五月末にアメリカで一人の黒人が警察官に殺された。
これを契機に、黒人差別だと訴えるデモが全米各地で巻き起こり、デモは時として暴動に発展し、略奪や暴行まで横行する始末である。それに対してトランプ大統領は州軍を派遣し、一時は国防省に軍隊の派遣さえ検討させたという。
その結果、共和党内部からもトランプ大統領への批判が相次ぎ、直に控える大統領選挙での再選は危ういとの報道が出ている。
家に居る時、主にCNNとBBCの番組を視ることが多いが、新型コロナウィルスと並んで、この事件の報道が多かった。
私は人種差別は良くないと考えている。あの人を人と看ない冷酷な瞳を思い出すと、今でもゾッとする。
あれはヴェトナム戦争の最盛期、米軍基地のある立川の国際通り付近であった。私は小銭を握りしめて、お目当てのアイスクリームを買い食いして、その後アメリカ兵がウロウロしている裏通りで、友人数名とブラブラしていた時だ。
酔っぱらっていて酒臭い白人から「ゲラウェイ!」と叫ばれて逃げ出そうとしたとき、横からすっと伸びてきた足に引っかかって転ばされた。顔を挙げると、酷薄な顔つきの白人が、まるで虫けらでも見るかのような冷たい視線で私を見下ろしていた。
無言の圧力に気押されて、私が硬直していると、顔に唾を吐かれた。その瞬間の屈辱感は、幼い私にもこれが人種差別だと理解できた。私は近所の白人の子供たちとは大変に仲が悪く、遇えばいつも罵り合っていたが、これほどまでの屈辱感を味わった覚えはない。
だが、次の瞬間、大柄な別の白人の男性に救いだされた。その白人は如何にも気の毒だと言わんばかりの優しい眼差しで何かを喋っていた。よく聞き取れなかったが、その科白のなかに「Sorry」があったように感じ、え?あいつら謝れるのと訝ったほどだ。
こんな経験があるので、私は条件反射的に人種差別には否定的に為らざるを得ない。同時に、助け出された経験からして、人種差別を良くないことだと認識している白人がいることも知っている。だからだと思うが、割と冷静に人種差別をみれる。
取り調べもせずに、首を圧迫して黒人を死なせた白人警官の行為は、決して容認できるものではない。それでも、私は今回の事件にそこはかとない違和感を感じている。
なぜにあの白人警官は、あのような強引な拘束をしていたのか。妙に思い検索してみると、出るわ出るわ。大手のマスコミはまったく報じていないようだが、このジョージ・フロイド氏は前科6犯の犯罪歴があった。当然に5年ほどの収監歴もある。
CNNもCBSも、またBBCもそのようなことは報じていない。ラッパーでもある善良な市民が、黒人であるがために白人警官から殺されたかのような印象を受ける報道ばかりが目立つ。
ちなみに、その前科の内容だが、麻薬所持、女性宅への不法侵入と強盗、贋札、窃盗と善良な市民とは程遠い人物であったようだ。もっとも前科者だからといって、拘束中に死なせて良いとは思わない。
しかし、デモまでして庇うべき人物なのか、私は少々疑問である。犯罪者にも人権はあるとは思うが、麻薬で逮捕歴がある大男を強引に拘束しようとした警官にだって言い分はあるだろうと思う。でも、まったく報じられていないね。
困ったことに、この前科あり説はデマだとの噂もある。なれば、真のジャーナリストならば、その真偽を取材するべきだと思うが、現時点でそのような動きはない。あくまで警察の横暴により殺された黒人との大前提である。
更に付け加えるならば、単なる抗議デモはいざ知らず、全米各地で暴徒化したデモの参加者が、略奪や暴行などをしている以上、州兵による治安維持は当然に思うし、トランプが国軍に応援を要請しようとした気持ちも分からないでもない。
実際、CBSニュースでは、それでもトランプを支持する人たちとの取り上げ方でインタビューに応じたアメリカ市民の率直な意見を取り上げている。その市民は、黒人を殺した白人警官を悪いと言いながも、デモで略奪などをすることを強硬に取り締まらないのもおかしいと述べていた。
でも、欧米の大半のニュースは、軍隊まで使って黒人への差別を訴えるデモを抑え込もうとするトランプといった視点で報じている。それがウソだとは思わないけど、一方で暴動に怯え、あるいは怒りを感じるアメリカ市民もいる現実は押し隠される。
日本のマスコミの偏向報道に馴れてはいるが、欧米のマスコミのトランプ嫌いも相当だと感じた週末でした。