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超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその7「Gilmore guilt more」

2011-12-13 23:55:30 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー





THE NOVEMBERS全曲レビュー通算20曲目「Gilmore guilt more」です。





7.Gilmore guilt more




歌詞カードはまるで呪文のように綴られた不可思議な文字が並び
歌自体も呪文のように繰り返しフレーズがつぶやかれる、この作品の中でもかなりの個性派楽曲。
だがしかし、よくよく確認しないまでも
その言葉は日本語と英語を織り交ぜたオーソドックスなものだという事に気付きます。
この発想こそ正にオルタナティヴ的な発想だと個人的には強く感じますね。

途中までは前述のように、
呪文をつぶやいているかのように割としとやかに歌われているのですが
途中からトチ狂ったかのように絶叫するパートがあって
その構成もまた
ある意味リアルというか、
普段は真面目だからこそ突然そのタガを外したくなる、そんな人間らしさが表現されていて
フェイクではなく現実性を帯びて受け取る事の出来る楽曲になっています。
そんな不穏さがめいっぱい表現されてるこの曲は
何かの儀式に使えそうなくらい
エキゾチックかつ妖艶なムードを途中から大きく放出し、
その非日常的な雰囲気に浸るのが面白いくらい快感、そんな抜けの良いじっくり聴けるオルタナ・ソングと同時に
このアルバムの中でも一つの軸として後半に繋げる役割があるような
そんな重要な楽曲だと個人的には感じます。
【次から次に損なわれていく】
楽観も無責任も存在しない、現状に対しての警報を鳴らすような一曲。
だからこそ聴き手の胸に本気で突き刺さるような痛みと包容力がある、そんな曲。

本気で生きていても、結局は開かないドアばかりで
そんな中で自分を見失い
何度も嘘付いて
その度に大事な何かがこぼれ落ちて・・・そんな現状と過去に対する懺悔や抵抗の意味合いがあるような
そんな曲にも感じています。その現状を受け入れたならば
待っているのはただ損なうだけの日々。
失うだけの日々。
だからこそ、開かないドアばかりの現状を嘆く事は許されても
その現状に慣れる事だけは許しちゃいけない。
それだけは受け入れるな。
一見ネガティヴにも思える曲ですが、その根底は本心からのサイレンのような気がする。
そんな音も歌詞の伝え方もノベンバ随一にユニークだなあ、と思える
だけどそれがむちゃくちゃ格好良くも感じる、そんな一曲です。




リリースツアーの時1回だけライブでも聴きましたが
小林祐介のテンションが面白くて、
スピーカーの上に登って猿みたいに叫び倒すっていう
今から考えても非常に破天荒なものでした(笑)。でもその光景は絶対に忘れる事は出来ないな。



THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその6「Sea's sweep」

2011-11-21 21:59:07 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






THE NOVEMBERS全曲レビュー通算19曲目、今回は「Sea's sweep」です。






6.Sea's sweep




【「心だけで生きていけたら身軽だわ」と君は僕に話す】

本当にねえ?
いつもそう思ってますよ。
下らない足の引っ張り合いに、
下らない自意識に。
そんなもの全部捨てて、剥き出しの状態でいられたらどんなに楽なんだろう
どんなに生きやすくなるんだろう、って実直に思います。
誰かに恨まれ
誰かを憎んで
挙句の果てに側には誰も居なくなって。その繰り返し。傷のなすりつけ合いのように思える時もある
そんなこの世界に対する一つの本音、のようなもの。
それは一言で甘え、
単純で浅はかな願い。だけど、心で呟くだけなら、願うだけなら、それはそれで意味のある行為にも思える。
もちろん別の意味では空虚で夢見がちって事になるんでしょうけど、思うだけならタダだから。

この身にまとわりついた何もかもを今すぐに捨てて、心だけで生きていたい。
心だけで会話したい。
そんなものは、結局の所は絶対に無理なんですけどね。

【見える目がない 聞こえる耳がないんだ 口はあるけど】

生まれた時から目も耳もあるけど
表面上の能力だけで
しっかりと見据えられる、物事を判断出来る目もなければ
何があっても動じない、常に冷静沈着で居られる耳もない。ただ、そこにあるだけの機能。
それは勿論幸せで、嬉しくて、自分の為にはなる機能ですけど
心に作用するかっていうと
どうしても足りなくて、いつだって不安定なまんま生きていて。安住って言葉は辞書にはない。
あるとすれば、ただ愚痴や後悔を垂らすばかりの口ばかり。仕様のない状態。
でも、
この詞も往々にして反面教師っていうか、現状確認要向上の為の身を切って出したフレーズなんでしょうね。


【目をそらすなよ】

心の中を揉んで
逃げるも願うも、騒ぐも自由ですけど
いつか向き合わなくちゃいけない時は色々来るもので
そんな現実から
混沌とした世界の中心から目を反らすな、と。逃げるな、と。
っていうのは
別に強制的に差し込まれている訳ではないと思うんですが、結局はそういう事なんでしょう。
どんな答えを出すにせよ、いずれ向き合うその時までは
逃げてでもいいから生き延びて、と。
生き延びたその先に、答えを出さなきゃいけなくなる瞬間は必ずあるのだから。

【とり残されたのは世界の方さ】

無理して世界のルールに従わなくても良い、
流れに沿わないでもいい。
どうしてもキツい時には、いっそ世界から離れて自分らしく生きるのもアリだ。
それは決して誰かを憎んで、世界を憎んでした事ではなく
あくまで
自分の道を自分らしく走る為。ただ、心だけで生きられる事を願う為。その為の自己防衛と
自己回避、だけど―


【小さな部屋の中で僕らは 来るべき朝を待ち焦がれている】

未だ全部諦めた訳じゃない、
反らした訳じゃない。
結果的に空虚で何かの殻に閉じこもったとしても、そこで道は終わりじゃない。
その殻の中で何かしら掴めれば、成長出来れば、それもまた一つの生きる手段だと思う。
それを選ぶか選ばないか、だけ。
それだけ。
その時が来るまで、準備をして生きるのも、また一つの生き方ではあると思います。見極めるのは自分自身、だ。





この曲は、個人的にはこのアルバムの中でもトップクラスに好きな曲で
気持ち的に辛い時が来ると
「心だけで~」のフレーズがよく頭に浮かぶんですよね。
シンフォニックで荘厳な響きと、馴染みやすいメロディで丁寧に紡がれる歌。
作中で出ている通り
心だけで、心で歌ったような、ノベンバ渾身のアンセムの一つ・・・かどうかは実際の所未知数ですが
生で聴いても相当のカタルシスがあることは確かだと思います。実体験。また聴きたいですね。
処方箋としてはこれ以上ないってくらい最適な一曲です。




THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその5「パラダイス」

2011-11-17 23:46:08 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー





THE NOVEMBERS全曲レビュー通算18曲目です。「Misstopia」の5曲目「パラダイス」です。





5.パラダイス




この曲はライブで初めて聴いたんですけど
その時から歌詞が印象的だった曲です。とはいえ、ちゃんと意味を理解したのは音源になってから。
世界に閉じこもって失うものもあるけれど
世界から飛び出して失うものもある・・・そんな内容の詞に思える曲。
そんな経験に対しての復讐を楽曲の中で行っているような曲なんですけど、
ここで重要な事は
諦める事を示唆してない事ですね。確かにそんな人と人との関係性の中で奪われたもの、失ったもの
その逆も然りで色々と軋轢も後悔も、痛みも悲しみも生まれたけれど
搾取されるのはいつだって弱者側だけれども
そこで跪くのではなく
むしろそこから好きなように、やりたいようにやればいい、っていう。動くのを止めたら、
それはもはや死ですから。もっと考えて、悩んで、その上で遊んで。
世界や街に置き去りにされたのならば
こちら側が逆に世界や街を置き去りにしてしまえばいい。
その選択も考慮も、全ては自分の心と手次第で。そんな真摯で必死なメッセージと共に
繰り返しのリフや純真なメロディが光る、
ノベンバの重要アンセムの一つ。だと個人的には感じる一曲です。


【愛 やすらぎ いたわり 平和 希望 どれも祈りみたいでしょう】

誰もが平穏な日常を望んでるけれど
実際本当に平穏な日常を過ごせてる人なんて一握りしかいないと思う。
信じては裏切られて
不意に大切なものをなくして
どうでもいいいさかいに巻き込まれたり、自意識の闇で苦しんだり
そんな穏やかな感情のまま生きれる事なんて
それこそ夢物語なんじゃないか?とも思いますけど
でもこういうフレーズって
本当に純真に静かに、感じたままに暮らして生きたいって思うから出るフレーズであって
決して諦めにはなってないんですよね。最初から諦めてるのは
やってないのと同じだから、
少しでも、より良い暮らしを、より良い感情を、よく考えて自分の手で掴み取ろう、と。
そんな現状をありのままに描いた後で
その後の行動を示唆させるような・・・って考えるとこれも一種のアジテーション・ソングなのかもしれません。
何度精神の淵で彷徨っても、確かに望む事柄がまた残されている、と。まだ頑張って遊べるはずですから。





悲壮感を漂わせつつも、その実描いているのは確かにその先のこと。
だからこそそんな悲惨の中にある美しさが際立つ、そんな一曲でもあると思います。
それが何よりリアルで。



THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその4「pilica」

2011-11-07 23:59:24 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー





THE NOVEMBERS全曲レビュー通算17曲目「pilica」です。





4.pilica




この曲は、「Misstopia」の中でもかなりポップな内容の曲なんですけど、
その割に詞の内容を読むと結構考えさせられる部分があったり
でも最終的には
やっぱりポップで聴きやすいな、って印象が勝る曲です。パッと見て、これは生と死をイメージさせる詞にも
考えようによってはなってると思うんですけど
例えば
誰かの痛みを請け負おうとしたり
自分も一緒に、って思っても
結局人間は人間でしかない、その差異や価値観、感受性を埋める事など到底不可能ですから
ひとりの痛みは完全にひとりのもので、それを一緒になんていうのは幻想なんだと。
何故ならば、ただ単に「その気になっているだけ」で
実際痛みも悲しみもない訳ですからね。
よしんば悲しいとしても、それは自分の為に悲しんでるのと同義で。だから、そんな幻想は捨てて
個と個のまま分かり合おうといいますか
通じ合う部分で。
感情で理解不能ならば、せめて肉体で、一緒に居るだけで、それが何よりの支えになる。
そんな風にこの曲を聴いて感じるんですけど、そんな個人的な解釈を外しても
キレイで、刹那的で、日本語の美しい響きが素敵に聴こえる一曲です。

この曲は割りと分かりやすいので
シンプルに聴いて
シンプルに感じるのが一番ですね。オルタナではなくJ-POPの舞台に出しても大丈夫そうな、
それくらい聴き馴染みのいい曲、って事でライブで演奏される機会も多いですね。
最近行った対バンライブでも毎回演奏されていた曲でもあります。
そんな決めフレーズこそないけれど、
「Misstopia」に継いでこのアルバムではアンセム的立ち位置にいる曲ではないでしょうか。
間奏のメリーゴーラウンドを彷彿させるような遊び心のあるアレンジも心地良いですね。




一概にポップな曲、とはいってもオルタナ的感覚を養ったままポップにアプローチしているのが素敵な楽曲。



THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその3「dysphoria」

2011-10-29 04:33:50 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






THE NOVEMBERSの全曲レビュー通算16曲目です。苛立ちの頂点に到達したかのような一曲。





3.dysphoria




非常に不穏なアレンジと不気味に、時に怒りを垣間見せながら
暴力的に進んでいく展開が印象的な楽曲。中々におどろおどろしい雰囲気なんですが
その分インパクトも十分
聴き応えも十分。
深く深く内省に潜った楽曲の雰囲気は音楽マニア的には相当に心地良く、
また初めて聴く人にはある程度の衝撃与える事はうけあい。
ミドルなのに多少踊れる要素があるのも素敵ですね。


【次から次に心を吊るし 胸が壊れそう】

これは自分とも他人とも捉えられる歌詞ですが・・・
自分の中の大切な感情や
本音を
かくして
押し殺して
何度も吊るし上げた結果、心が耐えられなくなる、っていう。無理をすれば無理をするほど
心は軋んでいくし、そこで我慢をすれば余計に。大事なこだわりを何度も捨てるが
その結果本当の自分がどこにも居なくなってしまう、っていう。

或いは、人を裏切ったり、嘘付いたり
自分はそう思ってないのに
無理に心を合わせに行った結果、心が軋んでしまう事もあって。
こういう歌詞って眺めてると不器用だし、考えすぎだよって部分もあるんですけど
世の中早々器用に生きれる人間だけじゃない訳でして・・・。
そういう人間の心情を見事に描いてるなー、って
そう感じられる曲がノベンバの曲には多い気がしてます。実際そう思ってるし。一部は。


【見てよここじゃ生きれないし花も枯れて】

こういう部分はシロップの「Sonic Disorder」に通じる部分があるかも。
勿論この曲を作った時点では聴いてない訳ですけども(今年に入ってからハマったらしい)、
自分が今立ってる場所や
生きてる場所では
いつの間にかボロボロになっていて、可能性すらもないなって思えるくらい
空っぽの状態でそこに立っていて・・・
それを認識してしまった、そうやって嘆かざるを得ない状態まで陥ってしまった。
それは最早生きるって目的や情熱に対しての諦めな訳ですけども。



【ねぇ 棄てるだけ?】

そうやって自分の痛みや諦めを認識させた後で
じゃあお前はそうやって自分の感情や希望を棄てて
存在すらも棄てていくだけなのか、と。
それはもう思考停止。
思考停止って事実があるならば
そこから破棄されるも修理するかも総ては自らに決定権がある訳で・・・
これぞ正に
「選ぶか選ばないか」、だけ。それだけ。
嘆くだけ嘆くような曲に思えて、最後に強烈な問いかけを残してこの曲は終わる。
それも、この解釈が全てだとは思わない
それこそ誰もが好きなように受け取る事の出来るメッセージといいますか。それもまた自分で考えて
その中で意味を選択するべき、ってメッセージなのかなあ、って彼の詞を読んでていつも思いますね。
ただ無責任に問いかけるのではなく
そんな状況や葛藤を認めてくれた上での問いかけ、っていうのが
この曲の大きな魅力なんじゃないかな、って思います。





【物語は残り僅か】

何気に、去年の段階からこの生命や活動はいつ終わってもおかしくない、っていう
そんなフレーズを入れ込んでいたんですね。そんな先見性も光る楽曲です。