心と神経の哲学/あるいは/脳と精神の哲学

心の哲学と美学、その他なんでもあり

哲学B1 文章講義(第42回目)

2021-01-17 09:47:09 | 哲学

今日から最後の第8章に入る。

 

この章の構成は次のようになっている。

 

はじめに

1  続・自然学としての形而上学

2 情報の客観的実在性

3 存在の階層の中での情報の位置

4 真実在をめぐる巨人の戦い

5 情報の形而上学

 

まさに締めくくりにふさわしい内容である。

この本は非常に論理的で、緻密な構成と複雑な文章によって成り立っている。

味わい深い本である。

しかし、馬鹿にとっては豚に真珠である。

真珠の輝きを享受するためにも、この最終章を熟読し、深い味わいに浸ってほしい。

 

まず「はじめに」について解説しておこう。

 

言うまでもこれは序であり、本章の意図と目的と構成に触れている。

高学力の高校生は文系でも理系でも現代文の読解や小論文の添削による訓練に長けているので、本書の理解などお茶の子さいさいであろう。

とにかく、読解は構成の把握と著者の意図の看取から始まる。

その意味でも序をよく読み、その意味を把握しておくことが求められる。

 

だたし、この章の序には新しい内容はない。

それもそのはず、本章は締めくくりであり、総括なのだから、これまでの論述の再把握を目指しているのだ。

もちろん、それだけではないが。

 

「はじめに」におけるキーワードは、「ものとこと」「形相と情報」「人間中心主義の間違い」「擬人化だという誤解」「解釈学的循環」である。

これらの語に注意して、この短い序の内容をしっかり把握し、その意味を理解することが求められる。

 

 

 

 あたりまえのことだけど、当たり前のことをしっかり理解することほど難しいことはないんだにゃ

      あたりまえのこのなかに深い意味を看取できる人が哲学的なんだにゃ

              僕は哲学的猫なんだにゃ


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哲学B1 文章講義(第41回目)

2021-01-17 08:59:25 | 哲学

今回は「8   創発の存在論」について説明する。

 

創発の存在論の意味は、テキストp.198の図に端的に示されている。

二元論的思考が生命を心か物質のどちらかに還元するのに対して、創発主義的思考は心と物質の交わる部分に生命を措定し、心と生命と物質の三つの要素間に基礎づけと創発の関係を想定する。

 

哲学史上、デモクリトスは唯物論の代表者、デカルトが二元論のそれとみなされているが、プラトンとアリストテレスという西洋哲学の頂点に立つ古代の巨峰は、

創発主義的観点と親近的な思想をもっていた。

特にアリストテレスはそうであった。

 

現代の還元主義的な生命観を推進する生物学者の中には、精神を物質世界の外に逃がし、それを温存する傾向があるが、ここで生命と心の分離が起こってしまう。

創発の存在論は有機的自然観ないし目的論的自然観に基づき、心と生命の深い関係を重視し、唯物論と二元論の双方を否定するのである。

 

この節は第7章のまとめであると同時に利己的な遺伝子の概念の提唱者ジャック・モノーの軽薄な心観と実存的自由の観念を批判したものである。

そのことを顧慮して、この短い節を読んでほしい。

 

 

 

               それがきみのためになるんだにゃ

 


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