間違えを認められない。
これが日露戦争以来、日本の行政府を蝕んできた病巣である。
これは日本に限らないが、政府とりわけ官庁が強いと、過ちを認めたがらない傾向がある。一つには、官僚の人事考課が減点主義であるため、なるべく仕事仲間が傷つかないように内々で処理したがるからだ。
日本において、この悪癖が慣行として根付いたのは日露戦争からだ。以前にもあったようだが、薩摩と長州、旧幕臣などの微妙な力関係が、内々の処理がしにくい状況を作っていたため、あまり露骨な失策隠しは出来なかった。
しかし、明治政府内部の力関係が安定してきたが故に、徐々に官僚の失策隠しが広まっていた。その決定打が日露戦争の勝利であった。細かい論評は避けるが、日露戦争は日本とロシア、双方が失策に失策を重ね、より失策が多かったロシアが敗戦を甘受した戦争である。
ちなみに失策を重ねたロシア軍官僚たちは、革命前夜の恐怖に怯えて敗戦の反省もろくにせずにモスクワに逃げ帰って赤色革命への対応に右往左往している。そしてロシアよりもほんの少しだけ失策が少なく、かつ幸運にも恵まれた日本軍は、失策の反省を勝ったのだからいいじゃないかと誤魔化した。
いや、誤魔化すどころではない。高級官僚の失策はなかったものとみなす一方、立案さえ国会を通過すれば、例え立案が失敗しても責任は問わず、高級官僚の責任は問わないことが慣例として定まってしまった。
これは、あまりに異常すぎてアメリカのGHQも気が付かなかった。アメリカの場合、大統領が替われば、支える高級官僚たちも同時に替わるため、失策を犯した官僚が罪を問われずに生き残るなんて想像も付かなかった。
この馬鹿げた慣習が今も生きて、日本の政治に悪影響を与えている一例が、今話題の熊本での「マイクを切った説明会」騒ぎである。環境大臣まで現地に赴いて謝罪を余儀なくされた醜態である。
これを岸田政権の失策だと報じるマスコミ様の見識の無さも腹立たしいが、この問題の根底にあるのは100年以上続く日本政府の異常で異質な隠蔽主義である。
有機水銀が原因で、環境を汚染し、汚染された魚介類を食べた人間にも多大な健康被害を及ぼしたのが水俣病である。今の学校でどのように教えているのかは知らないが、私が十代の頃からこの事件にひどさは知られていた。
当時の日本はたしかに経済成長を第一にしていた。環境汚染はもちろん、公害病もまだ世間的に周知されていなかったのは確かだ。でも、それを主導したのは、間違いなく日本の行政府だ。有機水銀という汚染物資を川に垂れ流した企業を守ることを優先した地元の役所。
有機水銀が病原だと知りつつ、それを隠蔽した保健所や病院。そして国民の健康よりも、国民の雇用先確保、税収確保を優先した中央官庁こそが、公害病が日本中に拡散し、かつ対応が遅れた元凶であった。
そしてこれらの明白な失策を問題視せずに放置した官庁の人事考課と、それを黙認した日本のマスコミ様も私からすれば、同じ穴の狢である。おそらくですが、今回の熊本の役人たちも内心では「なんで、こんな過去の問題で悩まされるのだ?」との被害者意識を持っていると思う。そして、それは正しい。なぜなら最初にしっかりと責任を取らなかった当時の日本政府が悪いのだから。
とはいえ、既に100年以上守られた異様な悪癖を是正するのは容易ではないことは、官庁にも政界にも無縁の私でも分かる。嫌な予測だが、おそらく日本人だけの問題であるうちは、決して改善されないと思います。多様な人種が日本に流入し、外国人が日本の統治機構に参入してからでないと、この問題は解決されないでしょう。
改めて書くまでもないとは思いますが、今盛んに批判している野党様では絶対無理です。彼らも過去の自らの失策を顧みることから逃げ回っていましたからね。
再エネ賦課金+太陽光発電や、移民に関すること、財政再建、増税など、なんでそっちに行くのかな案件が多すぎるのは、そんなもんなんですかね・・・
前途多難。