超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ランクヘッド「AT0M」

2009-07-29 23:00:24 | 音楽(全曲レビュー)
久々の全曲レビューです。宣言してからかな~り遅れましたが
ランクヘッドの「AT0M」について。
前回がAPOGEEの「夢幻タワー」だったので1ヶ月以上ぶりか・・・。
これで4作目。


田中ユタカの「愛人 AI-REN」という漫画にこんなセリフがある。


「この世界にはボクを愛してくれる人がいます
 ボクの愛する人がいます
 
 ボクの存在を望んでくれない世界をボクが愛することはできます」


この漫画は私の人生を賭けてでも一人でも多くの人に伝えたい傑作なのだが、
ランクヘッドの今回のアルバムがこの漫画とリンクしている気がして。

生きること。
生き抜くこと。
人に愛され、人を愛すること。
この世界と向き合うこと。
自分なりの人生を生きること。
どうしようもないことに真っ向から立ち向かうこと。



つまりは、「生」という人間が持つ最も基本的な事象に直結している、
クソみたいな世界を生き抜くためのアルバムだと思うのです。
自分が1番好きなところはそこです。

この世界を否定しつつも、受け入れる覚悟を持つ。あるいは、逆らう。抗う。


個人的には傑作だと思っています。
という訳で全曲レビュー行きます!以下↓



1.闇を暴け
それぞれの楽器がぶつかりあうような激しいアンサンブルでスタートを切ります。
雰囲気的には「月光少年」に近いものを感じる。
とにかく「夜」という情景にピッタリマッチするような、
それでいてメラメラと炎が燃え上がっているような、とても情熱的な一曲です。
メロディーは純和風で聴きやすい。
そして何よりギターのせめぎ合いが素晴らしい。



2.花は生きることを迷わない
このアルバムの中でもっとも印象に残る曲。
とにかくダークな雰囲気でもって、かつ力強さも相当な曲。
和メロを駆使したギターリフとサビのマイナーコードが特徴的。

この曲で歌われているのが人間の不当さとそれ以外の生き物の正しさ。
この曲では「花」がその正しさの象徴になっていて、
人間として生きることの苦悩や悔しさが延々と歌われるという超ダウナーな歌になっている。
が、それだけでは終わらず最終的には「花のように純粋に生きたい」という
着地点へ到達してる感じが個人的にはしていて。
それが何より素晴らしい。


「孤独、不安、絶望、虚無感、無くならない自己矛盾」

「死にたいなんて 死にたいなんて思わない奴がいるものか」

「花が綺麗だと思うのは人が醜い生き物だからか?
 地位、名誉、欲望、嫉妬、生きるためだけに生きられない」

「完全だ 花は完全だ 僕は不完全だ あああああ」


これらの詞に心動かされる人も少なからずいるはず。
絶望の中から希望を見出す方法論がやはり自分は好きみたいです。
「頑張れ」とか「大丈夫」とか言われても嬉しくないんですね。
言い方にもよりますけど。

尚、この曲サビの部分が「なんまいだ」っていう風に聴こえます。多分これ確信犯。



3.スモールワールド
PVも作られている曲。とにかく全身全霊で歌い演奏していて、
かなり暑苦しい曲です。でもそれが何よりも心を打つ。
丁度小高芳太朗の声がそこまで男らしい声でもないんでバランスもとれてるし。
みんなで一緒に歌ったら気持ち良いだろうなー、って感じの曲です。

「僕らの命が平等なんかじゃないこと」

この一節は最近かなりの頻度で実感してる。
人間の命が平等だなんてのは真っ赤な嘘だと思う。ってかきれいごとだ。



4.消えたプレヤード
初期のランクを彷彿とさせる切れた和メロが気持ちいい!
と個人的には大興奮な曲。名曲です。
しかもリフだけではなくサビのメロディも良い具合に歌謡曲をロックに変換してるなあと感心しきり。
ただ歌詞に関しては思いっきり寂しい内容で、哀愁感がじわじわと漂ってくる感じではあります。


心に大きな穴がポッカリ空いてしまったような、そんな曲。



5.ラブ・ソング
タイプ的にはミドルバラードなんだけど精神的には大分攻めてる。
聴き手にがむしゃらにメッセージを伝える気満々の曲。

「音楽と人」で読んだんだけど小高芳太朗は最近子供が生まれたらしくて。
その子供に向けての曲でもあるそうです。
でもこれ誰が聴いても伝わるものがあるんじゃないか。

「独りじゃない」というありふれた歌詞を、
本気度が伝わる歌い方で何度も繰り返すラストにはかなり引きずり込まれます。


「何もないから 心だけは全部君にあげよう」ってフレーズがとても好きです。
これ以上なくストレートで、あったかい歌が響いています。
これ生で聴きたいなあ。



6.呼吸
これはイントロのリフが何とも言えないですね。
アンビエント風とでもいったらいいのか。イメージ的には輪廻転生なんですけど。
とにかく生命を感じさせる切ないリフになっています。

にしてもこの曲聴いてると涙出そうになるわ。
歌詞の切実さが半端じゃない。 願いの熱量がべらぼうに高い。
正に冒頭で挙げた作品に一番直結してると思われるのがこれです。


「最後に僕が死ぬその時
 君の名前を呼んで死にたい
 きっと多くは語れないから
 その全部込めて君を呼びたい」

「綺麗事など大嫌いだった」


極めつけはこのフレーズ。

「悲しみの消えない世界を恨まないで
 全てを愛せない世界を恨まないで」


なんというか、凄い次元に来たなあ、と。デビュー当時はこういう歌詞はきっと歌えなかったでしょうね。
きっと愛する人がいる、信じられるものがあるから。

自分も早くそういうものを見つけたい。
出会いたい。
信じるに至る何かをこの手に掴みたい。
そう思わせてくれる曲です。



7.トット
死ぬ寸前の猫の気持ちを想像して歌った歌。
夏ピッタリの浮遊感溢れるミドルナンバーでレイブ的な音像にもなっている。ゆらゆら揺れるような。
にしても緩急をつける曲としては出色の出来ですね。
本当に綺麗なものを真正面から歌っています。
心洗われる。



8.Birthday
これは直接聴いて欲しいなあ。歌詞があまりにも切羽詰ってる。
小高芳太朗なりの独白ソング、といった感じの歌。
ガレージパンクのような激しいサウンドに
刺激的で感情を剥き出しにした歌詞が載ってる訳だから
これで熱くならない筈がないというか。

もう本当に音楽だけで、ロックだけで勝負してる気がします、この曲は。
驚くほどの細工のなさ。
きっとこれ聴いて救われる人もいると思うな。

ちなみに歌詞で「光の中で」が最後「光の中へ」と変わっているのがなんとも素敵。
これもまた名曲。



9.それでも血の色は鉄の味がした
タイトルの意味不明さが好き。
でもこれ実は結構楽曲を象徴してて。
凍てつくような乾いたリフで押すタイプの曲なんですが
そのサウンドのイメージが丁度鉄のようなサビついた感じ、そして血のように生々しい、ドロッとした感じなんですよ。
これはいいタイトルつけたな、と。

それでもって曲の方は至極シンプルな構成。歌詞の言葉数も少ない。
しかし前述のようにサウンド自体がおどろおどろしいものになっているので、
多少ひねくれた感じもしますね。

「涙が出た
 何の意味もない夜
 本当に泣きたい時にはいつも泣けないのに」

「誰にも見えない歪んだ世界で
 それでも生きている理由が知りたかった」


自身の存在意義を必死に訴えかけるテーマ性も、実に聴き手にリンクすると思います。



10.トライデント
ドラムの石川龍が作った曲。
で、一番ストレートな楽曲です。
流石ドラマー、リズム隊が存分に活躍できる曲を作ってきましたね。
出来ればこのままずっとランクでドラムを叩いていって欲しい。

それでもBメロのマイナーコードからサビで一気にメジャーに切り替わる部分など
テクニカルな面も持ちつつ。
アルバムの中でも特に「がむしゃら感」が強い曲ですね。
とにかく生きよう
とにかく進もう、
という非常に前向きな曲。良いアクセントにもなってる。



11.歌いたい
最後の曲にふさわしくサビのメロディが壮大なロッカバラード。
しかしなんといっても注目すべきはこの歌詞。

「悲しみに単位はないはずなのに 人はそれを比べたがる」

敢えてAmazonで抜粋しなかった方を取り上げてみる。

これは私自身も常に感じてることで。

人の辛さとか悲しさって、人それぞれの心のキャパシティで決まると思うんですよ。
許容できるスペースに差異があると思うんです。
で、よくTVに映ってる様なお偉いさんが
「あなたよりもっと辛い人がいるんだから」と
分かったように言うわけです。


人に睨まれて怯える人もいれば、
人に睨まれても何も気にしない人もいる。

些細なことで、誰もが気にしないような小さな事でどん底まで落ちる人もいるかもしれない。


ある意味、そういう歪んだ価値観に真っ向から対峙するような、果敢な曲だと個人的には思っています。

人の心のかたちなんて、それぞれ個々に違うものだから。




という訳でここまで読んでくれた方、お疲れさまです。
今回は記事の制作にやたら時間が掛かりました。
非常にストレートな作品なので、その分どうやって良さを伝えようかと思いましたが
結局は作品が熱いんだから聴き手のこっちも熱くレビューすりゃあいいじゃん!と思って書きました。
暑苦しさが伝われば成功です。
というか誰か一人にでもこの文章が伝われば本望です。


そしてこの作品を気にいらない、いらなかった方はごめんなさい。

にしてもオリコン46位くらいだったな。
うーむ中々売れないなあ。
一曲くらいシングル切った方が良かったかも?


しかし例えセールスが振るわなくても、本当に良いアルバムだと、個人的には大満足しています。
途中でポップ路線になって離れてしまったという方にもこの作品は是非聴いてもらいたい。

こんなに熱くてがむしゃらなロックンロールがここで鳴ってるよ、と。



深夜に軽くまた更新します。





宙のまにまに 第4話「夜明けまで」

2009-07-29 02:30:57 | アニメ

気が付けばかなり楽しみにしているアニメ「宙のまにまに」。
ヒロインの美星が見る度に可愛く思えてくる。
まあ好みが分かれるタイプのヒロインだとは思いますが。


もう今週は「大好きだよ」ですよね~。
あれだけでお腹いっぱいさ!と思うくらい。
あのシーンだけ描き方が違うとか、ベタだけどいい!
声優の演技も素晴らしいなあ。

この「宙のまにまに」は天文を題材にしてる以外は特に目新しい部分もない、
ベタなシチュエーションや会話がほとんどなんですど
不思議とそれで気持ちよく観れるんですよね。
ベタに徹底してるが故の安心感というか。

しかし一番は妙な人懐っこさが大きいかな。とっても優良な感じ。普通っぽいところが逆に良い。
正統派とも言えるのか。


いきなり話がそれましたが、前半は姫と美星と主人公のトライアングルから。
あまりにも美星と主人公が仲が良い・・・っていうか美星がちょっかい掛け捲るんで
ついに姫がキレて「先輩のことどう思ってるんですか!?」とガツンと問いかける。
それに対する答えが冒頭のアレ。
思わず赤面し動転する主人公だったが、それは友達としての好き、ということだった。

ま、予想は完全についてたんですけど
それでもまさか?と思うくらいのトーンではありましたね。
にしても姫の苛立ちっぷりが面白かった。っていうのは悪いか。


後半はついに海で合宿。
水着姿を披露する・・・と思いきやあくまでも目的は天体観測、ということで
夜にそなえて早めに眠ることに。
なんつうか、星に関しては驚くくらい真面目ですな。
江戸川の行動が一番高校生らしいと思うぞ。軽薄だけど(笑)

その後は絵的にとても新鮮なシーンが多かった。
起きた時、暗闇でロウソクを照らしているシーンとか
天の川が思いっきり映し出されるシーンとか。

こういう場面見ると、天文っていうのは単なる建前じゃなくて
きちんと作品の醍醐味の一つなんだなあと実感します。
芯がしっかりしてる作品なんですね。



今回で美星はそのままだけど、主人公の方はようやく美星を意識するようになりましたね。
主人公の反応を見るだけでも思春期オーラ丸出しで面白かった。
で、姫と文江が後々ここに絡んでくると思うので
その点でもこれからの展開も楽しみですね。

ただ、主人公の朔は明らかに幼少時代の思い出を引きずっていて、美化し始めた印象もあるので
ここから割り込むのはちょっと難しそうだな。


最後に疲れてみんな同じ部屋で寝ちゃったみたいで、それを文江に思いっきり見られたので
来週はそれに関して思いっきり責められる模様。
夜の活動自粛だとか?
面白そう。

にしても水着のカット出ないのかなあ・・・。