日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「イタリアの協同組合」(緑風出版)の本を2冊読みました@イタリアブックフェア2017で見つけた2冊の本♪

2018年06月13日 | 東都生協関連・海外の生協

「イタリアの協同組合」(緑風出版)の本を読みました@イタリアブックフェア2017で見つけた2冊の本♪



イタリアブックフェア2017で 当時ちょうど探していたテーマの本を2冊見つけました(^_-)-☆

サステイナブルなイタリア - 持続可能なイタリアの食と生産の現在 -」という星美学院のイタリア文化講座で イタリアの生協について色々な話を聞いてから興味を持ち始めた イタリアの共同組合...
その歴史等が書かれた本「イタリアの共同組合」(緑風出版発行)がそれです

本は こちら
 (アルベルト・イァーネス著、佐藤鉱毅訳)
 
この本は 2011年にイタリアで刊行された「Le cooperative」を加筆修正して2014年に発行された日本語版です 
著者は イタリアで協同組合が最も発達した県のひとつであるトレント県の協同組合経済史センター研究員のアルベルト・イァーネス氏 翻訳者は佐藤鉱毅氏です

序文にはこうあります:

2008年の金融危機のあと その解決策は新たな枠組みから発するのだと 最大限に利潤をあげる企業こそが最も理想的な企業だという考えそのものを問題にしてゆく必要があり 協同組合のように 利潤目的の所有構造とは異なる所有構造を備える企業が 経済危機の影響に対抗する機能を果たしたこと 所得の公正な再配分および経済の復調に大きな役割を果たしたことは もっと認知される必要がある

イタリアでは7万余協同組合が稼働し GDP7%以上を担い 1200万人組合員を結集し 約110万人雇用を生み出している  と…


はじめに


イタリアの日刊紙「Corriere della Sera」の経済担当記者D.ヴィーコの著作『小さきもの 憤る人々(Piccoli, La Pancia del Paese)』には 「大銀行の経営者たちが貸し渋りを始めた景気後退時に 小規模の信用協同組合銀行の経営者たちは景気促進をはかる働きをした点で賞賛されるべき」とあります 経済危機の中で協同組合企業は生き残った数少ない支柱のひとつであると

国際協同組合連盟(ICA/International Co-operative Alliance
)は91カ国8億人を巻き込み 242組織を結集している

イタリアには5つ協同組合ナショナルセンターが法的に認知され うち「レーガコープ/Legacoop(協同組合・共済組合全国連盟)」(赤い協同組合/左翼系の)が また「コンフコーペラティーヴェ/ Confcooperative(イタリア協同組合総連合)」(白い協同組合/カトリック系の)が 二強として存在している

また イタリアでは(中小企業がほとんどだが) 協同組合の平均規模はイタリアの一般企業の平均規模よりも大きい 



第一章 協同組合企業とは何か、その可能性


ここではさまざまな協同組合について述べられている 信用 消費(生協のこと) 農業 労働 社会協同組合など  
営利ではなく相互扶助目的によって作られたもので 自由かつ自発的な加入 組合員による民主的管理 経済的参加 自治と自立 教育・訓練・情報 協同組合間協同その他を原則としています

営利企業との比較では 出資金を拠出する組合員が 営利会社の株主に替わる
いかなる協同組合も 最大限の利潤追求を究極的目的としない(してはならない) 利潤は目的ではなく自らの資本形成を強化するためのもの という違いが述べられています

例として トレント県の過疎の山岳地帯での店舗の半数が消費協同組合のものであり 営利企業が進出を手控える地域で人々の生活を支えていることが挙げられています


第二章 どのように市場と向かい合うのか


ここでは 税制上の優遇や納税について等が 『スズメバチはどのように飛ぶか』という協同組合の中心人物故イヴァーノ・バルベリーニのインタビュー(スズメバチは羽根がわずかしか開かないのに飛べる)による本が そして一方では イタリア最大のスーパーマーケット・チェーン「エッセ・ルンガ」経営者ベルナルド・カプロッティのベストセラー『鎌とカート』の挑発的な内容についての対比が興味深いです 
一人一票制についても また「協同組合振興相互扶助基金」についても紹介されています


第三章 ヨーロッパにおける起源


ここでは 産業革命から始まるヨーロッパでの協同組合誕生の歴史が綴られています
オウェンと初期社会主義に続き 「ロッチデイル公正先駆者」(イギリス)では 子どもが買いに行ってもごまかされない(当時としては珍しい)公正な協同組合店舗について語られています 割り戻し金もここから生まれた制度ですね

フランスでは生産・労働協同組合が「社会作業所」を作り ドイツでは 庶民銀行(Volksbank)が誕生し 信用協同組合に発達してゆきました 国による特色の違いが面白いです♪


第四章 イタリアにおける協同組合


イタリアの協同組合は サルデーニャ王国の首都トリノで 1854年に生まれた「労働者一般協会」が消費協同組合を誕生させたのがその始まりです
(イタリア統一の少し前なんですね)

1886年
には「協同組合全国連合」が成立しましたが 社会党の影響が強く また一方ではカトリック運動も独自に協同組合組織を作ります 
北イタリアに多く(ヴェネト、エミリア、ロマーニャ、シチリア、ロンバルディア、ピエモンテの順) 南イタリアには(シチリアを除いて)僅かです 文化的・市民的基盤が協同組合の定着のためには必要とのこと

第一次大戦・ファシズム時代は暗黒の時代であり 協同組合はファシズムも影響も受けます 

第二次大戦後に統一が試みられるも失敗し めまぐるしい分裂の動きがあり ナショナルセンターが設立されてゆきます (上記の2大ナショナルセンター)
業種別では サービス業(第三次産業)が突出しています 
イタリアの最初のスーパーマーケットは1957年にミラノにできた「エッセ・ルンガ」の前身の「イタリア・スーパーマーケット」で このスーパーマーケットとの熾烈な競争で後手に回るも遅れを取り戻し その過程で大規模化により協同組合の本質からそれてしまう等とあります ← わかります…


第五章 社会協同組合とフェアトレード

社会協同組合は 1963年に始まった 福祉の危機等の問題を担う組織で 信頼関係を作り出す要請と事業的効率を両立させうる唯一の法人格は協同組合だった とあります

また フェアトレードは 「財布による投票」とされ協同組合とも連携していますが ワールドショップの価格の問題(限られた人しか買いに行けない)にも触れられています


第六章 ガバナンス/〝大きくなる〟戦略


ここではナショナルセンターの役割 資産の脆弱性を乗り越えるための「組合員貸し」制度等について述べられています
印象的なのは「ただ参加するだけの組合員は組合活動を制御する力を持たないし 会計を読み取ることもできない」とのくだり… 組合員は主人公でなければならないし 意思決定に関与せねばならないとあります ← 決して「お客さん」ではないってことですよね…


第七章 協同組合と政治

イタリアの国旗と同じく 「」(マッツィーニの考え方を反映した「共和主義的息吹」で今は消え失せている) 「」(左翼系の) 「」(カトリック系の)の協同組合のそれぞれの立場や 統一の試みが紹介されています 


第八章 イタリアの協同組合を理解するための要点


資本的企業と協同組合企業の区別  産業社会における新しい企業形態 協同組合事業:信頼できるエンジン 協同組合現象を理解するための鍵  協同組合の利点と欠点について述べられています

巻末にある最新の資料では 2011年にはイタリアには79,949件の協同組合が存在し 131万人が働き (2007年に比べて8%増加) 2008年の経済危機にも関わらず雇用が安定していることがわかります
2011年のイタリアの企業総数における協同組合企業は1.5%  従業員総数は7.2%であり それ以外の企業形態のここ10年の成長率を上回っています


イタリアの協同組合について詳しく知ることができてよかったです


      *        *       *

もう一冊は 「食農分野で躍動する日欧の社会的企業―イタリア発地域の福祉は協同の力で」 (経実Book) です

本は こちら
 

こちらの本は 日本協同組合学会長の石田正昭氏による 食農分野で躍動する 主にイタリアの社会的企業を紹介する本です

「人々による幸福の探求」という広い意味での「福祉」をキーワードとして 協同組合がその実現のためにどのような役割・機能を果たしうるのか ヨーロッパ(イタリア、フランス)と日本の事例を通じて論じたものです
特に注目するのは 農業・農村に基礎をおいた社会的協同組合です

1991年
に「社会的協同組合法」が成立し 非営利性と その代償措置としての税制上の優遇措置が規定されたこと 

エミリア・ロマーニャ州
は協同組合の首都と言われるそうです 左翼系のレーガ・コープの中心地ですね コンソルツィオ(事業連合組織)についても触れられています

社会的協同組合には2種類あり A型は社会的ハンディキャップの人々を保護する労働者協同組合  B型は障がい者が組合員として労働参加する労働者協同組合です(有給労働者の30%が障がい者)

レッジョ・エミーリアにある「ストラデッロ」(小道と言う意味)という社会的協同組合についても紹介されてます
ここはA+B型で 農業 直売 貸農園 太陽光発電 デイサービス 自治体からのさまざまな受託事業を担っています

同じくレッジョ・エミーリアにある「ベットリーノ」という社会的協同組合はB型ですが 協同組合原則は CSR(企業の社会的責任)そのもの あるいはCSRは協同組合原則から生まれてきたと理解されています ゴミ処理やその熱でハーブや花を育て ゴミの減量に取り組んでいます

また同様に「バレ・ディ・カバリエーリ」(騎士団の谷と言う意味)という社会協同組合では B型の条件をぎりぎりクリアしており(7名の従業員) 地域おこしやレストラン等様々な活動を担っています

次には農業協同組合と 社会的協同組合の複合体 SCA(農業の社会的協同組合)が紹介されています レッジョ・エミーリアの「ラ・ルチェルナ」(オイルランプの意味)では GAS(団結した購買者の連帯グループ)と取引しています ← このGASについては 先述の「サステイナブルなイタリア」のセミナーで初めて知り驚きました! もっと詳しく知りたいです♪

日本の有機農産物の生産者が1%以下にとどまっているのに対して イタリアでは5~6%に達しているとのこと 

さてそのGASですが 日本でいう「産消連携による農産物購入グループ」のことで レッジョ・エミーリア市にある「レ・ジャーレ」というGASについて紹介されていました
これが面白い! 生協の班のように 配送ポイント(ガレージなど)に置かれた通い箱(ビオケース)から小分けにしていますが 何が入っているかを問わないとのこと 「責任購買」というそうです (全量買い取りもそうですね)

その他 ボローニャの社会的協同組合 アグリツーリズモについても紹介されています

さてフランスでは SCOP(参加型協同組合)というのがあります イタリアの協同組合に相当するものはSCIC(社会的共通益協同組合)というそうで2001年に導入されたそうです 

最後は日本のソーシャルファーム(社会的企業 あるいは社会的農場)が紹介されていました  「農福連携」として 農業の新しい価値を見出した動きですね 
NHKの番組でも 農福連携をテーマに自然栽培でコメを作っている団体が紹介されていました 肥料もやらないと根が広く張るのですね)

社会的企業としては「ソーシャルファームジャパン」が紹介されていました 農協と労協の連携とのこと 福祉専門の福祉クラブ生協の取り組み 食事サービスワーコレ(ワーカーズコレクティブ)などが紹介されています 
最後に 社会的農場に取り組む日本の生協が紹介されていました

様々な協同組合の姿を知ることができて とても興味深い一冊でした

日本語なので イタリア語勉強してなくとも読めるのがありがたいです♡

イタリアの深い話が知りたい...




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