『図解入門業界研究 最新 葬儀業界の動向と仕組みがよ~くわかる本』(2024/11/9・吉川美津子著)、業界の動向全般が、よく理解できる本でした。
死後事務委任は家族からそれ以外へ
結婚しない人や子どもがいない人が増え、納骨や役所の手続きなどの死後事務を担うのは家族という常識が揺らいでいます。死後事務を寺院が引き受ける動きがあります。
単身世帯の増加により
各種手続きの代行が課題
一人暮らしが増え続けています。核家族は子どもが独立した後、夫婦のどちらかが亡くなると大半が一人暮らしになりますし、子どもを持たない選択をする人、生涯未婚の人も増えています。そのため2050年には全5261万世帯の44・3%に当たる2330万世帯が一人暮らしになると推計されています(国立社会保障・人口問題研究所推計)。このうち65歳以上は1084万世帯で全体の20・6%を占めます。一人暮らし男性高齢者のうち未婚者の割合は59・7%、女性もその割合は30・2%になるとみられています。「おひとり様社会」です。
人が亡くなった後には、火葬や納骨、役所での手続き、様々な契約の解除といった死後事務が発生します。以前なら当然家族が担うものと考えられていましたが、おひとり様社会では必ずしもそうはいきません。亡くなる前でも、認知症になった際の成年後見を誰が担うのか、入院や介護施設入居時の保証人をどうするかも同様です。
そこで、NPOや法律事務所、社会福祉法人、社会福祉協議会などが、身元保証や死後事務委任の契約を結んで後の事務を請け負う動きが広かっています。「高齢者等終身サポート事業」「身元保証等高齢者サポート事業」「生前契約」「エンディングサポート」などと呼ばれます。登場した90年代頃は画期的な取り組みでした。
寺院と専門家で共同サポート体制を
もともと、付き合いが長く信頼する僧侶に「菩提の弔いはこれでよろしく」とお金を渡し、弔いだけでなく死後事務を頼るケースはありましたが、お金が絡む問題は訴状リスクなどの難しさがあります。そのため、今ではきちんと契約を結んで体系化することで檀信徒、寺院双方の安心につなげることが求められています。寺院単独で請け負うのではなく、法律などの専門家と協力するケースが多くみられます。
山梨県では宗派を超えた複数の寺院が共同で「ソーシャルテンプル」という一般社団法人を設立。県内の行政書士らの協力を得て「ゆくすえサポート」という名称でエンディングサポートを担っています。寺院は檀信徒らの相談窓口であると同時に、仏事や供養を担います。成年後見や相続、死後事務委任契約などは専門家に委ねることで樞信徒の生前から死後を支えるのです。法律家や葬儀社などが寺院ごとの実情に応じてこうしたエンディングサポートを構築するビジネスもあり、利用する寺院も増えています。
社会の変化に応じた寺院の新たな役割として期待、注目される死後事務委任ですが、樞信徒との関係性が薄ければそもそも寺院に頼ろうとは思わないでしょう。いわば、寺院が信頼されていることの結果です。裏を返せば、こうしたことを依頼してもらえるだけの信頼関係が檀信徒ときちんとできているのかということが、多くの寺院にいま問われているのではないでしょうか。
死後事務委任は家族からそれ以外へ
結婚しない人や子どもがいない人が増え、納骨や役所の手続きなどの死後事務を担うのは家族という常識が揺らいでいます。死後事務を寺院が引き受ける動きがあります。
単身世帯の増加により
各種手続きの代行が課題
一人暮らしが増え続けています。核家族は子どもが独立した後、夫婦のどちらかが亡くなると大半が一人暮らしになりますし、子どもを持たない選択をする人、生涯未婚の人も増えています。そのため2050年には全5261万世帯の44・3%に当たる2330万世帯が一人暮らしになると推計されています(国立社会保障・人口問題研究所推計)。このうち65歳以上は1084万世帯で全体の20・6%を占めます。一人暮らし男性高齢者のうち未婚者の割合は59・7%、女性もその割合は30・2%になるとみられています。「おひとり様社会」です。
人が亡くなった後には、火葬や納骨、役所での手続き、様々な契約の解除といった死後事務が発生します。以前なら当然家族が担うものと考えられていましたが、おひとり様社会では必ずしもそうはいきません。亡くなる前でも、認知症になった際の成年後見を誰が担うのか、入院や介護施設入居時の保証人をどうするかも同様です。
そこで、NPOや法律事務所、社会福祉法人、社会福祉協議会などが、身元保証や死後事務委任の契約を結んで後の事務を請け負う動きが広かっています。「高齢者等終身サポート事業」「身元保証等高齢者サポート事業」「生前契約」「エンディングサポート」などと呼ばれます。登場した90年代頃は画期的な取り組みでした。
寺院と専門家で共同サポート体制を
もともと、付き合いが長く信頼する僧侶に「菩提の弔いはこれでよろしく」とお金を渡し、弔いだけでなく死後事務を頼るケースはありましたが、お金が絡む問題は訴状リスクなどの難しさがあります。そのため、今ではきちんと契約を結んで体系化することで檀信徒、寺院双方の安心につなげることが求められています。寺院単独で請け負うのではなく、法律などの専門家と協力するケースが多くみられます。
山梨県では宗派を超えた複数の寺院が共同で「ソーシャルテンプル」という一般社団法人を設立。県内の行政書士らの協力を得て「ゆくすえサポート」という名称でエンディングサポートを担っています。寺院は檀信徒らの相談窓口であると同時に、仏事や供養を担います。成年後見や相続、死後事務委任契約などは専門家に委ねることで樞信徒の生前から死後を支えるのです。法律家や葬儀社などが寺院ごとの実情に応じてこうしたエンディングサポートを構築するビジネスもあり、利用する寺院も増えています。
社会の変化に応じた寺院の新たな役割として期待、注目される死後事務委任ですが、樞信徒との関係性が薄ければそもそも寺院に頼ろうとは思わないでしょう。いわば、寺院が信頼されていることの結果です。裏を返せば、こうしたことを依頼してもらえるだけの信頼関係が檀信徒ときちんとできているのかということが、多くの寺院にいま問われているのではないでしょうか。