のら猫の三文小説

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香奈とコシロの子供たち No.165

2013-11-10 00:00:50 | 香奈とコシロの子供たち

研究所と大学院大学の建設進む




ジブトラストが冶部東京不動産を通して買った土地は元々、広大な工場だったので、それを取り壊して、造成工事が開始された。研究所の規模や大学院大学の規模は未定だったが、研究所の計画が決まるのを待たず、造成工事を行った。


何しろ広くなったジブの里にそのまま隣接し、山脈まで続く広大な土地だった。陽一は、ジブ総合研究所及びジブ大学院大学基本構想委員会を計画し、その委員を選定する準備委員会まで更に作った。


基本構想委員会は、未来のジブトラストの骨格を作る研究所と大学院なので、自由な視野で基本構想を練ってもらうと云う触れ込みだった。更に準備委員会は、その委員を選ぶ委員会だった。更にその準備委員会の委員を選ぶ委員会まで作ろうとしていたが、香奈に言われた。


やめなよ、いつまで経ってもできないよ。


陽一は研究センターの再編成とネットワーク作りに苦戦していた。株屋くずれの研究員は頑固だった。そのための時間稼ぎであった。


実は陽一は、その作業は徹の未来エネルギーシステムにいた、なんとか大学の学長まで勤めた、夢野見蔵にとっくに、丸投げしていた。


文部科学省に人脈もあり、学会にも顔が利いたとの理由だった。夢野見蔵は高齢だったが、新しいエネルギー技術には夢があり、本格的、最新式の研究所を作りたいと思っていた。


そして夢野は、準備委員会に子分を選び、基本構想委員会のメンバーまで告げていた。


別になんとか委員会などもなくても結論は決まっていたようなものだった。


陽一は、ジブトラストの研究センターを取引に即した研究センターの再構築に専念するための時間が欲しかっただけであった。金儲けにつながる実務を構築するために、各グループとも調整し、必要な人を調整したり、各グループに蓄積されたノウハウなどをデータベースにしたりと大忙しだった。


陽一は、ジブに長く、アカディミックな事よりも金儲けに繋がる研究に惹かれていた。夢野見蔵も初めは経済研究所の積もりだった事も知っていたし、ジブトラストが運用会社である事も知っていたので、経済関係については、もはや経済学の有名人だった知加子に、見栄えのいい学者を揃えるように頼み、知加子が知り合いに連絡を取り、人選をしていた。なんやかやといいながら、ジブトラストは、金儲けに繋がる事を優先する事は、知加子は肌で感じていたので、実務的な企業分析の専門家なども集める事にしていた。


夢野見蔵は資源エネルギーの大家であったので、資源エネルギー関係の最新研究所の構想に没頭し、ロボットについてはロボット工学にいたおっさんに頼み遺伝子工学については、遺伝子研究センターに頼みうるさそうな恵の言っていた心理学は、知り合いの社会福祉や介護に詳しい財団の協力者に頼んでいた事は、陽一も知らなかった。


いわばジブトラストに近い人たちが自分の理想に基づく、個々の研究所を作ろうとしていたようなものだった。それにジブには金があったし、金儲けには夢中になるが、判らない事には金だけ出す癖はあった。


基本構想委員会の結論なんぞ出ずとも、建設計画も進み、研究所と大学院大学設立計画は、着々と進んでいたのが実情であった。



結局、総合研究所と総合的な大学院大学が、金に糸目をつけないジブと自分の理想に基づく研究所を作りたいと思う人たちによって、考えられる最新式、理想的な研究所を、金に糸目をつけず、建築されていった。


ジブ総合研究所及びジブ大学院大学基本構想委員会の答申は、簡単にまとまった。みんな自分の夢を寄せ集め、実際に建設していたものに理屈をつけるためだけの答申だった。


経済学研究所は二つに分かれ、基礎研究所と企業分析研究所の二つの研究所が出来た。経済学研究所は、ジブトラストが本当に計画していた研究所なので、そこには、一族の銀行やもう一つの銀行からもほんの少し資本を入れ、ジブ総合研究所の一部門ではあるが、独立したような研究所であった。


経済学研究所と企業分析研究所の所長には陽一がなり、基礎研究所の所長には知加子がなった。その他の研究所は、ジブ総合研究所が大きな持株会社みたいな組織として、個々の研究所が子会社のような研究所となった。


ジブ総合研究所は、赤字になって運営出来なくならないように、ジブが運営基金までドーンと出資する事になった。ジブ総合研究所とエネルギー研究所の所長には夢野がなった。それぞれの研究所には、自分の理想に基づいた研究所を作った人が当然なった。


ジブトラストは、発足当時に作った遺伝子研究センターと違って、研究所といっても株式会社組織にして、ジブの完全子会社とした。今のジブはやたらと金を儲けていた。儲けなどは期待できないとは、知っていたが、子会社のジブ総合研究所の損失は、ジブ本体の税金を安くできる可能性もあった。そんな事を考えている税理士もいた。


大学院大学も困らないように、大きな基金を積んだ。ジブトラストでは、莫大な金を支出する事になった。夢野見蔵は、香奈がこんなに高いのと吃驚すると思ったが、香奈はこんなもので済んだのと言ったので、吃驚した。


香奈
「ジブの里の北側に作っているよ。ジブ総合研究所及びジブ大学院大学基本構想委員会の答申に沿って建築されているよ。結局総合研究所と大学院になってしまったよ。高くついたよ。思い切り、最新式の研究所にするんだよ。まあチマチマ作るよりはましかもしれないね。徹さんや勝まで熱心になって、ロボット工学研究所とエネルギー研究所は、自分達の第二研究所と思っているよ。心理学や社会福祉関係の研究所や講座まであるんだよ。みんなこっそり研究室を作るんだよ。遺伝子研究センターまで第二研究センターを作るような気になってるよ、遺伝工学だけでなく、植物遺伝子研究室、食品科学研究室なんぞもあるし、製薬も生命科学研究室とか薬理研究室をこっそり入れているんだよ。


陽一さんが手抜きして、みんなに丸投げしているのよ。経済学研究所は知加子さんが作ったようなものだよ。経済学基礎研究所以外に企業分析研究所まであるよ。知加子さんも理論経済学者と思ったけど、実務の人にも知り合いがあるのね。電気は未来エネルギーシステムが新型の発電所を用意するらしい。ごきげんソフトもコンビューター網を準備しているよ。でも水は今回は外から引かないと無理だろうね。その工事もしているよ。」

「そうだろうね。そんなに湧いてくる事はないわよ。でもよかったわ。財団も自分の研究所を作るみたいに張り切っているわよ。財団も助かるわ。」