新ジャポニズム 第1集MANGA わたしを解き放つ物語(Il nuovo giapponismo 1.(la storia che mi lascia liberare)(2025.1.5)@NHKスペシャル
アニメがテーマのプライベートレッスンで 日本のアニメがなぜ世界各国で人気なのかを調べている時にたまたまこの番組を見て 要約をレッスンで発表することにしました 以下は予習を兼ねた要約(riassunto)です:
番組紹介:
シリーズ「新ジャポニズム(il nuovo Giapponismo)」 第1集「MANGA」
アニメも含めると世界の10億人がファンになっていると推計されるMANGA
熱狂の理由は「世界の混沌(caos del mondo)」にあると海外の研究者は分析
日本マンガの多様で真実味を帯びたキャラクターや物語に 厳しい現実を前にした人々が自分を重ねている
番組はウクライナ(l'Ucraina) ジンバブエ(lo Zimbabwe)など世界各地のファンを取材 世界的なヒットマンガを生み出す現場にも迫る
まとめ記事 (2025年1月5日の放送内容を基にしています) :
150年前 日本で花開いていた文化が海外に衝撃を与えた
それは「ジャポニスム」と呼ばれた そして今再び世界で日本カルチャーの大きなうねりが起きている
マンガの年間発行部数は およそ10億冊(circa un miliardo) アジアの島国日本で生まれたマンガは なぜこれほどまでに世界に刺さるのだろうか?
日本は没個性といわれ 秩序やルールを重んじ 時に息苦しささえある しかしマンガはまるで“解放区(zona liberata)”だ
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<ダンダダン × 世界的ヒット>
4年前に連載が始まったマンガ「ダンダダン(DanDaDan)」
去年アニメ化され 190の国や地域に配信されるやいなや 視聴数は世界2位を記録した 「オカルト×SF×バトル×青春 (occulto×fantascienza×battaglia×giovinezza)」
脈絡のない要素を掛け合わせた物語だ 作り手自身も気付いていない日本のマンガの魅力 それは一体…?
編集者(redattore)は7年もの間 漫画家自身から物語が湧き出てくる(ispirare)まで待ち続けたという
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<進撃の巨人 × ウクライナ(L'attacco dei giganti×Ucraina) >
2024年9月 首都・キーウ(Kiev)で あるコンサートが行われ 1,500人余りが集まった 演奏されたのは 日本のアニメソング(sigle)
スマホとインターネット それは戦争の日常を変えていた
戦火の中にあっても 日本の最新のマンガやアニメが遮断されることなく配信されている(vengono consegnati)
2人の娘とコンサートに来たキーウ在住の女性: 「マンガ・アニメにはいろんなものが描かれている 善も悪もすべて
私たちは停電(Interruzione)や避難(rifugio)の時 ダウンロード(scaricare)しておいたアニメを見ている 子どもにとっても大人にとっても 戦争の日常を生きるのを助けてくれる」
コンサートで出会ったアローナさん 父と祖父母を残してキーウに避難してきた 「すばらしかった 最高! 私たちはマンガで描かれる物語に現実と重なる(coincide con la realità)ところを発見して 自分自身を投影している」
コンサートの前日に悲しい出来事があった 父のお店が焼けてしまった 現実をどう受け止めたらいいのか分からぬまま コンサート会場に足を運んでいた
Ukraina
アローナさん「私はコンサートで『進撃の巨人(l'attacco dei giganti)』が流れた時 現実とすごく似ていると感じた」 母を巨人に殺害されたは主人公エレンは深い憎しみにかられ 自身も巨人となって全ての敵を駆逐する(annientare)戦いに身を投じていく しかし 巨人の正体は自分と同じ人間で 海の向こうの国によって兵器(armamenti)として巨人にされていたと明らかになる
アローナさん「私の心に本当に響いたのは エレンが海のそばで『本当に彼らを全員倒す必要があるのか?』と自問したシーン 私は(エレンの)問いには答えがないと思う 正解はない…
(私たちの)今の状況と似ている この物語に自分を重ねることで まるで同じ問題を抱えた人と対話しているような感覚をおぼえる すごい力がある」
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<ONE PIECE × ジンバブエ>
アフリカ・ジンバブエ(lo Zimbabwe)
この日地域の集会場に 思い思いのコスプレ(il cosplay)をした若者たちが集まってきた なぜ今ジンバブエで日本のマンガなのか
アーチー・モヨさん(34歳): 「最近は 大学を卒業した人でも仕事が見つからず 道ばたで物を売っている人もいる それほどに厳しい」
かつてイギリス領だったジンバブエは45年前に独立した(essere indipendente)
白人を追い出し黒人社会(società negra)を目指したが 欧米諸国の反発(antipatia)を招いて孤立(isolamento) 経済は破綻(fallimento)に向かっている
若者たちは国外に仕事を求めるも 多くが差別を受けて(vengono discriminato)戻ってくる
必死に生きるのか 諦めて薬物に走るのか(tossicodipendente) 自分を保つギリギリにあるという(sull'orlo della rovina)
アーチーさん「アニメを見なくなると気持ちが落ち込む(giù/depresso) 自分を安全な状態でいさせるためにアニメを見ている」
そんな中マンガで生計を立てよう(guardagnarsi la vita con manga)という若者にも出会った
ビル・マスグさん 6年前から海外のアニメなどの作画を請け負っている ビルさんにはいつも傍らに置いてきた(essere al fianco)マンガがある
漫画家/ビル・マスグさん(31歳): 「何年もずっと読み続けているのは『ONE PIECE』」
全1,000話を超えるエピソードの中 自身が救われたというシーンをビルさんが教えてくれた 麦わらの一味ニコ・ロビン ある事件をきっかけに拘束されたロビンを ルフィたちは救おうとするシーンだ
ビルさん: 「『生きたい』 自分も泣きながら読んでいたのを覚えている 今でもぐっとくる(essere commvente) 私が『ONE PIECE』を読み始めたのは2008年くらいから その頃家の暮らしが難しくなっていた インフレがひどかった 長い期間家に食べ物がひとつもなかった 高校生の頃だった」
2000年代後半ジンバブエを襲ったハイパーインフレーション(iperinflazione)
「物価が1日で倍になる程経済は混乱した 物資や食料は店から姿を消し 人々は日夜行列を作った(fare la fila) 敵のいない戦争(guerra senza nemico)みたいだった」
生き抜くために自分のことで精いっぱい(essere già molto se si riesce a mangiare)になっていく人々
そんな時 拘束された(fermato)ロビンをルフィたちが救おうとするあのシーンがふと心に浮かんだ
ビルさん: 「『ONE PIECE』の軸はコミュニティ 友だち 家族 つながり(rapporto) ジンバブエに伝わる言葉『ウブントゥ』と同じ感じ
“私が私でいられる、みんながいてくれるから(Posso essere io da stesso, con tutti gli altri)”
ジンバブエは今もなお 欧米諸国から見放され孤立している
でも日本はコミュニティの集まりだと思う みんなで進んでいく(andare avanti insieme)」
取材スタッフ: 「もし『ONE PIECE』に出会わなかったら?(Se non si fosse incontrato con "ONE PIECE"? 」
ビルさん: 「そんな人生、想像できない(Non potrei mai immaginarlo!)」 突然の問いに 驚きとともに笑いながら答えた(とても印象的だった)
...この感覚は自分もわかります 子供の頃に出会った009を アニメや単行本をまるでご飯のように食べながら育ち やがて同じ作品を愛する仲間たちと出会い... いつも傍らにその作品はありましたから...
ジンバブエ ズバラセクワ
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<日本のマンガが受け入れられる理由とは(Perche MANGA giapponese è accertato?)>
40年以上にわたって日本文化を研究してきたスーザン・ネイピアさん
近年深まりつつある世界の混とん(caos del mondo)は アメリカ中心だったエンターテインメントの世界を変えたという
日本文化研究者/スーザン・ネイピアさん: 「今の世界は恐ろしくて 脅威(minaccia)が存在し いらだたしく(irritante) 絶望(disperazione)にあふれ 人々は『ハリウッドモデル ディズニーモデル』と呼ぶものに確信が持てなくなっている 『末永く幸せに暮らしました」モデルは非常に疑わしいものになっている」 そうした中で日本のカルチャーへのまなざしが変わってきているという
スーザンさん: 日本のキャラクターはもっと現実的 より深みがあって心情や内面を描いている つまり“深さ(profondità)” 偉大なる英雄という感じではないけれど 親近感がわき(simpatia) リアリティーがある 共感できる(compassione)」
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<浮世絵 × 手塚治虫(Ukiyoe × Osamu Tezuka)>
なぜ日本の漫画は類いまれな多様性(straordinaria diversità) をもつに至ったのか その謎を解く鍵(chiave)が 江戸時代(periodo di Edo)の日本にある
江戸時代が始まって170年余り 人々はこの世に生を受けた瞬間から身分(ceto)の枠の中で生きることを強いられていた 逃れることのできない身分社会(società di ceto)で 人々はある遊びで鬱憤を晴らしていた(sfogare la propria collera)
「狂歌(tanka satirico)」
平安時代の和歌などをもとに ふだんは言えない本音を歌ったものだ(confessare la verità)
武士 商人 僧侶 遊女 身分や職業に関係なく狂歌を楽しむ人々
あくまで遊びだとその場で書き捨てられていた庶民の本音に独創性を見いだし 既にブームとなっていた「浮世絵(stampa ukiyoe)」を合わせて「本」にまとめて出版を始めた(版元/editore)のが 吉原生まれの蔦谷(つたや)重三郎だ
江戸文化研究者/田中優子さん: 「それぞれの生活の場とか階級の違いはあるけれど 自分が生きている日常から離れたことをやりたい 厳しい社会だから「別世(べつよ)」をつくったとも言える」
蔦屋たちの手によって生み出された解放区 美人画の歌麿(Utamaro)に役者絵の写楽(Sharaku) 希代の浮世絵師が誕生した 生み出された多様な表現は 海外の芸術家たちに衝撃を与えた (trasmettere un impulso a ~)
ゴッホやルノワール…浮世絵のモチーフが描かれた絵画の数々
このムーブメントは「ジャポニスム(giapponismo)」と呼ばれた
戦後 日本のマンガもまた 抑圧からの自由(livertà dalla repressione)を求めて発展した
戦後マンガの原点といわれる手塚治虫 初めての長編「新寳島(しんたからじま/Nuova isola del tesoro )」
当時出版物はGHQ(Comandante supremo delle forze alleate)によって検閲されたが(vengono censurato) 手塚は思うがままに描き「赤本」に発表した 大手の出版社を通さず露店(bancarella)や駄菓子屋で子ども向けに売られた本 ここが解放区(zona liberata)となった
後にこの赤本を子どもの頃に手に取った無名の作家たちが手塚のいるトキワ荘(Tokiwa-sō, appartamento Tokiwa)に集まる

赤本
<新ジャポニズム × 世界の新たなクリエーター(nuovo giapponismo×i nuovi creatori nel mondo)>
およそ3億の人口のうち 9割近くをイスラム教徒(islamici)が占めるインドネシア(Indonesia) 厳しい戒律(commandamento)の中で ここにもコスプレブームの波が押し寄せ WIBU(ウィブ)と呼ばれる熱狂的なファン(fan/tifosi fanatici)も生まれている
11月にジャカルタでインドネシア最大級のイベントが開かれた
5万人ものファンが目当てにしているのが 日本の作品をもとに独自のストーリーを描いた同人誌(riviste pubblicate da un'associazione) だ
意外なジャンル(genere)の作品がひそかな人気を集めていた 男性同士の恋愛模様を描いたボーイズラブ(Boys Love) 通称・BL
イスラム教では同性愛(omosessualità)がタブー(tabù)とされ 特に性的表現のある作品は規制の対象となっている(sotto controllo)
イベント会場で 自らもBLマンガを描いている若者に出会った
美術大学に通う学生のカイ(仮名)さん 20歳 BLマンガを描くきっかけになった日本の作品「佐々木と宮野」 BLを普通のこととして受け入れる世界観(concezione del mondo)が カイさんの考えを解き放った(liberare) 日常の地続きに(contiguo alla cuotidianità) BLが存在してもいいのだと「佐々木と宮野」が教えてくれた
カイさん「幸せに生きられる場所をようやく見つけた 人生は 自分の幸せを探すもの」
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ジンバブエの漫画雑誌編集者(redattore)/エライシャ・ンクンドュさん(28歳): 「日本文化がすごく好きで アフロマンガ(afromanga/fumetti)を描こうと決めた
日本のマンガスタイルとアフリカの物語を合わせた アフリカらしいマンガをつくろうと
漫画家になりたいアーティストを集めて カラバッシュをジンバブエの少年ジャンプにしようと思った」
3年前に創刊した雑誌「カラバッシュ(Kalabash)」は これまで2巻を自費出版し 合わせて9人の漫画家が作品を掲載している 投稿を希望する作家が次々と現れている
ジンバブエの同人誌カラバッシュ(kalabash)
漫画家オーウェン・チェチコカさん(27歳)の地元・ズバラセクワはジンバブエの中でも特に貧しく 国内で差別を受けてきた(discriminare)地域だ
オーウェンさん「人々はもはや生活しているというよりは生き残っているといった感じ(sopravvivere) どうすることもできない
何もない地域で育った自分が何を描くのか 『自分はどこから来たのか』 そしてマンガを描き始めた」
オーウェンさんが初めて描いたマンガ『グレ』は オーウェンさんの生まれ育ったズバラセクワの伝承(leggenda)をもとにしていた
オーウェンさん: 「僕は自信を持てない人たち 自分の文化はたいしたことない いいものでもないと感じている人を鼓舞したい
僕は多くの人を感動させたい なにも土壌がないところから自分のような人間が生まれたんだ」
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<MANGA × 未来>
漫画は大きな転換期(svolta)にある 媒体は紙(cartaceo)からデジタル(digitale)へ 10年ほど前からデジタル市場は急速に伸び 今や紙媒体の2倍の規模になっている
6年前に雑誌からデジタル版へ担当が変わった漫画編集者の林さん
雑誌は誌面に限りがあるが(spazio limitato) より多くの作品を掲載できるデジタル空間を 作家一人一人を大切にする新たな解放区(zona liberata)として生かそうとしていた
デジタルは新たなライバル(rivale)も生んでいる 韓国(Corea)が作り出したのは スマホに特化した縦スクロール(far scorrere verticamente)
で読むマンガ Webtoon(ウェブトゥーン) ショート動画を見る生理に近い 一話一話の短さと 展開の速さが特徴だ
Webtoon制作会社 社長/コ・ヨントさん: 「ウェブトゥーンの強みは時代を反映させている(riflettere l'epoca)ところ データとして読者のジャンルの嗜好(しこう/gusto)や 連載を何話目まで読んだか 1話読むのにかけた時間 何話目から読者が離れていったか(dimettersi)チェックして 作品に反映する」
韓国は徹底したマーケティング(Il marketing)でマンガの世界を塗り替えようとしていた
* 2025.5.21 NHK朝のニュースでも 韓国のウェブトゥーンのニュースをやっておりました 今は分業制で会社員として作画(デジタル作画)の仕事に就くとのこと 定時で帰れるそうで 時代は変わりましたね~😲 作画とストーリーと両方できないと漫画家になれなかったのにね~
一方日本では…この日 林さんは国内で数少ないマンガ専門の学部を持つ大学に招かれた 学生たちに向けて強調したメッセージがあった
林さん: 「描き続ける人だけが生き残っている業界(settore in cui sopravvivono solo quelli che continuano a disegnare) 自分の描きたいものがなくなったとか 何を描いていいか分からないという方 かなりいらっしゃる 描きたいものを自分の中に湧かせ続ける日々の送り方はけっこう重要なんです」
デジタルの時代になっても 作品は自分自身から湧き出るもの(sorgere da se stesso)
林さんは4月 新人の漫画家が創作に集中できるよう生活費を負担するアパートの運営(gestire l'appartamento dove vengono assunte le spese della vita)を始める
マンガ それは私を解き放つ物語
多様で多彩 世界を魅惑し続ける新ジャポニズムの潮流(la corrente di neo giapponismo)
その本当の魅力に気付いていないのは 私たち自身なのかもしれない