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超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ロスト アンド ファウンド全曲レビューその8 「スピンオフ」

2011-06-07 02:07:52 | LOST IN TIME 全曲レビュー





そろそろ終盤ですね。LOST IN TIME「ロスト アンド ファウンド」全曲レビューその8です。

今回は「スピンオフ」です。これまた絶妙なタイトル。決して本筋ではない、っていう。


個人的にこのアルバムは半年経った今でも新鮮に聴けます。
それくらい自分にとっては大きくて、大切なアルバムなんですねえ・・・。
はっきりと名盤って云える、っていうか云いたいです。






8.スピンオフ


「誰かの物語の中じゃ 所詮エキストラ君も僕も」

これは本当にキましたわ。
ここまではっきり云ってくれるバンドも中々いないんじゃないの?
誰もが口を揃えたように否定したがるその部分を
思いっきり暴いて
傷口を開いて・・・。
ぶっちゃけ聴いてて気持ちの良くなるような音楽ではないです。耳障りも良いとは言えないです。
でもその分、心の中でずっと響いていく音楽とは云える感じると思います。
やっぱり自分はこういう歌の方が好きなんだと思います。
変に信じ過ぎても逆に傷付くだけですから。
現状確認の方が自分には合ってる。
それも歌い手次第なんですけどね。結局は。

自分の世界じゃ自分が主人公で、それで色を塗っていくと。
じゃあ他人の世界にとって自分はどういう存在?っていうと
それは単なるエキストラに過ぎなくて。
そこらへんの脇役ですよ。
セリフ一つしかないような。
そこを改善したくて、飛び出したくて、でも一歩も動けない状態が続いてて。
動いても、両手を振っても、誰にも気づかれなくて。
或いは気づかれても相手にされなくて。
失敗を繰り返して。
どんなに努力しても、願っても他人にとってのメインキャラには決して成り得ない
そんな人間が一体いくついることだろう。
その中でもがき続ける人生。
陸に出た魚みたいに。
海に入ることが出来なくて。


「咲く場所さえ選べない花 泳ぐ場所を選べない魚
 望んで檻に入るひとたち
 それだけ」

椅子取りゲームってのは人生の縮図でもあって
結局一つの椅子には一人しか座れない。
押し出されて
先に奪われて
その度に居場所を失くして。辿り着く事さえ出来ない。現実はもっと広くて、闇のように広くて。
だから何一つ選べないまま人生は風のように通り過ぎていく。
それをただ眺めてるだけ。
それでいいのか?って歌でもあると思う。


「それでも明日へと向かう 脇役のストーリー」

「意味の無い存在なんて 無い」

自分が脇役である。どこにも座れてない。
ってのを認識した上で歩いていくのは辛いです。
マラソン大会みたいなもんですから。
その中盤が延々と続いて
歩くたびにくたびれて。走る力も残ってない。でも、脇役でも確実に何かの影響は与えていて
それだけは確かな事で。
だとしたら、メインになるまでやってみるか
それとも脇役としての人生を全うするか。
それはその人の自由ですけど
それでも、その存在自体には必ず意味があるんですよね。それがわずかだとしても
糸を辿って、コンクリートの上を辿って。それでも前に進むしか方法はない。
後ろに下がる事が出来ないのならば。
その道はその人だけのものですから。
自らをエキストラと認定するのも、本当はメインになりたいと願う気持ちの裏返しかもしれません。
だからただ単にネガティヴなだけの曲でもなくて。

サウンドに関しては、アルバムの中でも激しい方ですね。洪水のようなメロディに
ひんやりとしたリフのぶつかり合い。
後半になって繰り出される叫び。
その熱量自体も素晴らしいんですが、メロディメーカーとしての質も冴え渡っていて
熱さでも丁寧さでも際立ってる、そんな曲調になっていると思います。
Bメロが一番好きだったり。




自分がどういう存在か認識して、それでも歩く。
誰もいない道をひたすら歩く。
その先に何もなかったとしても
失うばかりだとしても
それもまた自分を形成してる要素なのは間違いない。それを受け止めて、自分なりの道を往く。
そういう観点で聴くとある意味決意の歌にも聴こえるから不思議です。

痛みを抉り出すような歌ですが
これもまた必要な曲ですね。



ロスト アンド ファウンド全曲レビューその7 「その名前を」

2011-05-28 01:21:17 | LOST IN TIME 全曲レビュー





LOST IN TIME「ロスト アンド ファウンド」全曲レビューその7、「その名前を」です。

取り残された者たちに向けての、賛歌です。






7.その名前を



誰もが強く逞しく生きれる訳じゃない。
スタート地点こそ同じで、そこから既にある種の競争が始まってて
障害物レースみたいなもので。
そこから逃げられれば
逃げられるだけの力があればいいけれど
それに対してなす術のない人間もいて、最初から力は決まっていて。
無限大なんて言葉を信じ切れるのはそれこそ幼少の時くらいで
ある程度生き抜くと
その力がどれだけのものか
誰と誰かとどこまで差がついてるのか肌で分かってしまう。
そしてそれを埋めることが出来ない。
別のもので埋めようと必死でもがいても
それすらダメだったり
完全に逃げ道が塞がれてしまう。じゃあどうするの?ってなった時に出来るのは
無視を
無反応を決め込むだけ。
そうやって空しいまんま終わっていくだけの人生。

「身体を全部捨てたって 心まで亡くなりはしない」

いっそ無感になれれば
余計な事を考える力すらなくなればいいのに、と思いつつも
いくらこの身体を捨てようとしても
心が拒否するから
止めることも出来ないし
続けることを選ばざるをえない。そう考えると心ってものは厄介なシステムですね。
いくら辛かろうと、何も捨てることが出来ず、その癖何かに期待してしまう。

「両手をいくら振ったって 船は見つけてはくれない」

何かを頑張った?
でも頑張ったから許されるものではない。
それ以外のプラスアルファが必要なのだが
それを持てない人間は
いくら何かを頑張ったとしても、誰かに振り向かれる力はなく
もちろん引きよせる力もなく
結局は他の優秀な誰かに取られるしか術はないのだが
それに対して悲しいと思う気持ちもなく
あるのはただ
「仕方ない」って感情だけ。


「流れ星の数が足りなくなった」

この曲が一番云いたいのはここだと思います。
一番のポイント。
誰もが何かを願って欲しがるけれど
誰もが、って事は
結局そこからはみ出す人間も居るわけで
不幸にもそこに当たってしまう人間としての生
誰もが幸せになれる訳じゃない
裕福な人生を送れる訳じゃない。
流れ星をきちんと掴める人間、掴めない人間、その二つに分かれて
そのどっちかに入れるかの争いの繰り返し。

「穏やかで残酷な朝を迎えた」

「争う事を避け続けてきた その代償にまだ気がつかないのかい」

端的に歌われる痛みを伴うフレーズ。
個人的にはジンジン来ますけど
その分心に残る歌になっているのは間違いなく。正直聴いてて気持ちいいか、って問われればNOだけど
でも耳障りのいい歌だけが総てじゃない、とも思う。
聴き手にとって都合の悪い部分ばかりが歌われてる曲ですが
その分突き刺さる部分も大きく、
傷として残る。
そんな曲に仕上がってると思います。メロディも跳ねてて、その意味でも好きな曲ですね。

に加えて、語呂の良さも大きいです。
メロときっちりハマってる気が凄くするんですよね。
日本語の使い方上手だなっていうか。
そこもまたお気に入りで。
ちょっとひんやりしたリフもまた聴き所です。ナイーヴさ満点の曲です。






「最初からそこに名前があった」

誰一人にすら認められなかったとしても、そこに名前があったのは、確かなことでもあります。
それだけは、絶対に。



ロスト アンド ファウンド全曲レビューその6 「夢」

2011-05-23 22:58:39 | LOST IN TIME 全曲レビュー





LOST IN TIME「ロスト アンド ファウンド」全曲レビューその6「夢」です。丁度真ん中ですね。

静かに、そっと歌われる縮こまった人生の歌。
何かが終わったような感じも受けますけど
その実すがりつくような想いも感じるボーカルで。時折強く鳴らされるピアノもまた聴き所です。
そして最後のフレーズの威力もまた凄い。
生で聴くとより海北大輔の歌力を感じられる曲です。






6.夢




【努力や情熱と余りにも 不釣り合いな報いばかり受けて
 それでもまだ明日があるって事に 希望を捨てられずにいる僕らにこそ】 

【明日は来る】


基本的にやった分だけ返って来る、っていうのはありえない。
どころか返って来るのはほんのこれっぽっちで
絶対に同等ではなくて
損をするばかりで
それでも前に進めるか、って話。夢を観るのはいいけれど、その分却って傷つくならば
それすら抱かない方がマシだ、って思えるのも常ですが
じゃあそのまま腐って死んでいくことを望むか、っていうと。

無様でも、しがみついていたい。
死んだ魚の目でも、まだ生きていたい。
この歌で歌われている「希望を捨てられずにいる」っていうのは
いかにも頑張ってます、って人だけじゃなくて
ギリギリの状態で
フワフワの状態で
それでも立つ、結果的に前に進む人々も含まれていると思う。そこに差異は確実にあるけど
でもだからといって、その人にはその人なりの人生があって。
どんな結果でどんな日常であろうと
踏み止まることを選んだ
それだけである種の賞賛にあたる
そういう人を総てひっくるめて肯定しているような歌。もちろん傷も痛みもあるけれど。


【僕らは いつまで 夢を見る事を許されてるんだろう】

生きてる間はいつまでだって夢を見ていいと思うけど
それが許されなくなるような時があって
それは自分自身の可能性の上限を知った時であったり
そこに向かう力が失われた時であったり。
弱い人間は持続することすら叶わない。

ただ、若干クサいようでも、その意志がなくなった瞬間に終わるんだとしたら
例え無様でも不恰好でも達観なんかせずに
心の奥底で密かに燃やしておけばいいし
断絶されたとしても
道はひとつだけじゃない、それだけじゃない。待つのも立ち止まるのもいいけど
最終的にはそこに向かえる様に
辿り着けるように。

ある種死や別れも連想させるフレーズですけど、生き残れたなら、その分命をめいいっぱい使って。
ペースなんて早くなくてもいいから、亀の歩みでもいい。
夢の形はなんだっていい。
ただ希望であれば。





諦めなければきっと、っていうのはどうにも嘘くさく詭弁に聞こえますが
諦めれば何も生まれないのもまた事実であって
その意味では
この曲を聴いていると、もう少しだけ歩いて見ようかな、的な。
例え許されなくても、認められなくても。
それでもまだ夢を見ます。
それが積もる様に。





ロスト アンド ファウンド全曲レビューその5 「なくしたうた」

2011-05-08 21:01:52 | LOST IN TIME 全曲レビュー






この季節にも合う?LOST IN TIME「ロスト アンド ファウンド」全曲レビューその5、「なくしたうた」です。





5.なくしたうた





ある意味「群青」にも通じる世界観ですが。
色々なものに後悔して
色々なものに挫折して
見たくないもの、聞きたくないものを無為に頭に入れられて
悩んでは立ち直って、立ち直っては悩んで。そんな不毛な生活の繰り返し。
の果てに得たものはこれっぽっち、って形容したくなるほど少なくて
自身に誇りを持てないまま日々だけが無造作に過ぎていく。
必死にしがみついて
必死にあがいて・・・
その様は他人から見たらどれだけ無様に映ってる事だろう。それを想うだけで悲しい歌。
そんな人生を、透明な歌声で、静かに、たおやかに、想起させる、そんな歌です。
静かに染み渡っていくような声と音が魅力的な歌で。


【ドアを叩くのは誰?僕を笑いに来たのかい?】

それは、あまりにも卑屈な言葉ではありますが
実際長い年月を経て
何かを手にした感覚があまりにもないとこういう事を思う時もあったりして
そのうち誰かの目に映る事すら苦痛になっていく。

でも、そこから逃げてはいけないと思う。
この歌自体がそういう歌じゃないから。


【嬉しい事も悲しい事も 何もかも無くしてく僕らは】

生きてると色々なものを失くすな、って思うことはあるけれど
でも、本当は心にいつまでも残る出来事は存在していて
それすら目の前の壁に立つと、忘れそうになるけれど、【それでも】探す事自体は止めない
その壁を登り切るまでは止めない、と。
目指すのは
今目指すのは、
昨日よりもほんの少しだけいい今日。それだけが精一杯で。

結局、何も残らないかもしれないし
総てを忘れるかもしれないけど
【それでも】、その姿勢だけは、その意志だけはキープしていたい。常にそこに向かっていたい。
それはいかにもな気合じゃなくても、死にそうな目でも何でもいい。
何も手にしてないのなら、そこに向かうしか術はないから。




ある意味、辛さのが先立ってる曲かもしれませんが、しっかりと希望も歌われてる所に頼もしさを感じますね。




ロスト アンド ファウンド全曲レビューその4 「勲章と傷」

2011-05-05 11:03:12 | LOST IN TIME 全曲レビュー





今回はある意味でキツい曲です。
LOST IN TIME「ロスト アンド ファウンド」全曲レビュー、その4は「勲章と傷」です。
元々結構・・・リリースの1年前くらいから既に聴いていて、ファン的にも人気は高かったと思う。
The ピーズの音楽みたいな無力感を前面に押し出してる曲ですね。





4.勲章と傷




【一体いつになれば報われるの?】

散々頑張ってきても、こんなもんか、だとか
散々頑張ったとは思えなくて、でもそれ以上頑張る気も沸かなくて
結局のところその間を行ったり来たりしてるだけで。

何かチャンスが、
目の前にチャンスがあったとしても
見逃す、失う、どころか理不尽に折られる。
そんなことの繰り返しばっかで
気づけば傷の自慢をしてて
それって誰に対しての言い訳?
上手く人生過ごせてない理由を過去の所為にしてやり過ごして
だから何?と言われても仕方がなし
どこにも逃げ場がなく
ただ追いつめられて一人で勝手に自爆して終わっていくだけ。

上がっては下がって
下がっては上がって
そんな不毛な感情の繰り返し。得たものは、この手にしたものは、わずか。
それが一体いつまで続くのか
一体いつまでやり過ごさなきゃいけないのか。
こんな悪夢のような日常を。


【いつまでたっても分かり合えないじゃないか】

長い年月を過ごすうちに、分かってしまった。
いつまでたっても分かり合えない。
そんなある意味、当たり前の事実に。
それに気づいてしまった時の悲しさ、やり切れなさ。どんなに頑張っても一方通行な現実と
のれんに腕押しを一生懸命続けている自分。
そこに終わりは見えない。
終わりは見えなくて。


でも、こういう言葉を口にする、ってことはその実「本当は・・・」ってことでもある。
要はまだ諦めた訳じゃない。
悟ってるわけでもない。
ただ、悔しかっただけ。そんな想いを吐き出しただけ。
この世の中が残酷なシステムで作られてるのは間違いないけれど
そんな中でも愚痴を零しながら、結局報われない事を知りながら、それでも生きるあなたは偉い。
この曲で表現したかった事なんて実際は分からないけど
私個人的に感じたのはそんな想いでした。
賞賛でもあり、現実でもあり。

キレイ事を一切排除した世界観はリアルで、痛みがあって。その分届くというのも間違いないと思うけど。






音自体はストレートでザクッとしたギターロック。無機質さも感じます。
イントロの時点で既に虚無とか絶望感があると思うのは私だけじゃないはず。
シビアですが、これもまた今作のグッと来る曲の一つです。