祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、 唯春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ 偏に風の前の塵に同じ。
ご存じ、平家物語の冒頭の一文である。今、日大の理事であり、名門アメフト部の監督である内田氏の脳裏には、祇園精舎の鐘の響きが唸っているのを必死で聞こえないふりをしているのではないかと思う。
日大のアメリカンフットボール部といえば、私が学生の頃から名門であり、何度も日本一の座についたことがある。私は自分がやらないスメ[ツには無関心であることが多いのだが、さすがに日大アメフト部のことは知っていた。
その日大アメフト部が試合で、相手チームのQBの選手に対して行った悪質な反則プレーが、監督の指示であったと報じられて一大スキャンダルになっている。この監督、勝つためには相手の司令塔であるQBを早期に潰すのが一番だと、以前から指導していたらしいことが漏れ伝えられている。
今回は、レギュラーから外れそうになっていた選手に、この汚い反則プレーを奨めたらしい。事実上の脅迫に近いと思う。もちろん、憶測でしかないが、こんな噂話が既に報じられていること自体、過去に相当な前例があるのだろう。
この事件以降、内田監督は姿を消している。そして日大の事務局側は、意図的な反則プレーの指示はしていないと述べて、火に油を注いでいる。危機管理がまったく出来ていないようだ。
日本大学は、大学としては日本一の規模を誇る。その経済規模は大企業並みであり、その中で理事として予算、人事などに辣腕を奮ってきた内田監督としては、絶対に手放したくない利権であろう。だから、ひたすらに保身に走り、雲隠れして、世間の関心が薄れるのを待っているのではないか。
一方、巨大組織である日本大学としては、このような不祥事はあってはならないこと。しかも世間から指弾されているのが、理事として日大の躍進に大きな貢献をした内田理事である以上、守りの姿勢に本能的になったのであろう。
日大としては、とにかく今は世間が忘れてくれるのをひたすらに待って、その後に穏便な処理をして、現状維持を図ろうとしているのではないか。そう勘繰られても仕方ない。
おそらく、勝てば官軍との定理が、内田監督の脳裏には刻まれており、反則だって勝てば良しとして、これまで指導してきたのだろう。そう思われてしまう。
馬鹿としか言いようがない対応であろう。日大アメフト部が反則だけで、勝利の実績を積み上げてきた訳ではない。真っ当な、堂々たる鍛錬あってこその実績であったはずだ。
しかし、今回の内田監督の雲隠れ、日大当局の事なかれ主義が、過去の栄光に泥を塗っている。そのことに気が付けない愚かさは、巨大な組織、伝統ある組織に身を置く人たち全てが銘記すべきことだと思います。
追記 週末になり、ようやく雲隠れしていた内田監督は出てきて、謝罪(相手大学名を間違えるのは如何なものか・・・)し、監督辞任を表明していました。
普通、これだけの騒ぎを起こしたら理事辞任も止む無しでしょうけど、その気はないようです。やはり、権力にしがみ付きたいのでしょうね。ちなみに、日大には危機管理学部があるとか。悪い冗談としか思えません。