読書な日々

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『世界最強の女帝メルケルの謎』

2016年10月01日 | 評論
佐藤伸行『世界最強の女帝メルケルの謎』(文春新書、2016)

1954年生まれの62才、なんと私と一つ違い。なのにもう11年もの長期政権を維持してきた「世界最強の女帝」と呼ばれる彼女。ロシア語が堪能で、アメリカもEU諸国もプーチンとの窓口として彼女に頼り切っているという。

フランスではシラク、サルコジ、オランドと次々大統領が変わっていくのに、ずっと長期政権を維持しているメルケルということから関心をもったのだろうか。それにしてもロシアのような独裁国家でもないのに、11年間も政権を維持しているというのもすごい。

ドイツという国にはあまり関心がないが、それでもフランスとともにEU創設に努力し、ギリシャ金融危機もなんとか乗り越えようと腐心している国というイメージがある。

この本を読んで興味を惹かれたのは、メルケルが長考をして一旦決めたらどんなに困難に見えることでも実行する力を発揮するということ。長考というのは、決して頭が悪いからではなくて、1を聞いて10を知るほど頭の回転が速いそうだから、ちょうど将棋とか碁のプロのように、あらゆる手を検討してから実行に移すタイプのようだ。

それにしてもメルケルが犬に噛まれるという事故以降犬嫌いになったことを知ったプーチンが首脳会談の時に犬のぬいぐるみを贈ったり、会談の場に飼い犬を登場させるなどの嫌がらせをしたとか、イタリアのベルルスコーニ大統領がセクハラ的言辞を弄したとか、ヨーロッパではそういうことが当たり前のようにあることに驚く。

国家元首として外国に出かけるということが日本人の場合にはたいへんなことだが(村山首相は緊張のあまり神経性下痢を起こしたという話も聞くし、第一次内閣の時の安倍もそうだろう)、ヨーロッパはやはり地続きで、民族的にも交流が深いから、まさに近所つき合い程度の感覚なのだろうか。

ジャーナリストの書いたもので、非常に読みやすい本だった。

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