ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「コナンと髑髏の都」 ロバート・E・ハワード

2006-06-02 09:50:28 | 
1920年代の頃から安価なパルプ紙を使って製本された雑誌が、アメリカで大量に売られていました。カーボーイものや、SF小説、そして剣と魔法の物語などが中心の若者向けの雑誌でした。通称「パルプ・マガジン」、そのなかで人気を博したのが表題の野蛮人コナンの冒険譚でした。

筋肉ムキムキのアーノルド・シュワルツネッガーが主演の映画のほうが、現在では有名かもしれません。悪くないですよ、シュワツルネッガーのコナン役も、でも原作の雰囲気からすると、もう少し暗い野蛮さと、狡猾さが欲しかった。やっぱり、私は小説のほうが好き。

なかでも気に入っているのが、小説のなかでコナンが信仰している「クロムの神」様。この神様は、人間が祈ろうと、寄付をしようと、生贄を差し出そうと意に留めない。あくまで、その人間の行いを看ているだけ。人間が死んだ後で、その行いを計り、審判を下すだけ。

だからコナンは、苦しい時も、危ない時も神に祈ったりしない。自分を助けるは、あくまで自分のみの徹底したリアリスト。そんな不遜な野蛮人であるから、敵役の神官やら魔術師やらが駆使する魔人だろうと、神の眷属であろうと戦う時は、ためらうことなく戦い抜く。そして勝ち目がなければ、さっさと逃げ出す。

私は神が、あるいは神を騙る宗教組織の人間が、人間の世界に干渉することが嫌。神は神の世界で君臨していれば良し。いちいち人間のすることに口出すな。人間も安易に神にすがるな。人として生き、人として死んでいけばいい。矛盾だらけの世の中で、限りある命のあるままに、己が正しいと信じた人生を歩めばいい。そして、死という避けられぬ到達点に達したならば、後は神に己を委ねればいい。そう思っている。

真摯に宗教活動に勤しむ人からすれば、傲慢不遜と言われても仕方のない私の考えの原点は、実のところコナンの生き方に影響されてます。良いか悪いか分かりませんが、いずれ死ねば分かること。それで十分です。

なお、コナンの日本語版は早川書房と創元推理文庫と題名、組合せ等バラバラで刊行されてます。訳者も違うため微妙に表現が異なります。またイラストも違うため、ことなる雰囲気が楽しめます・・・まあ、好いのだけれど、版権どうなってるんだ? 例によって早川版は古本屋でしか手に入りません。創元版も似たようなものですが、最近ダイジェスト版を刊行したようです。
コメント (20)
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