『世界は行動経済学でできている』(2025/2/27・橋本之克著)からの転載です。
「1年の計は元旦にあり」は、行動経済学的に誤りだった
立てた目標に挫折してしまう理由
「1年の計は元旦にあり」と言われますが、みなさんは年始に何か「今年の目標」を立てたでしょうか。
「今年中に10キロやせる」
「年間100万円貯金をする」
「資格試験合格を目指して勉強をする」
そんな目標の数々は、予定どおりに達成できましたか?
ちなみに私は、毎年年明けに「今年こそこれをやろう!」という目標を立てていますが、だいたい途中で挫折してしまい、ほとんど達成できたことがありません。
詳しくは後述しますが、これには人間に共通の「習性」が関係しています。
例にあげた、健康や美容のためのダイエット、お金を貯めるための節約、試験に合するための勉強……。
どれも現時点よりも先の利益を得るための行動ですよね。
一方、目の前のお菓子を食べる、ネットで服を購入する、勉強のテキストを閉じてオンラインゲームをするなど、目標達成を妨げる誘惑の数々は、今この瞬問に手に入る利益です。
私たちはしばしば、「将来手に入る利益」よりも。「目の前にある利益」を優先してしまいます。「やらなきやいけないのはわかっているけど、とりあえず後回しにして今はこれを楽しもう」と思ってしまいます。
これを「現在志向バイアス」と言います。
「先送り」にまつわる一連の行動には、「現在志向バイアス」以外にも、さまざまな行動経済学の理論が当てはまります。
現状維持バイアス(315ページ)……変化を避けて現状を保とうとする心理。変わることによる損を避けようとする(例・今の仕事に不満はあるが転職の決断が できず、同じ会社に居続ける)。
決定麻痺(16ページ)……選択肢が多すぎて決断を先送りしたり、決断自体をやめ てしまったりすること(例・携帯電話の料金プランを見直したいが、プランやオプションが多すぎて、結局変えられない)。
・投影バイアス……(この状況が延々と続くと見込み、リスクを未然に防ぐ発想になり計画錯誤……計画の見通しがけいために達成できないこと(例・夏休みの始まりには宿題の計画を立てるが、拮局そのとおりに終わらずギリギリになる。
このように、「ついつい先送りしてしまう」という行動には、さまざまなバイアスが影響しているのです。
目の前の利益を優先したくなるのは「原始人」の名残?
「現在志向バイアス」とは、人が判断をする際に、未来よりも目先(現在)の利益を優先する傾向を指しています。
目の前のおいしいお菓子を食べる「利益」と、そのお菓子を我慢して将来やせるという「利益」を比較すると、前者を優先してしまいます。
前者の利益を受け取ってしまうと後者の利益を得られなくなるとわかっていても、目の前の利益を求めてしまうのです。
その結果、口標を軽視したり、先送りにしたりしてしまいます。