アピールすることが上手でない。
まず喋りがダメ。早口な上に聞き取りづらい発音なので殊更悪い。三枚目で愛嬌なしの無愛想なのはともかく、太り気味で小柄で、しかも落ち着きがない。そのうえお洒落音痴で、外見を着飾ることに関心が薄い。だから人は見た目が9割なんて題字を見ただけで、ちょっとうんざりする。
うんざりするだけで、あまり改善する気がないのは、怠け者の性分であることが大きい。だいたい、外見で高い評価をされた覚えがないので、なにを今さらと達観しているせいでもある。
だが、読んでみて良かったと思う。この本で書かれていることは、外見の美醜とか、お洒落の勧めではない。言葉以外の手段によるアピール手法について述べたものだ。これは、なかなか勉強になる。
ちょっと驚いたのは、人間が他者にアピールする手段の内、言葉が占める割合は7%だということだ。すなわち他者とのコミュニケーションにおける主たる役割は、言語以外の要素であるという。
まさかと思ったが、この本を読んでいるうちに、相応に納得できた。たしかに外見的アピール(服装や身振り手振り)はインパクトが大きいし、声の高い低い、音量、音色なども重要な要素だと思う。
私自身、自信を持って話せる場合、低く落ち着いた声となる。当然に態度も落ち着いたものとなり、相手に安心感を与えるのだろう。一方、予想外、想定外の事態や質問などで動揺している場合、私は見事に無様な態度をとりやすい。声は上ずり、落ち着きなく、あたふたする。
私って、えらい分かりやすい人間なのだなと痛感した。そう思うと、他者とのコミュニケーションにおける言葉の役割は1割未満という著者の主張も理解できる。
しかし、冷静に顧みてみると、これだけ喋り下手で外見に無頓着な私が、顧問税理士として顧客からそれなりの信用を勝ち得ているのは、言葉以外の要因があるからなのだろう。
妙な言い方になるが、私はいささかドンくさく、他人を上手に騙すタイプには見えないらしい。また、スマートに見えない分、愚直で信頼は出来ると思われてもいるらしい。
良いのだか、悪いのだか分からないが、それが今の私なのだろう。
ちなみに表題の書で云う「見た目」とは単なるファッションや外見的美醜を指すのではない。言語以外のアピール能力全般を示している。他人と会う機会の多い人は、一度参考までに読んでみても悪くないと思います。