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超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

曽我部恵一BAND「曽我部恵一BAND」全曲レビューその1「ソング・フォー・シェルター」

2012-10-19 21:49:10 | 音楽(全曲レビュー)







曽我部恵一BAND「曽我部恵一BAND」の全曲レビューを始めます。
若干曲数多目ですけど、年末には終わるように頑張って一曲一曲、想いの丈を綴ります。
よろしくお願いします。








1.ソング・フォー・シェルター









【この歌はぼくたちの隠れ家のため】


いつ聴いても感動してしまう屈指のオープニング・ナンバー。
冒頭の勇ましいイントロから、この世界の全ての坊や(=「大人になれない大人」)に捧げるような
気高く、優しく、慈しみの感情すら込められているように思える美しいサビの音色
それでいて厳しい現実も感じさせる雰囲気もあったりする
その塩梅もまたリアルだし、
何よりアンセムとしてのクオリティが格段に高い。キャリア全部含めたとしても
ここまで真摯さを感じさせるアンセムはそこまでなかったかな、とも思えてしまう決定打的な一曲。
正に名曲と呼ばれる為に生まれてきたような、紛う事なき名曲だと個人的には思ってます。

また、サビの圧倒的な熱量と温かさの他にも
半分くらいは歌と言うより朗読的な、ポエトリーリーディングの要素を感じさせる
そんな歌い方が印象的で次々と言葉が溢れて耳に伝わる感じも気持ちが良いし
多少アナーキックにも思えるその密度や語呂の合わせ方もまた素敵
所々、結構強引にハメ込んでる感じもするんですけど
その強引さこそが逆に前衛的に聴こえて素晴らしいんですよね。別に激しさを売りにした曲でないのに
言葉も、歌い方も、滲み出るアンセム感もその全てが熱く、非常に温かく聴こえる
共感や最大公約数でなく
聴いた方一人一人に直接語りかけてくるような
そんな「体温」を感じさせる、距離の近さが魅力的な一曲
個人的にはこういう曲こそ大多数の人に届けば良いのに・・・と願わざるを得ない位大好きな曲です。
多幸感と物悲しさが同時に感じられるオルタナティブな感触は是非味わって欲しいな、と。
「自分」を殺す事を余儀なくされ泣き寝入りしている全ての人に届けばいい。







いつからかコンタクトレンズなしじゃ何にも見えなくなったんだね



個人的に、この詞が物凄く好きなんですよね。
ああじゃなきゃダメ、こういうのがカッコいいから、なんて
一方的な価値観を押し付けられ、毒され、元々あった考え方がなくなって
自分が気が付かない間に「価値観の手術」を施されている
だけど、
元を正せば誰だって初めは他人に左右されずに純粋な自分だけの価値観を持っていた筈
多数決や世間体、人からどう思われるかなんて下らないコンタクトを外して
もっと裸のまんまで、
裸眼のままで
物事や価値観の判断が出来たら、そっちの方がより豊かなんじゃないか、と。
大人になるっていうのは、ある種そういう物を取り戻していく作業でもあるのでは・・・なんて
ここ最近はずっと考えてます。
勿論、この曲がきっかけでもあり。
その意味でも私にとってはとても大事な、大事にしたい一曲なんです。






この世界に数多存在する様々な形の「坊や」たち、
勿論実際の坊やではなく、精神的な意味での坊やたち
大人になろうと必死にもがいてる
その上で傷ついたり、空回ったりして、今日も「上手く行かない一日」を過ごしてる
余儀なくされてる
そんな方々に渾身の想いと歌声でもって捧げる
「悲しい気持ち」に対しての鎮魂歌、宛名のないエール。
同時に、聴き手にとってもあの日決別したあの人だったり、最近会ってないあいつだったり・・・
そんな「坊や」たちの顔を思い浮かべて少し優しい気持ちにもなれる、人と人とを繋ぐ歌。
名盤の一曲目には相応しい楽曲だと思います。




ランクヘッド「青に染まる白」全曲レビューその11「明日」

2012-09-28 22:01:49 | 音楽(全曲レビュー)







これで、最後です。ラストナンバー。








11.明日







「明日」っていう日に対するイメージは各々で違うとは考えてますが
仕事で嫌だなあ、とか
考え込んで暗くなってしまった今日の続き、とか
何にも期待してない日、だとか
割と特別な日でもない限り誰もがそこまで明るいイメージは持ってないと思ってるんですけど
ただ、じゃあ何でそこまで息苦しさだとか精神的な辛さを抱えながらも生きるのか?
そんな風に言われれば
やっぱり本心では何かを諦めてないから
口では弱音戯言ばっか吐いてても結局は前に進みたいんだと思う
そういう気持ちに差異なんてないと感じてるから。

必死に何かを頑張っても報われないかもしれない
どんなに気持ちを込めて誰かに何かを伝えても一つも届かないかもしれない
そんな現状に失望して生きる事すら放棄したくなるかもしれない
そういう自分を更に嫌いになってしまうかもしれない

一方で、
何かを必死に頑張れば少しは状況が変わるかもしれない
気持ちを込めたら気持ちを込めた分だけ伝えたい言葉が届くかもしれない
そしたらもう一度自分を信じれるかもしれない
自分を好きになれるかもしれない
半ば結果が分からないからこそ、不安にもなるし逆に期待もしてしまう
ただ一つ、はっきり言えるのは朝が来て一歩踏み出した時点で、「続ける」ことを選択している
何も選ばずにただ流されてるだけの様に思えて「生きる」事は選べてる
だから・・・
余計な事なんて考えずにがむしゃらに生きろよ
這いつくばってでも生き延びろよ
それがお前の選んだ道だろ、と。
そうやって一つ一つ地道に作ってきた道こそが本当の「道」と呼べる
そこに向かえてる事は紛れもない事実なんだから、そのまま真っ直ぐに進め、と。




「届かないならいっそ やめてしまおうとした日も
 叶わないならいっそ 捨ててしまうとした日も」

この歌は所謂結末のない歌で、最後の最後まで報われる事のない歌詞にはなってるんですけど
そういう「痛み」を感じるのは本当に自分が真剣だった証拠だし
嘆くって行為は自分の本心の確認作業でもある
悲しい顔をすればするほど
皮肉な事に自分の心に素直になれる。 そんなバラバラになった自分自身の欠片を拾い集めながら、
傷が冷える夜を越えて、また「何か」が始まる朝を迎えて・・・
何もかもが嫌になる時なんて茶飯事ですけど
結局手元に残ってるのは、
この手にあるのは
今、進むのを止めてない、まだ進む意思がある、そういう事実だけですから。
満たされない心の処方箋であると同時に、そこからまた一歩踏み出すパワーも貰える
正に後ろ向きだけど、姿勢は前向き。そんな名曲に仕上がってると思います。
何度も挫折して来たであろう小高芳太朗が歌うからこそ
(勿論傍目からの想像でしかありませんが)
説得力を持って響く、
余裕のあるミュージシャンには決して出せない類のロックンロール・ナンバーになってるな、と。
ある意味ランクヘッドを総括するようなアルバムだったので、その意味でも至高の一曲です。

サウンドに関して、最後に少しだけ。
基本的にはポップですけど
アレンジは微妙にガレージのテイストが漂ってるので
思ったよりゴリゴリに聴こえます、
ただ、そんなゴリゴリ感もまた気合の表れなんだろうな・・・とか
険しい人生の表現なんだろうか、とか色々と想像させてくれるのもまたプラス
こっちが勝手に感じてるだけですけどね。
でも、
感じるのは自由なので。
和の雰囲気を活かしたリフもまた耳に残る一曲になってます。







今まで自分はどっちかって言えば暗い人間だと思ってたけど、
毎日なんらかの希望を持って、毎日その為に一歩一歩頑張ってて
それだけでも根本は前向きなんじゃないか、だとか
そんな事も考えたりしましたが
散々嫌な気分になっても、努力が実らなくても全然止める気配がない時点で
生きていく事に、自分の場所を作っていく事に関しては多少はやる気なんじゃないか、だとか。
もう少し、自分の事を認めつつこれからも歩んでいこうかな、と。そう思いました。

そんな訳で「青に染まる白」の全曲レビューはこれにて終了です。
今まで読んで下さってた方々どうもありがとうございました。




ランクヘッド「青に染まる白」全曲レビューその10「未来は今ここに」

2012-09-22 23:50:46 | 音楽(全曲レビュー)






一応昨日分(22日)の更新です、遅れて申し訳。今回もまた大好きな一曲です。








10.未来は今ここで







「退屈な毎日を今日もやり過ごす
 缶ビール潰して後は眠るだけ」

歌い出しからして大人の男の哀愁が漂ってますけど・・・
ある意味スパルタローカルズの「ばかやろう」にも通じるシンパシーの描き方で
個人的にも頷きながら聴いてしまうフレーズでもあります。
所謂生の実感なんてものはなく、
あるのはただただ時間を無作為に使って適当に今日を終わらせている作業感、だけ
眠れない夜は眠る為に酒をかっ食らって特に旨さも感じずに
それもまた「作業」の一つ
まずは人間がどんどんと堕落していく様を描いてる訳なんですね、この曲は。



「どうしようもなくて 上手くいかなくて
 正論や嘘に慣れてく毎日」

まあ要するに・・・頑張ったら頑張った分だけ返って来る、というのは幻想なんですよね
他人との折り合いはさほど順調に行かずに、ただただ自分の身だけが擦り減る
何もかもを精一杯、力の限り、とは言うけれど
そんな事をいくら強く念じて生きていたって上手く行かない時は上手く行かないし
失敗する時は容赦なく失敗する
全てが潤滑に円満に進んでいる人間なんて少なくとも私の周りでは観た事が一度もない
どうしようもない時はどうしようもない時で
ただただ落ちて行くだけ
そこで更に厄介なのが正しいだけで何の役にも立ちやしない正論の数々
客観的に、合理的に考えただけの一切の「個」を無視した正しさに焼き尽くされていく心の中
周りに合わせようとすれば合わせようとするだけ適当な相槌は増えて
「自分に似た何か」が量産され
そこに自らの心などは一切存在していない。
そんな最悪の「日常」の中で足掻く内に見つけた一つの答え。




「いつか何もない公園で
 君と話した未来のこと
 いつの間に僕は忘れたんだろう
 忘れてたんだろう」

何もない公園・・・ってところがまたリアルですね。現実という名の壁で悪戦苦闘している最中に
見失ってしまったいくつかの思いや元々そこにあったはずの希望、本心
それらを再びいちから拾い集めて
また自分自身を復活させる「行動」が今から始まる
今から始める
それは決して自分ひとりだけの力なんかじゃなく
きっといつか話した「誰か」との想いや感情だってきちんと付随してる
その頃の純粋な気持ちがまだ残ってるからこそ、ゼロから再び歩いていく決意が出来る。

様々な軋轢や岐路の分断を経験しつつも、
結局のところ「今」の自分を本当に救ってくれるのは
そんな何気ない言葉たちだったりする、
最終的にこの歌の主人公には一切都合の良いことなんかは起こらないし
奇跡だって存在はしない、
だけど、そこからまた立ち上がろうとする決意だけは、確かに得られたものの一つで
それはやっぱり他人から受け継いだものも大きいんじゃないか、って思うと
案外人間も捨てたもんじゃない
一度断ち切ったようでも、残ってる思い出に救われる
それもまた人の強さの一つだなあ・・・と
この曲を聴いて感じますね。
雰囲気たっぷりの感傷ムードの中にも、若さが漂ってる音像の素晴らしさを含め
また新しい名曲が一つ生まれたな、とリアルタイムで聴いた時にはそう感じました。
勿論、今もね。







この曲を聴いてると、年を重ねて経験を重ねた上で濁ってしまった自分だったり
いつの間にか忘れてた大切な気持ちだったり
そういう感情を実直に想起させられてしまうので、正直聴く度におセンチになってしまう曲の一つです
またギターの山下壮さんが作詞作曲だけあって泣きのギターリフの威力たるや(笑
思いっきり感傷のツボを引っ掻いてくるのでその意味でも強烈な一曲。

前のアルバムでもそうでしたけど、山下壮楽曲は良い具合にアルバムのアクセントになっててイイですね
他の曲よりも更に詞も曲も感傷的なのが作品に確かに味を与えていると思います。
また、次のアルバムでも山下壮楽曲があることを願いつつ。



「擦り減らすように失くしてしまった あの日の輝き」

だけど、奥にはまだ純粋さが眠っている、はず。




ランクヘッド「青に染まる白」全曲レビューその9「みゆき」

2012-09-21 23:49:47 | 音楽(全曲レビュー)






【忘れていてくれよ こんな僕のことなど】 (一部抜粋)







9.みゆき








歌詞の中に「僕らは幼すぎた」って言葉が出てきますけど、
これの厄介なのは渦中にいる時は一切気付けず「俺が俺の考えが」ってなっちゃう事で
はっきり言って後から気付いてももう遅いし、あの時には二度と戻れない
ゲームとは違って一度失敗したら二度目がない、というのが現実の厳しさでもあるんですけど。
自分では大人になったつもりでまともな意見を言ってる気分でも
それが原因で軋轢が生まれたって考えると
もうその時点で全然まともではなかった、という間違いに気付くんですが。
本当にそれがまともなら、軋轢自体がそもそも生まれない訳で。

でも、ふと昔を振り返ってみれば
そんな共に居た「誰か」との日々は本当に楽しかった
それが刹那的なものであったとしても
一人じゃないって思えた
安心があった
そんな「誰か」と一緒に夢見た世界は、景色は今ここにある焦燥や不安から救ってくれた。
例え分岐点で別れたとしても、進む道が同じではなくなってしまっているとしても
そこにあった得体の知れない無敵な感覚だけは消えない事実として残る
時折深夜に寂しくなってどうしようもない気分になった時に
ふとそんな思い出の欠片に救われたり・・・
決して一時的なものではなかった。

ライブのMCに拠ると、男特有の昔を延々と引き摺ってしまう女々しさをモチーフに作られた曲だそう
勿論このまんまの言葉ではなく多少自分が噛み砕いたニュアンス的なものではあるんですけど。
でも、やっぱり悲しい思い出苦しい思い出切ない思い出が先には立つけど
それでも、
美しい記憶や幸せな一瞬だってこの胸には残ってるものなんですよね。
そんなあの日の自分が見た眩しさや煌きの感情、そこに付随する哀愁も含めて
一曲という枠の中にドラマチックに収めた、そんな感傷的ながらも沁みるバラッドに仕上がっている一曲。
ライブでは2回ほど聴きましたが、特に千葉LOOKで聴いた方はリアルにジーンと来るくらい素敵でした。
自分はいつまで経っても憶えていてしまうけど、
でもその反面、相手には自分の事なんか忘れていて欲しい、という気持ちは
個人的にはすっごいよく分かります。苦しむのは自分だけで良い。っていう殊勝な気持ちではなく
どうやっても自分を卑下してしまう、そんな感覚的な想い。
情景が即座に浮かんでくるような描写力もまた恍惚的な楽曲です。






【永遠なんて嘘なこと あの時は知らなかった】

口では何とでも言えるけど、でも心はそれに伴えないのが現実。
それでも、その時の「ずっと続くような感覚」だけは、確かにそこに存在していたもので。
それを糧に、今日もとぼとぼと歩いていく。思い出が時に温めてくれるから。




ランクヘッド「青に染まる白」全曲レビューその8「無限光」

2012-09-12 02:51:42 | 音楽(全曲レビュー)






8曲目、残すはあと3曲です。






8.無限光






「次から次へと浮かんで消える 意味のない問いと意味のない答え」

朝起きて、気分はとても良いとは言えなくて
煮え切らない気持ちのまま家を出て
些細な苛立ちや
拭いきれないネガティブな感情は問答無用に心の中に襲ってくる
一難去ってまた一難、その一難を消化したらまた新たな一難の繰り返しで
結局絶対的な不安から逃れられる事はなく
幸せは一瞬だけ、
他人との軋轢はなくならないし
壁は壊せない
仮面はそのままに、不必要な問いと、その場しのぎの納得に何度も何度も溺れて
元々居た場所から何歩か進んでいるようで、実は同じ地点をずっと回っていただけで
何の確証も確信も得られぬままに、また次から次へと浮かんでは消える疑問
なぜ生きるのか、
なぜ死ぬのか
そこに絶対的な答えなんてないのに
考える事自体が無意味で滑稽で時間の浪費に過ぎない
それでも尽きない嘆きへの興味・・・。


この曲は、そんな色々な意味で幻滅するような現状を、現実を
歌っているようで
その実本質的には逆ギレなんですよね。
そんなもん知らねえ、そんなん分からねえ、ただそこにあることを認めるだけ
今ここにある事実を認めるだけ。同時に、そんなクソみたいな目の前の現実に対して
「知らねえよ!」と唾を吐きかけるような、
恐ろしい勢いのアゲインスト・ソング、
アジテーション・ソングになってて。変な考えや下らない悩みは延々と絶え間なく続くけど
結局考えても自分が本当に納得の出来る答えが一切出ないのなら
そんなもんほっといて
現実を認めて生きろ、と。
実際にそういう方向性なのかは定かではないですが
個人的にはこの曲を聴いていると、そんな目の前の苛々が少しだけ霞む気がして
その意味ではある種勇気をもらえるナンバーにもなってるんじゃないか、と
一回千葉LOOKで聴きましたけど
ライブでもめっちゃ盛り上がってて最高でした、
真面目に考え過ぎるのも仕方ない節はあれど、時には潔く放棄して認めて前に進むことも重要だから。
そんな燻ってる気分の時に聴くのが多分一番効果的なのでは、と感じる曲です。
小高さんのボーカルもいつも以上にキレッキレで興奮しますね。





いちからやり直す曲ではなく
ゼロからまた立ちあがるような、
そんなキッパリした男らしさが感じられる激情ナンバー
混沌とした感情をぶっ潰してくれるような痛快さが何よりも最高ですね。