のら猫の三文小説

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香奈とコシロの子供たち No.166

2013-11-11 00:00:03 | 香奈とコシロの子供たち


突然の陽太の辞任表明




そんな建築工事が続いていた時に、突然と陽太が総理大臣を辞任し、議員もやめたいと言い出して大騒ぎになった。優花も一緒に辞める、財務大臣の竹花まで一緒に辞めると発表した。経済もそこそこ、特に問題もなかった。なんだかんだと難しかった無料診察制度や無料検診制度も定着していた。


これを止めれば、一挙に財政健全化が達成できると言う根強い批判は続いていたが、一時は増えていた赤字国債も徐々にではあるが、減ってきて、そんなに問題でもなかった。それに陽太もまだ若い、陽太のなにかスキャンダルが発覚しそうになったのか、隠し子でも出てきたのか、覚せい剤でも吸っていたのか、汚職でもあったかと声が出て、記者会見が開かれた。


陽太は言った。


「私ができる事はやった。後は新しい人たちが、進めていくべきだと思った。10年も総理大臣が同じ人では水が澱むと思う。私は今後は自由な立場で、不動財団でつぶれた人や企業を再生するお手伝いをしていきたい。不動財団の理事長にならないかとお誘いをうけている」、


優花も私もそれを手伝いたいといった。何も知らされていなかったごきげん党は大騒ぎになり、緊急議員総会を開いて、陽太の辞職を阻止する決議をした。


国会でも、陽太の辞職理由に不自然さがあると集中審議が開かれる事になった。ごきげん党以外の政党は、陽太を丸裸にして、ごきげん党そのものを粉砕できるチャンスと考えたし、ごきげん党は、陽太に辞任を撤回してもらうチャンスと思った。


全会一致で集中審議が決まった。不動財団はごく一部の人には知られた財団だったが、一般的には無名だった。不動財団ってなに?何をしている財団なのと云う話がでた。物知り顔のおっさんが昨日調べたくせに、詳しい振りをして、テレビで、フリップまで作って、創設した年、活動の内容、今までの実績などを説明した。




神子の予測では、これでごきげん党は解党してバラバラになり、議員はチリヂリになって、他の政党に入り込み、やがては無料診察制度もなんだかんだともっともらしい理由をつけて、縮小されて、廃止される事になっていた。


総理が辞めると言えば、もう実質的には辞めたのも同じだった。ごきげん党みたいな政党は、陽太が辞めれば、求心力を失い、バラバラになるのは確実だと思った。


陽太が辞めて、無料診察制度が廃止されれば、ジブトラストは、気兼ねなく節税対策ができた。運用会社が、わざわざ税率の高い国に利益を集める事はない。神子は敷地内で用意した大きなマンションのような家の設計に姫子の麻田エンジニアリングを呼んで、うれしそうに取り組んでいた。




陽太の辞職理由追求のための国会の集中審議が開かれる事になった。驚くことに陽太やめるなと云うデモまであった。総理大臣を無理やり辞めさせる事は難しいが、一旦辞めると言った総理は、もはや羽根も手足を取られた鳥みたいなものだった。


元々無茶な無料診察制度も縮小され、やがて廃止されるだろうと云う観測記事もでた。そしてその集中審議が始まった。なんと視聴率がトップになった。


ごきげん党の議員まで野党のような質問をした。


外交日程はどうするのか?、
内閣総辞職をするどんな理由があるのか?、
何か隠していないの?、


などなど厳しく追及された。


陽太は、今、不動財団が手がけている事は大切な事だ、再チャレンジできる社会を作るのは必要な事だと思う。公的な制度で支援しているが、正直、資金も体制も人員も不足しているし、十分な対応は出来ていない、財政的なサポートが不足している事は明白だ。


財政的には、又赤字国債を増発し、財政赤字を増やするのも無理だ。言葉を繕って、この問題に真剣に取り組んでいると言う事は出来ない。どうしても行政の力では、限界があると思う。民間として、自由な立場で何ができるか試してみたい。


不動財団は活動しているが、総括的な責任者を探して、本格的な活動をしたいと言っているので、力を貸していきたいと思う


と答弁した。


無料診察制度程度でガタガタいっている今の状態では、再チャレンジ社会など言っても、所詮、美辞麗句のスローガンにすぎない今の現状を揶揄しているような言い方だった。


野党も与党もこれには反発した。


行政では出来ない事を民間で出来ると云う発想がおかしい。


たしかに不動財団は基金も豊富だが、所詮民間団体に過ぎない


再チャレンジ社会の構想はわかるが、なぜそれを法案化しない。


国会で審議して、それに対する意見の相違があり、国民の判断を求めるのが、民主主義ではないのか、


公的制度の確立と充実が基本であるべきだ、


行政ではできない


とは総理大臣が言うべき言葉ではない。


資産家の息子として、のんびり暮らして、片手間に民間団体で時間をつぶすだけではないのか。優花のレストランも高級レストランチェーンとして大きくなっている、ゆったりと暮したいだけではないのかとまで言われた。


陽太もそれに答えられず、再チャレンジできる社会を目指して、公的制度の見直しとその財政基盤をまとめた計画を作り、早急に法案化してみなさんのご審議をうけたいと答弁した。一応それまで辞職を撤回する事になった。




陽太の議員としての任期は後2年あり、そんなに早く辞める事はできなくなった。それでも不動財団の認知度は一挙に高まった。




「神子ちゃんの例の大きな家の建設は中断したらしいね、もう少し先になるといっていたよ。予測がずれたとぼやいていたわ。」、
香奈
「ジブとしても陽太が総理大臣を続けていると大変なんだよ。今は税金払うために、わざわざ日本に送金させているのよ。今のジブでは日本に送金させる必要はもうないのよ。現地で保留していた方が税金も安いのよ、中国くらいなの、現地で保留しているのは、中国は、約束があってね。


中国国内に保留している時は人民元でいいと言う約束をしたのよ。今は人民元への為替はなかなか難しいのよ。それでもむりやりある程度は日本に送金しているだよ。ジブが払う税金は大変なんだよ。まあ少しは対策も取っているけどね。神子ちゃんはこれで、払う税金が大分少なくなる方法を色々と計画していたんだよ。」

「もうそんなにお金を貯めても仕方ないよ。再チャレンジできる社会を目指すのはいい事だよ、国会でも法案がでれば、各党は真剣に審議すると約束したのよ。不動財団でどんなに活動しても、やっぱり一部の人だけを支援していると思うよ。国として公的な制度を整備して、再チャレンジできる社会をつくるのが基本と思うよ。公的制度の整備や確立が先だという意見は正しいと私は思うよ。」
香奈
「それはそうだろうね。青不動さんは陽太もなかなかやるなと言っていたよ。神二郎君も不動財団には寄付も集まってきたと言っていたよ。不動財団や不動総合で働きたいと云う人も増えたらしい。弁護士だけでなく、心理学や経済学なんかに詳しい人も手伝ってくれるようになったらしい。不動総合の人は受け付けるのに忙しいとぼやいているらしい。でもこれで不動財団のスタッフは充実していけると神二郎君は喜んでいるよ。」

「辞任劇は、陽太君の芝居かね。」
香奈
「辞めるのは、本当に辞めるらしいけど、みんなに再チャレンジ社会の意味を考えてもらう事は大切だと思っている事は確かだろうね。それはやっぱり陽太君も政治家になったという事だろうね。」

「陽太君と神二郎君はそんなに仲が良かったかね。」
香奈
「そんな事はないと思うわ。陽太君は本当に再チャレンジ社会が大切だと思っているみたいだよ、何回か不動財団に行っていたみたいだし、ヤル気もなくした人を励まして、勇気づけて立て直すのは、民間でしか出来ないと思っているみたいなのよ。」

「それでも総理大臣が自ら、公的制度では出来ないと言うのはおかしいよ。民間の協力を求めるのはいい事だよ。でも基本は、公的な制度と社会的な認知度の徹底だよ。それをするのが総理大臣の役割だよ、陽太君の役割だと私は思うよ。」

香奈
「恵は民間団体の代表なのに、陽太君に厳しいね。陽太君は今後は経済や外交に精通した人が次期総理大臣になるのが、日本のためになると思っているじゃないの。


成長と福祉は社会の両輪だよ。陽太君は、福祉の充実が国家の基本だと言って、福祉は充実させたけど、今度は経済に精通した、違う考えの人に替わり、日本経済も成長して、その両輪が相互に大きくなっていくのが、日本にとってはいいと思っているのじゃないの。


日本の成長率は確かに少し低いからね。もっと成長していい筈なのよ、今は消費材関係が好調なんだけど、もっと多様な製造業が伸びる必要があると思うよ。


ジブの立場からすると、少しは法人税率も下げて欲しいし、配当分離課税も復活して欲しいのよ、投資も活発になり、企業ももっと大きくなれると思うよ。


それに陽太君も無料診察制度を軌道にのせるのに、結構疲れたみたいだしね。」


「無料診察制度で苦労したのは、判るよ。でもそれが陽太君の役割なんだよ。再チャレンジ社会の基礎を作るのも、陽太君の役割なんだよ、財団も大きくなってね。行政みたいな事を言う人もいるのよ。公平性とかなんとか、でも私たちは民間の団体なのよ。目の前の困っている人を一人でも助けるのが、私たちの役割だと思うのよ、行政は、ここまでやりますと云う線をつくり、それぞれの民間団体が色々な考え方でサポートしていくのがいいと私は思っているのよ。」

香奈
「それはそうだろうね。恵はこんな話はムキになるね。」


「これは私が今までやってきた事だからね。民間でやりやすい事もあるけど、基本的な公的制度を充実させる事も重要だよ。

香奈
「それはそうだろうね。陽太君も色々と整理していくと思うよ。それを使って、モデルケースみたいな取り組みをみせるのもいい事だよ。」


「それはそうだわ。」