昨日(2024.2.15)『毎日新聞』(夕刊)に【約20年ぶり改訂『岩波仏教辞典』社会見つめ「近代」拡充―新項目に「葬式仏教」「創価学会」など】の記事が掲載されていました。
以下転載です。
「葬式仏教」 「創価学会」-。そんな項目が追加された『岩波仏教辞典』(岩波書店、9900円)=写真9=の第3版が2023年11月、刊行された。約20年ぶりの改訂は、最新の研究成果を盛り込んだだけでなく、これまで少なかった「近代仏教」に関する項目の充実が大きな目玉。幕末以降、現代に至る仏教界の動きのことで、追加された約200項目のうち約90項目が近代仏教関連だ。専門家以外には縁遠く思われがちな辞典だが、現代社会と仏教の関わりをひもとく助けとなりそうだ。
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仏教辞典は初版が1989年、第2版が2002年に刊行されたが「近代仏教の項目は初版では数項目。
第2版では明治期の著名な仏教学者の名前などが増えたが、その数は多くありませんでした」。今回、近代仏教の専門家として編集に協力した佛教大の大谷栄一教授はふり返る。「近代仏教という分野が未発達で、執筆する専門家がいなかったことが大きな理由だと思います」 かつての研究は古代や中世が中心で、近代に関心を持つ研究者が少なかったらしい。「しかし、前近代の仏教がどう今につながっているのかを考える上で欠かせません」。2000年代に入って注目を集めるようになり、今ではホットな分野。今回、執筆陣55人のうち18人が近代仏教の専門家というのがその証左だ。「ようやく執筆の態勢も整ったということ」と大谷教授は感慨深けに語る。
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具体的にどんな言葉が加わったのか。例えば「中外日報」は、1897(明治30)年創刊で、今も週2回刊行されている宗教専門紙。雑誌『中央公論』の前身で、明治期に西本願寺の青年僧侶たちが創刊した「反省会雑誌」や、「ラジオ教説」の項目も新設された。「メディアの存在は近代仏教の特徴の一つ。広く一般への布教や、仏教界のあるべき姿について問題提起をする役割を果たしてきました」 また「真如苑」 「創価学会」 「立正佼成会」 「霊友会」といった新宗教団体の項目も追加された。「現代の仏教を語る上で無視できません。除外せずきちんと位置づけることが大事です」。大きな社会問題となった「オウム真理教」の項目もできた。
「葬式仏教」は現在進行形で話題となる言葉。辞典では「葬儀および年忌法要・墓地管理など、おもに追善儀礼に依存している伝統的な仏教のあり方に対する言説」と定義するが、批判的な見方だけでなく、葬儀の文化的な価値や、グリーフケアとしての意義などを前向きに捉える最近の考え方にも言及する。このほか、日本の仏教者も参加して1893年に米・シカゴで開催された「万国宗教会議」などグローバルな項目も増えた。
「○○と仏教」という「テーマ項目」もある。例えば「環境と仏教」、 「戦時体制と仏教」、「部落解放運動と仏教」、そして「インターネットと仏教」。現代に至るまで、社会の動きに仏教がどう関わってきたのかを端的に理解できる。
巻末にある「仏教史略年表」も増補。1996年に真宗大谷派で女性住職が認められたことなど、ジェンダーの動きにも重点が置かれた。最後は2022年、安倍晉三元首相のゝ銃撃事件を受けて宀宗教2世」が問題化したことで締めくくられる。
インターネットを使えば手軽に何 でも調べられる時代だが、大谷教授
は「あふれるほどの情報の中で、それらが正しく適切なのかという基準 を提供するという意味でも辞典の存 在意義は大きい」と力を込める。
【花澤茂人、写真も】(以上)
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