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超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

THE NOVEMBERS「paraphilia」全曲レビューその1「philia」

2012-02-17 22:05:13 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー





昨年から続いてるTHE NOVEMBERS全曲レビュー、今回から「paraphilia」の楽曲に突入します。
まずは一曲目の「philia」から。通算25曲目です。





1.philia




この曲はライブでもお馴染みの一曲ですけど、非常に洗練されてる美しい一曲で。
シンフォニックなサウンドの響きと、それがもたらす神秘性、漂うような趣のあるボーカル、
その総てが綺麗に調和している正に恍惚とも言うべきナンバーで
何度聴いても飽きない質の高さと、
スッキリとした聴きやすさなんかもあったりして、割とノベンバってバンドを知るには最適の一曲かもしれません。
この楽曲から積極的にバンド以外の音のアプローチも広がってきた気がするので
その点でも一つの転機作としてファンの間ではお馴染みなんじゃないかと。個人的に思ってる事ですが。

また、各々の中にイメージを植え付ける楽曲というか
映像や景色が浮かびやすい良い意味で抽象的なサウンドとフレーズになっているので
聴いてる間に様々な情景が聞き手の中に浮かんでは消えるような、
イマジネーションを刺激する楽曲でもあると思う。
その音の懐の深さを考えると、っていうか感じると、更に素晴らしい楽曲として心に残る気もして。
人間の青さと、憧れる白い感情が上手く交差した代表曲の一つなんじゃないかと思います。
実際良く聴いて想像して楽しんでる楽曲の一つでもありますね。名曲です。




【意味を失い 耳を失う】

誰かと誰かが分かり合うのって
剥き出しになるのって、
出来るようで実は出来ないんですよね。本音だ裸だって言っても、それは本音でも裸でもなく
その水面下では隠してる感情が常に蠢いていて裸のようで裸じゃない。
そんな状態のままどこまで純粋にいられるんだろうか、って
そういう事をこの曲は歌ってるような気がします。
その内に本音は馴れ合いに変わり、
意味を失って
それに気付けるような耳も失って気付かないフリばっかして
誰かと誰かの関係性は永遠に止まったままで。
だからこそ、
その秒針を抜け出したい、止まった時から先に進みたい、気付いた時にはそういう関係でいたい。
そんな風に互いが互いを救う関係を必死で求めるような要コミュ二ケーション・ソング。
人間らしい感情をいかに純粋に鳴らせるかって部分に神経が注がれている気がして
その意味でも過度に、でも誠実にストイックな楽曲だなあ、と。


【これから全ての出来事を忘れにいくけれど 生まれ変わりはしないかもしれない】

人間違う生き物同士、衝突って事柄からは絶対に逃れられない
元々のキャパシティや価値観が違うのだから
何度やり直し、仕切り直しても
結局本当の意味で分かり合える事は、一つになれるなんて事はないのかもしれない
でも、逆に言えばそれを承知で再びスタートラインに立つって意思を表示しているとも取れる訳で
楽観でも妥協でもない、真に現実を見据えたリアルな言葉だけが置かれていて
その真摯な言葉選びにも感銘を受ける一曲でもあります。
とはいえ、ノベンバの詞は聴き手によって解釈が違うと思うので、私なりの今現在の答えではありますが
例えこれが正解ではなかったとしても、感じた事が全てではあるので、やっぱり素敵な詞だなと。
何気に後々の「再生の朝」にリンクする部分もあるように思えるそんな一曲でもあります。






ライブで聴くと、正にイントロの時点でハッとするような即効性がよりはっきりと鮮烈に響きますね。
特に中盤の仕切り直し時に使われる事が多い気がする。
何気に生で聴くとゆらゆらと踊れちゃう一曲でもあるかもです。大好きな曲ですね。




THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその11「tu m'」

2012-02-11 00:39:35 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー





THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその11「tu m'」です。通算24曲目です。





11.tu m'




この曲は他の楽曲と比べるとボーカルもはっきりと聴こえないし、バンドサウンドでもないしで
割と異色の楽曲と言うイメージなんですけど
今回改めて単体で聴いてみたら、意外とこれだけでも十分聴けるなって印象もあって。
アルバムの締めにはふさわしいけど、単体で聴くようなキャッチーさはないんじゃないかって
そんな風な感触もあったんですけど、この時期にも合うしまるで雪がシンシンと降るように綺麗な曲だなって。
敢えてぼかしてるボーカルも儚さの要素を助長していて逆に面白いんじゃないかと。
勿論アルバムの最後の曲としては聴き直す前から最高だと思っている一曲で。



【どんな風に泳げるかがわからないから すぐに溺れてしまう】

実際に試してみないと自分がどういう人間でどういうことが出来るのか、なんてのは
正直分からない訳で、
だからこそすぐに迷って混乱して失敗して
人生なんてその繰り返しであって。
これでいいんだ、って
そんな事を考えながら生きてても
その実もっと自分にとって向いてる生き方が他にあるかもしれない、
それを見つけてられないだけかもしれない。
こう考えると
今自分がやってる事すら無駄に思えてきて困るんだけど
結局はその中で必死に泳いでいくしかないっていう。
それをどうやって判断するかと言えば、


【心で?】

【心で】

心があるかないか、の違い。
心を遣えてるか、心で生きれてるか、心から素晴らしいと思えるかどうか。
言葉よりも心を持って動くということが大事と言う一つの考え。
ノベンバーズの歌詞に良く出てくる少しでも良い景色を
昨日よりも少しだけ良い日常を。
自分の心を殺すな
幸せを捨てるな、っていうメッセージはこの曲でも確かに息づいていて、その表現に心が少し軽くなる。
言葉と心が離れないように、心が言葉から離れないように。その作業こそ
生きてく上で最も大事な事柄の一つなのかもなあ、と。
なんとなく、そう思える
これまた真摯だと感じる一曲です。
一度だけライブで聴いた時も、想像以上に丁寧に演奏していた記憶がありますね。




改めて「Misstopia」の楽曲を一曲一曲レビューしていて、
これは名盤だって思いは更に強まりました。
読んでくれた方には感謝
この作品を作ってくれたメンバーにも感謝です。そして、次は「paraphilia」の全曲レビューに続きます。
もし興味がおありでしたらまたその時に再会出来れば幸いです。それでは、〆。



THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその10「ウユニの恋人」

2012-02-02 21:34:37 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー





THE NOVEMBERS全曲レビュー通算23曲目「ウユニの恋人」です。





10.ウユニの恋人





いかにもなオルタナ・ソングですけどそのいかにもな感じが非常に心地良いですね。
オルタナティヴロックの王道といいますか
イメージを忠実に貫く音。
ゆったりとしたリズムにジワジワと響く絶品のギターリフ、大味に思えて実は繊細なアンサンブルと
イントロの時点でグッと来るほどにバンド演奏の密度が異様に濃い曲なんですが
メロディ自体に関しては大衆にも通じるくらいにポップ、という事で
聴きやすいと言えば聴きやすい、
ノベンバの中でも入り口の広い歌モノになっているな、という印象で好感触の一曲。

ただ、そんな素晴らしいサウンドの中でも詞は異様にシリアスだったりするので
そこを考えるとやっぱりマニア向けなのか。
とはいえ非常に人間くさい詞でもあると思いますけどね。誰でも分かる感情を丁寧に歌ってる印象。
だからこそ、音も詞も熱量を込めて奏でられてるからこそ、自分の中で名曲として輝く、そんな曲でもあります。
部屋の中でその音の湿度に延々と浸っていたくなるような楽曲ですね。




【ねぇ それは心じゃないんだよ ただの役割なんだよ】

このフレーズが本当に好きで・・・。
思ってた事を的確に言葉にしてくれた感じ。
自分を制限して
自分の心に嘘をついて
自分をどんどん削っている内に
人間ではなくただの人形になっていたという事実。
本当にしたくてしたいことよりも
本当はしたくもないのにしなきゃいけないっていう強迫観念の方が勝っていたとしたら
それはもう本当の自分の死を意味する。そうではなく、心で考えて心で選んで
その意味や意義を考えて自分の足で動かなくてはならない。
密かなメッセージ性に胸を打たれたりするのがノベンバの良さの一つではあると思う。
役割をこなすのも悪くないけど、それをごまかしたり認めないのはただ単に苦しいだけだよ、っていう。


【サナトリウムを出よう ここじゃ息がつまるだけ 僕らは】

サナトリウム=療養所、ですけど
これは例えでもあるんでしょうね。
何かに傷ついて
何かの殻に入っていても気持ち良いのはその時だけで
その実自分を追い詰めてるだけに過ぎない、っていう。
自分だけが気持ち良い世界は
自分だけの心を消耗していく。
その内気持ち良さすら失くして息苦しくなっていくのなら、既にサナトリウムとしての役目はない。
その前に外に出ていく勇気が必要だという話ですね。役割を捨てよう、と。


【罪を免れる事が出来なくても 迎えにいくから】

自分を殺さずに
自分を閉じ込めずに
そうやって自由に生きていけば
罪も罰も重ねるけど
誰かを自然と傷付けもするけれど
そこからは絶対に逃れられないと思うけど
たとえそれを選択したとしても
幸せになる権利は誰にでもあって、その幸せに負い目を感じる必要もなくて。
どんな人間にも朝が来るのと同じような仕組みで。


【君を愛しているだけ】

結局はシンプルに立ち返る、ということ。
目的を見失わない。
その為に自分を犠牲にはしないけれど
あくまで自分の愛するものの為に、その為に生きるという選択。
それもまた生き方の一つだと個人的にも思います。
同時に諦める必要性もどこにもないなあ、と。
考えれば考えるほど面白いです、ノベンバの歌詞って。だからこの企画も持ってるんだな。と、改めて。





今回は取り上げませんでしたが、Cメロの色々な意味でギリギリな感じもまた絶品、と共に
シンパシーって観点で勇気にもなりえるような。そこもまた注目ですね。
ライブで聴くとより沁みるナンバーでもあります。やっぱりイントロはどこで聴いても至高ですね。



THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその9「Sweet Holm」

2012-01-22 20:09:17 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






最近ノベンバを聴いてるとテンションが上がると同時に泣けてきます。それは何故なんだろう。
それを探る為にやってるのかもしれません。今日の一曲は大好きな一曲です。






9.Sweet Holm




ライブで演奏される機会は自分が行った中ではあんまりなくて、割とレアかと思われる一曲。
でも個人的にはめちゃめちゃキャッチーで、ヘビーで、そしてノベンバらしい曲だと思ってるので
正直定番曲にも負けないくらい威力があってかつ重要な曲ですね。自分にとっては。

ノベンバの中では御馴染みシャウト系の曲ではあるんですが
叫び自体が綺麗なサビになってて
しかも大きな叫び一発って構成
そこはかとない儚さは薫ってるしで他のシャウト系の曲と比べても差別化はされてるイメージで
かつ負けないくらいのインパクトと即効性を感じさせる曲で。不穏なリフもまた絶品。

徹底的に汚く叫び倒す曲も良いんですけど、この曲は美しさの中での咆哮といいますか
美麗さの中に存在する醜悪って印象のナンバーで
それはこの世界そのものだとも思えて。
だからこそシンパシーを感じて、ちゃんと自分の中に染み渡っていくような。そんな弾けて沁みる一曲ですね。
叫ぶパートの爆発力と解放感も凄まじいのでモヤモヤしてる時や気持ち虚ろな時に聴くと最高です。




【We're Chained】

これがサビでかます一発。シンプルですがグサッと突き刺さる言葉。
自由なようで実は自由とは掛け離れた世界
出れば叩かれ
引っ込めばなじられ
最終的には自分で自分の居場所を作るしか選択肢がなくなってくる。だから「作ろうよバリケード」、と。


【画面に心を求めるなよ】

でもこれも正しい言葉ですよね。
逃げてもいいけど
そこに甘えてちゃダメになっていく一方だから。
虚像は虚像でしかない。
オアシスならいいけど
そこが本領になってはいけない、という警告。
自分の場所は作るべきだが、そこに入れ込み過ぎると戻ってこれなくなるよ、というメッセージですね。


【耳から口から鼻から目から 麻酔の綿を詰められ 歩き方を忘れてしまったから】

自分らしさの去勢の結果、
肝心の自分自身がなくなってしまった事実。
必要の無い荷物を持たされ
まっすぐに歩けなくなって
その内歩き方も忘れて。

結局はその中間を必死に目指さなければいけない。
バリケードは確実に作りつつも
虚像に心奪われないように。
どっちかに傾くならば
それはもう完全に自分自身の死ですよね。自分を見つけて守るのは自分自身の役割だと思うから。
これは個人的な解釈ですけど、こう聴くと自分の中ではしっくり来ますね。
この意味を見出した時から自分の中では重要な一曲です。





【わかったから 黙ってよ】

こういうフレーズをしっかりと響かせられる力量もまた凄い。
本当の気持ちしか歌ってない気がします。その姿勢に勇気を貰えます。



THE NOVEMBERS「Misstopia」全曲レビューその8「I'm in no core」

2012-01-12 22:58:52 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






結構久々。THE NOVEMBERS全曲レビュー通算21曲目「I'm in no core」です。





8.I'm in no core




青く突き抜けるギターリフに爽快なサウンド、ノベンバにしては聴きやすいポップさもある曲。
勿論ざらついた感触はこの曲でも健在でザクザクとしたロック感も存在しつつ
最終的には分かりやすく魅力が提示されてる曲だなあ、と思います。
個人的に小林祐介の声も抜けが良い気がします。

なんて思ってたら、歌詞の中には聴き手に刺さるような過激なフレーズも紛れ込ませていたり
時折いきり立ったようにシャウトする箇所で衝撃を受けたり
ただ単に聴きやすいだけでは済まされない
ノベンバ独自の毒もきっちり注入されているキラーチューンにもなっているかと思います。とか言いつつ
ライブではあんまり演奏される機会が少ないのがやや残念。爽やかに毒を撒き散らす彼らの中でも希有な一曲で。




【さぁ 選んでよ罪を 生きるなら】

一人で寂しく抱え込んで死んでいくならば話は別ですが
自分の意志でしっかりと生きたいと思うなら
時に誰かを傷つけることも
裏切ることも重要で
他人の為に自分を殺さない努力も必要なんですよね。
生きるって事は色々な意味で何かの犠牲の上にしか成り立たないから
選択すればするだけ自分自身の罪が増えていく
でもそれがイコール生きる事なのだと。
一人で腐って死ぬ前に
どうしても選ばなければいけない道がある、それを選べば生きて、選ばなければそのまま腐る。
選ぶか選ばないかだけっていうのはこの曲に関しても通じるような気がします。


【不在の白】

何もかも純粋なまま白く生きるだなんて幻想に過ぎないけれど
例え苦くて辛くて黒く青く染まったとしても
元々の「白」がまず残ってないのだから、そんなもの誰でも同じだって言う話です。
その中でどう生きるか、何を選ぶか。まずそこからなんだよ、って詞のように個人的には感じる。
腐って死んで何一つなくなってしまう前に、全てが無に帰す前に、毒も薬も両方使う必要がどうしてもある。
誰の為でもなく、自分の為に。




こうやって全曲レビュー書いてると、割とテーマ性や伝えたい事が一貫してるような
ブレがないように感じますね。押し付けがましさが一切ないのに感動します。