13:41:22
ビーグルさん、こんにちは。ワンコが傍らに居る幸せは、今でも覚えています。でも飼うための覚悟も必要だとも認識しています。ワンコには土の庭が絶対必要だと思っているので、やはり犬は飼えないでしょうね。まァ、穏やかに引退することが出来たら、郊外に小さい一軒家を借りて、飼うことが出来たらなァと夢想しています。
返信する
Unknown (kinkacho)
2019-06-12 18:13:46
ヌマンタさん、こんにちは。
子供の頃、お隣の飼い犬と仲良しでした。よくおやつを分けていたのですが、ある日そのおやつごと手をかまれました。一瞬犬と目が合ったら、しまった!という顔をして恐る恐る口を引っ込めた一連の動作が忘れられません。本当に間違ってすみませんと
いう感じでした。
返信する
Unknown (ビーグル)
2019-06-13 04:33:24
郊外の一軒家で犬を飼! 楽しみですね! 今はそのために一生懸命働いてというところでしょうか?!

私もすぐに犬を飼うのは難しそうです。。最近、里親探しの活動をしているグループの犬のお散歩をするボランティアを始めました。ケージの外に出て嬉しそうな犬をみていると、こちらが和んで幸せな気持ちになりますよー。週末の楽しみの一つです。
返信する
Unknown (ヌマンタ )
2019-06-13 12:10:13
kinkachoさん、こんにちは。犬が本気で噛んだら、子供の手なんて簡単に引き裂きます。だから攻撃したのではなく、単にがっついていただけでしょうね。きっとそのワンコ、マズったと思っていたのでしょうね。
返信する
Unknown (ヌマンタ )
2019-06-13 12:11:21
ビーグルさん、犬は生き物ですから、飼うなら覚悟が必要ですよね。要は新しい家族なのですから。だからこそ、私は慎重になります。まァ、老後の夢ですね。
返信する

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事