ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

少年アシベ 森下裕美

2009-07-13 12:18:00 | 
まさか本当にアザラシが日本の河川に現われるとは思わなかった。

近年、いるはずがないアザラシが、日本の川に出現して「タマちゃん」など名前を付けられ、あげくに住民登録まで交付されるありさまだ。

温暖化の影響だとは思うが、ゴマちゃんもビックリだろう。

表題の漫画はアザラシをペットにした家族を題材にした四コマ漫画だ。その可愛らしい絵柄でけっこう人気を博したから、覚えている方も少なくないと思う。

ただ、この作者はあの伝説の漫画雑誌ガロに描いたこともある人だけに一筋縄ではいかない。可愛らしい絵柄に、けっこう強烈な毒を盛り込むことで知られている。

さすがにメジャー誌であるヤング・ジャンプに掲載されただけに、この作品では森下独特の毒は薄められている。だからこそ人気が出たのかもしれないが、少し残念な気もする。

四コマ漫画好きで、上手く隠された毒を味わうことを楽しみにしている私からすると、可愛らしい絵柄に秘められた毒を賞味することこそ、森下裕美の漫画の楽しみ方だと思う。

その意味では表題の作品は、少し楽しみに欠けると考えている。「ひまわり武芸帖」でも「ここだけのふたり」でもいいが、他の作品のほうが森下の隠された毒を楽しめる。最新作ならば漫画アクションで連載中の「大阪ハムレット」は名作の予感が漂う逸品だ。ただし、一般的な人気という点からすれば、やはりゴマちゃんの魅力には敵わない。

やはり、あのアザラシのつぶらな瞳は見るものを魅了してやまないのだと思う。ちなみにアザラシは、本来肉食(魚や貝だが)動物なのだが、なぜかそうみられない。

そんなアザラシを可愛らしいだけのキャラクターとして使った森下の慧眼恐るべしだな。
コメント (4)
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