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超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその6「二ールの灰に」

2011-09-22 21:47:04 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






そろそろ終盤。THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその6「二ールの灰に」です。






6.二ールの灰に





全9曲とは言っても約50分のアルバムな訳で
なんとなくTheピーズの「とどめをハデにくれ」を思い出しますね。
或いはブッチャーズの「yamane」か。
そんな後半の始めの一曲がこの「二ールの灰に」、です。


【正しい国で苦しいわ】

多分、生きてる内に出せる本音ってほんのちょっとしかなくて
それを出すか出さないか
言うか言わないか。
とは言っても、結局保身やなんのかんのありますから、そんな本音なんて
隠しながら
我慢しながら生きるのが常って言うか業って言うか。
ただ・・・だからといってそれが全く出せないのもそれはそれでストレスが溜まりますし
大人になったとはいっても
本当の意味で大人になったとは言えないですから。
そこはもう何かで発散するしかないんですけど。
そういう時に
音楽の中でこういう本音が出てくると、何か嬉しいって言うか
ウソつかれて気分良くなるよりも
本当の事を歌って
そこでリスナーとしてちゃんと会話したいっていうか、そういう欲求があるんです。
そういう観点から聴くと、この曲は合格も合格で
聴いてて色々考えるし
普段その色々は中々口に出せない分、その・・・快感みたいな作用はありますよね。
いってしまえば単なるわがままに過ぎないんですけど
でもそれで救われる気持ちっていうか
無理に本音を隠す必要もないって、個人的には思っているので。そりゃあ気持ちも楽になりますよね。
楽になるっていうよりかは、ある種の鬱屈が解放されるって事なのかな。
それは言いたい放題であればあるほどいいんですけど
その観点から聴いてもこの曲は相当ですね。

入り口は出口で
出口は入り口で。
何かを止めても、放棄しても何も変わらずに
抜けたら入り口が
くぐったら出口が待っているだけ。そんな苦悩だとか戸惑いだとか
そんな感情の渦から回避するのは不可能に近いけど
その中でどう動くか
そんな自分の気持ちの折り合いをどう付けるか。その一つの方法がこういう共鳴による安らぎっていうか
シンパシーの獲得っていうか。何もかも仮初で嫌になったとしても
出てもまた仮初なんだから
もう少しそこで頑張ってみるのもまた一つの手だとか、そんな考えも浮かんだり
感受性に大きく作用してくれる楽曲の一つですね。
アレンジも不穏で
ボーカルもシャウト気味、と、この中では盛り上がりの部分を担うような楽曲です。
まあ歌詞は当然シビアなんですけど、それがもたらす効果も相応なので。





【選ぶか選ばないかだけ】

何気にこのフレーズが一曲目の「リセットボタン押す馬鹿が~」って部分に繋がってるような気がして
そこで出口選んでも、次はまた入り口なんだからしょうがねえじゃねえか、みたいな。
そういう楽曲同士のリンクを探すのも楽しい作品群ですね。




THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその5「37.2°」

2011-09-20 00:44:45 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー







THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその5「37.2°」です。






5.37.2°





アルバムの中でも相当静かな曲で盛り上がるってよりは
寄り添って聴くような楽曲になっています。それは文字通り楽曲の中の世界観もそうなんですけど
自分の居場所だとか
存在意義が分からないからこそ、少しでも良い場所を目指す
自分にとって幸せな道を目指すとか
今までノーベンバーズが歌ってきた事の反芻みたいな詞になってるのが特徴です。
その上で歌声もアレンジも優しく
そっと語り掛けるように歌われるその声は、時折優しすぎてグッとくるくらいで
アルバムでは5曲目と本当に真ん中にポツンと配置されてるんですが
間を取ったっていうよりは
もっと自然に鳴らされている、曲間もスムーズな印象で意外と気持ち良く聴けるのがミソですね。
次の曲が若干激しめの曲っていうのも曲順としては中々インパクトがあって。
そんな自然体の歌声と
詞を堪能出来る曲です。

例えば、今ここに居る場所がいくらいい場所でも幸せでも
そこにずっと居られるっていうのは
まず有り得ない話で
時間が経てば傷も出てくるし膿だって出てくる、いつのまにか追い出される事を余儀なくされる
雨はずっと降ってるし
止む気配もないし
散々って言えば散々な仕組みで出来ている世界なんですけど・・・
どこに行くべきか
どこに行きたいのかも分からない。
そんな曖昧で灰色の、白黒の世界で生きている僕と君。

でも、「彼岸に散る青」じゃないですけど
昔はもっと純粋に
余計な考えもなしに過ごしてた、過ごせてたわけでね
それを考えるともっと他にやりようはあるんじゃないか、とか
あの時あんなに笑って
楽しんで・・・
人生過ごしてたじゃない、ってそんな風に思える結末になってて。それは一種のサブリミナルですよね。
同じテーマに感じても、入り口は全然違うように思える、でも出口は一緒なんですね。
こういうのが個人的には面白いっていうか
やってくれるなあ、と。
気が付けば、少しでも純粋に楽しく生きたいよね、ってポジティヴな考えが頭の中に浮かんだり
ただ憂鬱になる音楽ってだけじゃなく、その先が提示されてるのが彼ららしさだと思います。
そんな魅力が大いに発揮されてる曲。
もはやヒーリングの領域ですね。次の曲は思いっきり不穏な曲ですけどね(笑)。それも良いバランスです。





このアルバムの楽曲も残すは4曲ですね。最後に収録されてる名曲「holy」まで頑張って書いていきますよ。



THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその4「はじまりの教会」

2011-09-17 18:37:19 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその4「はじまりの教会」です。





4.はじまりの教会




「もういいんだ 言ってもいいんだ」

本当は苦しいし辛いし、嫌なんだけど
でもそんな中で本音を言う事って本当に難しくて
誰にも言えない思いも当然の如くゴロゴロ存在しているんですけど
そういう心境の中で
この曲を聴くと本当に救われるっていうか・・・。単純にフレーズの力だけで救われる感覚があります。
その言葉を聴くだけで
スッと胸が軽くなるって言うか
曲を聴いてる中で心に抱えてる色々を吐き出したりするんですね。このフレーズを聴いた後に。
勿論この曲を聴いたからって、じゃあ本音で行こうなんて出来るわけもないんですが
それでも楽曲を聴いてる最中だけはそんな鬱屈から解放されて
心を自由に解放出来る・・・
それって一種の処方箋ですよね。音楽ってそういう役割も担ってると思うから。だからこそ素晴らしいな、って。
素直にそう思える訳です。


「与えるだけ与えられたら
 奪えるだけ奪われていくけれど
 喜んだり悲しんだりしたいんだよ」

希望を抱いたり
何かに喜びを感じても
気付けばそれがなくなったりしてて
考える事も出来なくなってて
いっつも弱者が搾取されてばかりで、そんな現実にウンザリしつつも
まだそれでも
それでも笑ったり楽しんだり喜んだりしたいんだ
感情を表に出して生きていたいんだ。
言ってしまえばそれだけ、それだけの為に生きている。それだけが叶えば、それだけでいい。
そんなそれだけの歌。だからこそシンプルにいいなあ、って思える歌でもありますね。
初めて聴いたのは音源ではなく
下北沢シェルターのライブ時でしたが、この曲はその時から好きでした。
現実でふさぎこんでしまうのなら
せめて音楽の中だけは本音で話しましょう。
その救いを糧に、今日もまた歩いていかなきゃな、って。
処方箋であって
逃げ場ではない。そんな風な事もまた感じる曲でもあります。





いやしかしこのアルバムほんといいです。今年に入ってから1、2を争うくらい聴いてる。
歌詞に関しては随分飛躍しましたね。その成長っぷりも凄いわ。




THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその3「瓦礫の上で」

2011-09-11 19:30:20 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその3、「瓦礫の上で」です。





3.瓦礫の上で




「非常階段」ってフレーズもよく出てきますけど
一方で「瓦礫の上」ってフレーズもちょくちょく出てきます。
直訳・・・って言い方は変ですけど、っていうか間違ってますけど、個人的な解釈だと
今自分が立ってる場所っていうか
それまでの人生で色々と手にしようとして、それでも何一つ手に入れる事が出来ずに
辿り着いてしまったのは瓦礫の上に過ぎなくて
いくつもの破壊や犠牲の上に成り立ってるけど、
それでも欲は止まらず
足も止まらず
まだ遊ぶ場所を探してるだけっていうか・・・。ただ崩れていくだけの思い出の上に立っていて。
なんて風に解説しなくても「瓦礫」って言葉の響きだけで
ある程度感性で予想は付くっていうか
そういうことなんだよな、っていう。
要はただ単に彷徨ってるだけというか、留まる家も見当たらないままに生きているだけ、と。
今ここに立っている場所は瓦礫に過ぎなくて
とても脆くて
すぐに無くなってしまう様な場所で
周りには見回しても何もなくて、何も落っこちてなくて。

【何をしようか、ここで】


【そうさここは辛いんだ おまえはおまえを選びとれよ】

【忘れ方を覚えさせる】

自分を失くすのは簡単だけど
自分を捨てて生きていくのは容易いけど
それでも色々な理由だったり考え方を忘れさせていくような世界で
それでも自分を選び取って生きていく
その選択には意味があり
大切でもある
でも、それって口に出すだけは容易いし、格好も付くけど
それってすごく辛い事で、奇異に見られる事で、まるで茨を歩くような行為であると。

それぞれの元々持っていた名前なんて
きっと誰もが捨てていて
別人のように生きているけど、そんな自分らしさを覚える事は既に不可能になっていて
それを捨てる事だけが上手くなって
利口にはなっていくけど
その分歩き方はどんどんと鈍行になって気付けば自分の足で歩いてさえいなくて
そんなここは辛いねって
自分を選び取るのは辛いねって。そんな仕様の無い現実の歌です。


【いつも通りに しくじって】

何度同じ過ちを繰り返しても
画期的な学習はしない
争いや憎み合いからは逃れられない
同じ過ちを無限ループみたいに繰り返す生き物
いつも通りに
いつもの通りに
まるで決められた周期みたいに
そこには当然虚しさがつきまとって
歩き方すら忘れて
その内誰かの所為にして最終的には自滅していくだけ。
いつも通りにしくじっていくだけ。




淡々と歌われつつ、要所要所で感情を剥き出しにするボーカルや
必要以上に神妙なアレンジ
でも聴き心地はロック度が高くて、何気に聴きやすくもある。けど、この曲は詞の意味を考えると
非常に重たいっていうか
気が滅入ってしまうような曲なんですけど
ここまで根本的な苦しみが直接的に出てるのは何気に凄いな・・・って思いつつ
最後に「早く歩き方を覚えなくちゃ」とそっと救いの言葉?が添えられてるのがまた良い味出してます。
歌い方は半分絶望してるような歌い方でもあるんですけど
ここまで突き落とされるのも
ある意味では気持ち良くもあるな、とも思うんです。

そんな風に歌えるのは、必死に今を求めている証拠だとも思うんで。



THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその2「彼岸で散る青」

2011-09-08 03:15:04 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその2「彼岸に散る青」です。

アルバムのリードトラックになっており、客観的に聴いてもこれは名曲って言える出来の曲、
って個人的には思っています。
もう二度とは戻れない経験の底を思い出すような感覚の一曲。





2.彼岸に散る青





「窓ガラスの向こうが外だとは限らない」

ずっと昔夢見ていた外の世界
まるでおとぎ話の主人公のような目線で憧れた世界は
外というには息苦しく
だからといってもう二度と内側には戻れない。行き着く先でくたばる以外に方法がない。

「呼吸がしにくいのは水の中だけじゃない」

かといってそこから逃げても
逃げ続けた分感情のルサンチマンは降り積もって
外であろうが
内であろうが息がしにくいのは同じで
言ってしまえばどこにも安全な場所なんてなくて
そこで生きるにはエネルギーがいる。
生きるのにはエネルギーが必要。その量で過ごせる幸せも不幸せも変わってくるんだとは思う。
息を完璧に出来る人間と
そこからはみ出してしまった誰かとの差。
理想の外に出れば苦しく
理想の内側に入っても同様に苦しい。
あの日思い描いたような世界なんて気付けばどこにもなかったよ、という
顛末を知るようになった現在の話です。
そこでする笑顔ですら
添加物にまみれている。素直さは遠い昔に置き去りにしてしまった。


この曲で秀逸だと思うのは
でも昔はそうじゃなかったよね
昔はもっと素直に、自分らしく生きれていたよねって
そんな思い出をフラッシュバックさせてくれる部分にあると思うんです。
どんどんと小難しい部分に向かって入ってる自分
でも振り返れば
あの人もあの子もどっかの誰かも
同じように笑って同じように息してて。あの頃は確かにそうだったじゃない、って
そっと肩を押して
気持ちを楽にしてくれるような、精神安定剤のような一曲です。
単純な癒しでもなく
勿論応援歌なんかじゃない
この曲の見せてる表情はそれほどリスナーに対して優しくも譲渡もしてない
けど、そんなもっと純粋だった頃の気持ちを走馬灯のように思い出させて
それを今に還元しようとする
その流れは単純に元気ってものに近いような何かが溢れ出てくるし
メランコリックな感情も大いに刺激される。
それはきっと、この曲が答えを全く出してないからこそなんじゃないか、とも思います。
ただその情景を描いてるからこそ
聴き手が自由に答えを選べるような余地があって
そこが何より素敵な部分だなって思うのです。結論を出すのではなく、投げかけるだけっていうか。
そんな小林祐介の美学が大いに発揮されてるような、歪な美しさのある楽曲だと思ってます。




この曲はアレンジもすっごく良くて
別世界や記憶の淵を彷彿とさせるくらいの音の広がりと想像力を刺激する幻想感で
楽曲全体が覆われていて、
その音響系とオルタナを正しく融合させたような音世界にもまた痺れてしまう一曲になってます。
世界観に吸い込まれる確率は高いと思います。