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超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその2「Figure 0」

2011-10-22 01:28:00 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー





THE NOVEMBERSの全曲レビュー通算15回目です。こっちは順調に行けば割と早く終えれそう。





2.Figure 0




初めて聴いたのはライブだったんですけど
その時からぶつぶつと呟くように歌うボーカルと、途中の激しい転調
エキゾチックな雰囲気と
その楽曲の持つ色がはっきり示されていた曲。実際ライブの後に音源で聴いてみたら
その時の衝動のままに音が詰め込まれていて個人的に嬉しかった曲です。
音の臨場感と
和洋折衷な空気が気持ち良い楽曲なんですが
最早ギターロックやオルタナを飛び越えてハードコアな匂いもする割と珍しいタイプの曲なんじゃないかと思います。




【生き延びたい イメージの中】

この詞はどうとでも取れると思うんですが
個人的な解釈だと・・・
想像した現実と
創造した現実があるとして
そこにはやっぱり、その、差異が出来てちゃうんですよね。
こんなの全然違うだとか
思った通りに事が運ばない歯がゆさだとか、そういうのをひっくるめて
もっとイメージ通りに生きてみたい、だとか
更にいえばそんなイメージを引きずったまま生きてみたい、だとか・・・。
現実に屈するのも
現実に逆らうのも個人の自由ですけど
揺れ動くこととそこにそのまま立ってることと、どっちを選択するか、って事ですよね。
生き方に間違いなんてないと思うし
本人がそう思ってるなら別だけど
どう生きるか、何を選択するか、それを決めるか決めないかは本人の自由ですから
そんなままならない現実から逃れて、逃れようとして
どこに行き着くのかは分からないけど
どこに辿り着いたとして、それはもう自分の責任なんですよね。自分が選んだだけ。
それを人の所為にしちゃいけない。
かといってそれを選んだ自分を責めずに、そこにプライドを持つのも一つのやり方ですけど。

なんてのは多少複雑な解釈ですけど
単純に自分が生きていくイメージを思い描いて切望するだとか
そんな意味合いにも取れると思う。
嫌なものを見ても
嫌なものを知っても
生きつづけるイメージだけは持っていたい
生きつづけるイメージくらい持たせてくれ、と。
そんな欲求不満と自暴自棄と切望が混ざって一つになったような、そんな曲です。





何事にも動じない強い人間もいれば
少々の事で心が折れる繊細な人間もいるけど
どっちにしたって
目の当たりにするものは大体同じだと思う。そこで差異も出てくるだろうけど
じゃあそこで何を考えるべきか?っていうか。最終的に浮かぶのはそういう事ですけど
同時にそこに至るまでのストレスを発散するような曲でもありますね。



THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその1「Misstopia」

2011-10-15 22:00:32 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






折角なので、過去作まで遡って全曲レビューしたいと思います。まずは「Misstopia」からいきます。





1.Misstopia




シンフォニックで美しい響きが心地良いノベンバ流のポップ・ソング。
美しいメロディと
イノセント感漂う空気にひたすらに酔いしれる、といった内容の楽曲なんですけど
実際歌詞の内容を眺めてみるとそんな優雅な内容ではなく
むしろ現実の厳しさを思い知らされるような内容で。
でも、そういう悲しい感情や醜い気持ちに人は切なさや儚さを見出したりするもんなんですよね。
って考えるとそういう内容をこうやって耳障りよく歌うって行為は
ある意味的を得てるな、っていうか
そのギャップも面白くて。美しさと醜さは表裏一体なんだなって聴いてると思えてきますね。




【失い方しかここでは選べない】

生きてると元々そこにあった自分だとか
本来の形っていうものが
どんどん削れてきて、気付いたら別人みたいになってて、他人の価値観に侵食されてたり
自分を捨てなきゃいけない状況が多々あったりして
それだけである程度は堪らないな、とか苦しいな、っていうのはあるもんなんですけど。
得る事は少なく
失う事は多く
貰う事は少なく
奪う事は多く。
その中でどうやって生きていくか、っていうのに
人間って言うものは散々悩まされて、苛立ったりして、そんな状況を俯瞰して・・・。
何もかもが良い状況なんて有り得ないだけに
こういう現実的な歌詞っていうのは
一つの指標、一つの真実として聴こえるので、そんな本音が聴こえてくるだけでも個人的には嬉しい。
前述のように、その中でどう生きていくのか?って事が重要だと思います。


【今日の分の罪をみつめてる 生きるのだから】

自分に厳しく、他人に優しく・・・ではなく
自分に優しく、他人に厳しくって人間がほとんどだと思う。自分も含めて。
自分がされたら嫌なことは怒るけど
それを自分がやるのは平気な節があるんですよ。どうしても。
そんな現実に対して・・・
「どうなの?」っていうか
自分で自分に疑いを掛ける事も重要で、それが一つのやり方を生むきっかけにもなり得るし。
誰もが自分に対しては甘いけれど
その実生きていければどんな方法にせよきっと誰かは傷つけてるし、それが跳ね返ってくる事もあるはず。
だから自分の中の悪や罪や最低と向き合うことも、また生きる為には必要なんだと思います。


【これ以上ないくらい 全て剥き出しのまま愛し合う】

これ以上ないくらい全て剥き出しのまま愛し合う、ってどんな状況なんでしょうね。
はっきりとした輪郭は個人的には分かりませんけど
そうやって苦しみを実感して
自らの罪を認めた上で
喜びを掴んで、抱きしめ合う。そこまで考えてようやく苦悩や痛みから解放される。って事なのかは分からないし
このレビューも歌詞の順番通り取り上げてる訳ではないのですが
きっとそういうこと
そういう歌なんじゃないかな、と密かに思ってます。
何かを好きになる
何かを愛する為には、全部を使って自らを晒す必要がある、って事なのかと。
それくらい何かを純粋に愛する自分でいたい、とも思う。




【そこに心があるかぎり】

心をなくしたまま生きても、ただ単に役割をこなすだけの人形に過ぎない。
それなら続行を選ばない方がまだマシだと思う。
そうじゃくなくて、色々考えて、完璧に悩んで、そこから自分の足で歩いて選んで。
心を保つ方法を探して。
ただ与えられてそれを消費するだけの人生なんて、嫌だから。「心」ある自分でいたいから。それだけ。




THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその9「holy」

2011-10-01 13:59:12 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその9「holy」です。




9.holy




この曲は元々下北沢シェルターのライブで聴いた曲で
アンコールで演ってたんですけど・・・それが凄く良かったんですよね。
普通に良い、のではなく
芯から温まる感じというか、音楽の神秘性が宿っているというか。
歌ってる事はシンプルなんですけど
その分詞に力が篭って
聴き手にも大きく伝わってくるし、その情景描写もジワーッと広がったりで
この中では
今回のシリーズの中では最も伝わりやすい曲なんじゃないか、って思います。
だからこっちのラストに収められたのは正解でした。
こっちを後に聴きましたからね。
どっちかっていうとシングルの方から先に聴くのを薦めたい感じですね。はい。

世の中には聞きたくない言葉や
目にしたくも無い事実がたくさんあって
その総てにいちいち触れてると気が滅入ってくるし
気分もささくれだってしまうんですが・・・
それでも、
何か灯火があればいいっていうか
心の拠り所、支えになるもの、生きがい、なんでもいいけど
幾つもの憎しみや悲しみも
一つの光があれば全然大丈夫、それを中和してくれるものがあれば
それでどうにか乗り切れる、
生きていける。
実際はそんなに楽でもないし、そうはいってても色々キツいことも見たくないものも一杯ありますけど
それで気持ち的に嫌な気分になることも、それ以前に自分で自分を嫌う事もありますけど
そんな心情からの解放っていうか
一時的なものでもなんでもいいけど、ちょっとだけ救われた気持ちになるような。
そもそも歌や曲の力で全部解決なんて単なるデタラメですけど
この曲が素晴らしいのは
そのほんのちょっとだけ、少しだけ救われる、気分が楽になる感覚。
個人的な受け取り方だし、意図したものかどうかは分からないけど、でもそんなほんの少し
ほんの少しの積み重ねが
後々の心境に作用してくるのだと思います。
100の嫌いも1の好きで何とかなる、何とかしようじゃねえか、と。
あからさまではなく、ほんのちょっと背中を押すような感覚が心地の良い一曲です。

人間なんて
100人いれば100通りの考え方があって
完全に分かり合えることなんてないのかもしれない
見えてるものだってきっと違う
それは歌詞の中でも示唆されてるとは思うけれど、それでも少しの好きで
ほんのちょっとの同調で。
何とかなるものだと思ってるし、それを信じたい。
そこを見つめて生きていきたい。
素敵を見つめて生きてみたい。
そんな風に思いました。
練り込まれたメロディと、スケールの大きなサウンドの融合。
しとやかで、でも力強い力作だと思います。8分と長いですけど、でもこの長さは必要ですよね。きっと。






新譜の全曲レビュー全部終わりました!
振り返ってみれば、色々と足りない部分も見えてくるし
後々にインタビュー読んじゃったりして、普通に「あっ そういう意味なんだ」って思った部分もあるけど
そういうのを一切頭に入れずに
自分が聴いた印象だけで精一杯掘り下げたつもりなので
少しでも楽しんで、
少しでも伝わっていたら個人的に嬉しいです。元々から好きなバンドであったけれど
最近はより覚醒してるようなイメージです。中学生の頃イースタンやブッチャーズに夢中になってたように
今はロストエイジ、オウガ、ピープル、そしてノベンバと
今のオルタナ勢もまたあの頃と変わらぬ元気さを持ってるんだなって実感する今日この頃ですね。
それがまた嬉しかったり
でもあの頃のバンドも未だに現役だったり、その様子を観てるのもまた楽しいですよね。




THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその8「終わらない境界」

2011-09-28 13:16:10 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその8「終わらない境界」です。残り1回ですね。





8.終わらない境界





タイトルだけ見ると仰々しい曲なんですけど、実際はものすごく静かな曲です。
囁くように歌う小林祐介の声と
音数の少ないゆったりしたアンサンブル
都会の喧騒を忘れて時間の流れをスロウにしたい時とかに大いに活躍しそうな曲。
まあ、それでも歌詞の方は相変わらずシビアと言えばシビアなんですけど
その分優しさも垣間見れる曲で。
素直にいい曲です。



【ところで僕ら同じ場所に暮らしてなかったっけ】

同じ場所で
同じ生活を
同じ教育を
同じものを見ていても
人間ってやつは大幅に違っていきます。
それは変化のスピードっていうものも含まれてると思うけど
ビックリする位違う人間になったり
さっきまで同じ場所に居たはずなのに、気がつけば遠くの方に行っていたり
そんなものはザラです。
そういう現実から目を背けていても、何も変わらず
例えそれが優劣的な違いでなくても
同じ場所に居たと思ってたはずの人間が、自分とは全く違う場所に居たら寂しいし戸惑うし
そんな自分は結局一人ってことにもなってしまう。
気がつけば
人間と人間の間には境界が出来ている。同じ場所に暮らして居て、も。同じものを見ていても。


【窓を閉めたところで光は漏れるし歌は聞こえるし】

そんな現実からの逃避は
許されるようで
許されない、目を背ける事も本当は出来ない。
例え違う境界に居ても
その境界の中の景色は違う境界の人間である自分の方にも届いてくる。
そんな自意識からは逃れられないし
逃れてもいけない、と思う。
境界が違ってしまったなら
人間が違ってしまったなら、その境界で目指すべき所もあるはず。
いつまでも同じ場所に留まっていたら
きっと
本当の意味での再会なんて出来ないと思うから。



【何か見たい夢
 君にはあるでしょ
 僕にもあるんだよ
 いつか行きたい場所】

この部分が重要ですよね。
誰かとの距離だとか
自分の存在価値云々だとか、そんなものに溺れても
結局はさ
あれ食べたいなとか、見たいなとか、着たいなとか
外に出て気分変えようかなとか
こういう人間になりたいな、だとか
そんな欲求はあるでしょ
したいこともあるででしょ
そういうのないの?って。誰がどうとかではなく
自分のしたいことをしなよ
それが叶ったら会いに行きなよ、って。誰の為でもなく、誰と比べるでもなく
まずは自分のために
自分がしたいことを。その延長線上に誰かの境界が見えたなら
元ある場所から移動出来たなら
いつでも会いにいきなよ
誰かに何かを、価値を与えにいきなよ、って。何も同じ場所でなくとも
与え合う事は出来る
一緒に歩く事も出来る。境界だって悪い事ばかりではないんだ、と。それを受け入れるか
そこから先に進むかそうでないか否か。
それを決められたら、そこからの景色だって随分と違うものになるはず、だから。





個人的な解釈の話ですけど
疲れた気分の時や、ささくれだってる気持ちの時に聴くと
何かおいしいものでも食べにいきなよ、とか背中を押してくれるような。
いくら絶望したって、欲求は鳴り止まないのだから。



THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその7「日々の剥製」

2011-09-24 21:07:03 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその7「日々の剥製」です。






7.日々の剥製




一曲目と通ずるようなタイトル。
剥製って言うのは所謂フェイクっていうか本物ではない訳ですよね。
毎日に見せかけた何か
生活に見せかけた何か・・・これは五十嵐隆で云う「生活は出来そう?それはまだ」に通じる部分があります。
生を活かすのが生活というならば
活きてない日々を生活って形容するにはあまりに傲慢で、厚顔無恥で。
活かせない心
活かせない体
前に進まない魂。その全てが偽者と呼ぶに相応しい。
紛い物としての人生を歩んでいる
正に剥製人間。


【今日がまだ終わってない】

あの・・・一日っていうのは自動的に終わっていくもんだと、そんな考えがあるんですけど
自動的ではなく
その分何かが磨り減っていて
それにただ単に気付いてないだけ。
昨日の自分のままで
今日の自分に移行する。
何一つ得るものも、行動も同じなままに移行しちゃってる訳ですけど
それで果たして「今日が終わった」ことになるのか?って。
結局昨日の自分のまま
あの日の自分のまま
無作為に時を過ごしてるだけなんじゃないか、って。それは到底「活きている」とは云いがたい。
昨日の自分のままでは
今日に辿り着く事も、ましてや明日なんて夢のまた夢で。
そんな明日を落としても歩かなければいけない
無造作に進むベルトコンベアーの上を
そこに意志はなく
ただ単に剥製を量産するだけの、それだけの事で。本来なら明日っていうのは落とすんじゃなくて
むしろ掴むものだと思うんですけどね。
っていう事をこの歌は歌っているように感じるんです。
しかもそのテーマっていうのは徹底しているようにも思えるんで。
いよいよZAZEN BOYSとかSyrup16gみたいな、そこまでの領域に入ってきたような感覚もありました。
サブリミナル的にテーマを刷り込むって云うか
それもまた強烈に残るなって感覚がある。
詞を読んでるだけで
ある程度面白いって言うのは日本語ロックとして優れてるな、って直に思います。
その上で韻を踏んだ歌詞のリズムだったり、不穏から解放されるサビだったり
サウンド的な面白さも上々で、また一段表現力が上がったような感覚になる一曲です。


非常階段っていうのは
元々使うべきものじゃない訳ですよね。
そうやって逃げて逃げて逃げて、逃げたその先にあったのは
瓦礫の山、
つまりは無残な現状。
誰でも覚悟を、勝負を決めなければ行けない時はやってくるはずなのに。
夢ばかり観ても
夢には辿り着けない。
その前に本当に「本当」を始めなければ、存在を始めなければ、行き着く先は瓦礫の山に過ぎない。
だから剥製じゃなくて、枯れてなんか居ないで
もっと活き活きと息をして生きようよ、と。
それは無理にじゃなくても
少しずつでもいい。日々を楽しんだり、何かを探したり・・・。そうやって一つ一つ復元して
本当の自分に戻っていけばいい。
それが剥製から抜け出す
フェイクから抜け出す一つの指標になる、はず。






結構ダークな曲調にも関わらず、サビの一気に開放されるメロディはいつ聴いても絶品。
と、共に最後の「本当~」ってフレーズの連発は逆に緊迫感があって
そういった一曲の中でのメリハリも面白い楽曲です。