ヌマンタの書斎

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中間決算と申告

2011-09-28 13:39:00 | 経済・金融・税制

繊細なエリートは、時としてヒステリックに対応する。

支払期限までに税金を納めなければ、年率14.6%の利息(延滞税)がかかる。この低金利時代にえらい高率だと思うし、その上必要経費(損金)にならない。まさに懲罰的税金である。

一方、税金が還付される場合には、年率7.3%の利息(還付加算金)がつく。なぜ利率が延滞の場合の半分なのか、よく分らないが、誰もなぜか問題視しない。

むしろこの低金利時代に、これだけの高利率の利息がつくことが不思議なくらいだ。この高利率に目を付けたやつらがいる。

普通、企業の決算は一年である。決算月の2ヵ月後に申告納税することになるが、一年分の利益に対する税金を納めるのは、けっこう大変だ。そこで法人税法は、予定納税といって前年の決算で生じた税金の半分を、年の中途で納めさせることにしている。

もっとも、企業が自主的に中間決算を組んだ場合は、その計算された中間利益に基づく納税も認めてきた。これを利用(悪用といってもいい)した連中がいた。この低金利時代に、年利7.3%の金融商品なんて滅多にない。しかも、日本政府保証つきの利率であり、貸し倒れの危険性はほとんどない。

手持ち資金が一億円あるとしよう。ここで中間決算を組み、半期の利益2億円強で申告する。納税額は、ほぼ一億円だ。そして半年後、確定決算で赤字になってしまった。当然である。中間期に組み込むべき損失を、意図的に下期に入れたのだから、赤字になっても不思議ではない。

すると、中間決算に基づいて申告納税した一億円が全額戻ってくる上に、年利7・3%の利息(還付加算金)がついてくるのだ。これは美味しい。このような還付加算金目当ての中間申告納税が、一部のコンサルなどの営業もあってか、ここ数年激増していた。

そりゃそうだ。実を言えば私も数社、似たような申告をやっている。この過払い(結果的にだが)申告による加算金取得は、別に違法でもなんでもない。まァ、これが出来るのは資金余力があり、しかも、ある程度決算見通しが立つ、しっかりした企業でないと出来ない。

どの会社でも出来る手法ではないので、私としても積極的に売り込みはしていない。確認しておくが、これは違法ではない。中間決算はあくまで見込みであり、それを最終的に期末決算で確定させているのだから、合法であることは間違いないのだ。

この税法の間隙をついた遣り口に、霞ヶ関のエリートたちが地団駄踏んで悔しがっているとの話は、小耳に挟んでいた。しかし、まさか規制してくるとは思わなかった。

今年の税制改正は、国民生活よりも党内抗争を優先する民主党のせいで、遅れに遅れた。一応8月末の段階で、ほぼ9割がた国会を通過した。ようやく、その中味を精査してみたら、とんでもない改正(いや、改悪だと断じたい)が紛れ込んでいた。

それが中間決算義務の無い法人は、中間申告による納税禁止だとされてしまったことだ。よっぽど還付加算金目当ての中間申告に腹をたてていたのだろう。

まァ、心情は分らなくもないが、そもそも延滞税が高すぎるから、還付加算金も高くならざるえない現実を忘れてもらっては困る。なにより、企業の自主的な行為に基づく納税を否定するとは、いかな道理に基づくものなのだ?

おかげで、困ったこととなった。

今年は3月の東日本大震災の影響により、確定決算で赤字を計上する企業が相次いだ。しかし、必死で建て直し、来期には黒字決算の見通しをたてている優良企業も少なくない。

しかし、如何に優良企業とても、一年分の利益に対する税金を一括で納めるのは辛い。だから、半期の中間決算による納税を見込んでいたのだ。私もそのつもりで、決算説明を顧客にしてきた。

ところが、この遅れに遅れた税制改悪のせいで、中間決算納税が出来なくなってしまった。一応言っておくが、ほとんどの会社は還付加算金目当ての中間決算納税なんて、やっていない。あくまで、資金繰りの都合上、中間納税をやっておいたほうが楽だからに過ぎない。

もし、あの大震災がなければ赤字決算はありえず、黒字で申告できたはずだった。必死な頑張りもあって、来期は黒字決算が見込まれる。ところが中間決算納税が出来ない。中間決算は出来ても、前期が赤字なため中間申告ができない。

おかげで、来年の決算期には一年分の納税資金を用意しなければならない。これを読んで、だったら半年定期にでもしておけばいいのでは?と思う方は経営を分っていない。

資金を寝かしてしまうことは、お金を運用しないことであり、事業継続が前提である以上、使われていないお金の存在は経営のマイナス要因となる。余剰資金なんて、まず存在しない。お金はあれば使ってしまうのが、ほとんどの経営者の行動様式だ。

先に述べた中間申告による納付税金の還付目当てなんて、ほとんどの経営者はやらない。やりたくても、やれない。そんな余裕のある企業は極少数だ。還付加算金なんて、銀行預金よりは高利回りだが、事業利回りは通常もっと高い。もちろんリスクはある。でも、そのリスクを噛みしめつつも、チャレンジするのが経営だ。

今回の平成23年度税制改正は、遅れた上に、唐突に規制を紛れ込ませる姑息な改正でもある。今の政府が、経営というものを如何に理解していないかが良く分る。おそらく、この改正(いや、改悪)は民主党主導ではあるまい。

間違いなく霞ヶ関の、お勉強はよく出来るが、現場を知らないエリートが作成して、改正法案に紛れ込ませたものだろう。そして、市民派を気取る前・アホ首相が、なにも考えずに了承したのでしょう。

ごく少数の悪質な事例があることをもって、多数に不利益を押し付ける。ヒステリックとしか言いようが無い改悪であると、私は確信しています。

現在の日本の不況は、相次ぐ天災によるところが大きい。しかし、復興需要は景気回復の土台になるはずだ。でも、未だに復興資金は市中に出回っていない。これはすべて政府の無能無策によるものだ。

私は結果でしか政治をみない。民主党政権は、日本を沈下させた。長年自分たちを支持してきた少数意見にのみ耳を傾け、大多数の国民の声をないがしろにしてきた。このことは、決して忘れるべきではないと思います。

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